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「桃色タンポポ」のマイクロノベル 他3篇 #73

 白いタンポポだけが咲く国では、タンポポと言えば白に決まってる。そして、青いタンポポの咲く国では、タンポポ色は青い色だ。それでは、これからタンポポ色に塗ってみよう。この国は、タンポポの咲かない国だから。

 雄しべも雌しべも花びらすらなく、がくの集まりのような緑のタンポポ。「まりも」と呼ばれ、暖かいと萎れずに生長する。どんどん大きくなった巨大なまりもが街を埋め尽くす。そこに埋もれて眠る。そんな平和もある。

 ダンデライオンとはタンポポの英名だと聞いて、花の形からライオンのたてがみと思った。けれども、ダンデは「歯」のことで葉のギザギザから、ライオンの歯だという。ほら危ないよ、足もとにライオンの歯がいっぱい。

 来年、その花壇に桃色タンポポが咲いていた。と、未来を過去形にして時間軸をピン留めする手法には、よく桃色タンポポが使われる。だから、見かけても決して摘んだりしないように。時間がずれてしまうので。

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