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「エサキモンキツノカメムシ」のマイクロノベル 他3篇 #89

 黄蘗の木から、エサキモンキツノカメムシが飛び立つ。空へ、宇宙の彼方へと帰って行く。ハートマークのカラータイマーの点滅とともに。足もとでは、得体の知れない小さな生き物が溶けていく。今回も地球は守られた。

 優曇華の花は三千年に一度咲く吉兆の花だ。だがこの花なら年に三回ほど見かける。ということは、一年で九千年分の時が過ぎ、三度もいいことがあったはずだ。思うに、昨日の麦酒が旨かったのがいいことかも知れない。

 ソラノカギカズラは手入れが悪いと蔓の鉤爪を雲にかけて、天空の巨人の城まで伸びていってしまうことが多いので注意が必要だ。下手をすると、空から巨人が降りてきて金の卵を産む鶏を連れ去ってしまうかも知れない。

 苧環(オダマキ)というのは、機織りの際に使う糸巻きのことで、この花はその形に似ているんだ。だから、昔はこの花に流れて去って欲しくない時間線を巻いて花が枯れるまで留めて置ける人もいたけれど、そんな技も絶えて久しい。

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