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「日時計」のマイクロノベル 他3篇 #67

 ここにはね、朝の9時から午後3時までしか時間がないんだ。それ以外の時間は別の世界で暮らしていたはず。それを繰り返すうち、大きくなっていった。ガッコウっていうところだったけれど、もう忘れてしまったかな。

 象の国へと通ずる道の印。まさか、こんな街中の足もとにあるとは、いままで気づかなかった。夜中に酔っ払いの声に混じってパオーンと聞こえたり、公園の砂場に足跡のようなものを見かけた理由が、ようやくわかった。

 こんなビルの上までたどり着けたなら、セイタカアワダチソウ仲間でも鼻が高い。いや、花まで咲かせたのだから、花が高いか。ここで綿毛をつけて一泡吹かせ、さらなる高みへ飛んで行こう。来年はどこで咲けるだろう。

 ネコジャラシの平原の向こうに、猫の楽園がある。そこへ行き着くために猫たちが集まってくるが、このネコジャラシに夢中になって、まだ楽園にたどり着いた猫は誰もいない。いや、もしかしたらここが楽園かも知れぬ。

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