見出し画像

炎の物理


こんにちは、ヒラタです。
近頃寒くなってきたので、炎の話をします。

はじめに


調理や暖房、照明など、炎は人類の生活に欠かせないツールです。


子供の頃、先生に炎は何でできているのかを尋ねたら「燃焼反応だよ〜」と言われて、いまいち納得できなかった思い出があります。読者の中にも、似たような経験をお持ちの方がいるかもしれません。

燃焼はWhatじゃなくてHow



例えば、炎とそれ以外をどう区別すべきでしょうか。物質は固体液体気体の3相に分類できるといいますが、炎を構成する原子分子はどの状態にあたるのでしょう?


「炎」にならない物質もある?



加えて、炎は光源にもなります。しかし、豆電球やLEDとは別の光り方をしているようです。なぜ炎は光っているのでしょうか。

部位ごとに色(光の周波数)も異なる



今回は、そんな意外と知られていない炎の物理学を紹介します。


炎(=プラズマ)の電磁気学



実は、炎内部の原子たちは電子とイオンに分離しています。この状態は固相/液相/気相のいずれとも異なり、プラズマ相と呼ばれます。

オーロラや雷もプラズマ



NaCl水溶液と同じノリで炎は電気を通しますし、内部の電子運動に由来した磁性も持っています


炎も酸素も磁石に反発する(反磁性体)


単に荷電粒子が動き回るだけでは発光には至りません。炎が光る原理、視える理由について考えてみましょう。



放射光と燃焼光


炎の発光色は主に温度放射(物理現象)として理解できます。物質は自身のエネルギーを周囲に電磁波として放射しますが、数十℃程度だと赤外レベルです。しかし、炎付近(1500°C以上)では物質はオレンジ系の可視光を放射します。


炎内の元素種類によらず同色の発光




温度放射とは別に、燃焼(化学反応)でも光が出ます。プラズマ化した元素が周囲の酸素と結合(酸化)することで、反応前後の差分の熱/光エネルギーが放出されるわけです。
 

酸素によって熱と光が提供される(助燃)


可燃ガスの燃焼による安定化エネルギーは青色光(300〜400nm)に相当します。そのため、コンロから出る炎は青色ですが、ガスの少ない環境では燃焼光は見えず、オレンジ色の放射光だけが残ります。


炎の流体力学



最後に、炎の動きが予測可能かを考えてみましょう。
炎を一様密度のプラズマ流体と解釈すると、その時間発展はナビエ・ストークス方程式に従うはずです。


ミレニアム懸賞問題




この方程式を解析的に解くのは大変ですが、いくつかの仮定・単純化を施すことで、ある程度現実的なシミュレーションができます。


風を介して形状制御もできるらしい



炎を形作る分子たちの物理・化学的な絡み合いを紐解くのは大変ですが、彼らの性格を完全に無視して粗視化するとマクロな挙動が見える。というのは、なんだか統計みたいな話ですね。
 



おわりに
 


いかがだったでしょうか。炎に限らず、身の回りに当たり前にあるものを科学的に見直すのは面白いですね。


ヒトの遺伝子には、燃え盛る炎への本能的な畏怖が未だに刻まれています。我々現代人が炎を原理的に理解すれば、その本能も次第に衰えていくのかもしれません。


それでは、皆さん良いお年を。


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?