見出し画像

漫才論| ¹²¹来年のM-1に向けて"錦鯉"路線でいくべきか❓"オズワルド"路線でいくべきか❓

M-1グランプリ2021は結果的に,感動物語が乗っかることによって「錦鯉一色」という雰囲気になりました(初出場組もそれぞれ爪痕をしっかり残していたので,「錦鯉一色」は言いすぎかもしれませんが・・・)

この結果を受けて,今後,「"錦鯉"路線でいくべきか?"オズワルド"路線でいくべきか?」と迷っている漫才師がどれくらいいるのかは定かではありませんが,「基本的には"オズワルド"路線を目指し,無理な場合は"錦鯉"路線」というのがいいのではないかと思います


最後の最後のネタの途中まで
一番優勝に近かったのはオズワルド

今となっては「錦鯉一色」というムードもありますが,錦鯉が2本目を終えた時点では,「オズワルドが優勝だな」という雰囲気のほうがはるかに強かったと思います。しかし,オズワルドのネタの途中から,「あれ?オズワルドもしかしてダメかも・・・」という空気に変わっていきました。1本目が圧倒的に強いネタだったというのもありますが,それにしても2本目が弱かった・・・。2本目があれよりほんの少しでも強いネタだったら,オズワルドが優勝していたかもしれません。「そんなタラレバを言っても仕方ない」と思われるかもしれませんが,今後の路線を考えるうえでは重要なことです

感動物語が乗っかり「錦鯉一色」になることによって,「突き抜けたバカが圧倒的に強い」と思った方もいるかもしれませんが,実際のところはそうではありません。オズワルドは「突き抜けたバカの勢いに勝てなかった」というより,「強いネタを2本そろえることができなかった」という自滅的要素ゆえに負けたのだと思います。ですから,今の雰囲気に呑まれて安易に"錦鯉"路線に手を出す前に,まずは"オズワルド"路線を試してみたほうがいいです

"正統派漫才"という武器

"オズワルド"路線といっても,何か特別なやり方をしているわけではなく,比較的オーソドックスで,比較的正統派です。そんなオズワルドが,「最後の最後のネタの途中まで一番優勝に近かった」ということに意味があります。つまりそれは,「正統派漫才でも優勝できる」ということを意味しているからです

オズワルドの例からも分かるように,正統派漫才師に必要なのは「とにかく強いネタ」です。なぜこんなあたりまえのことを書いたのかというと,今年のM-1の影響を受けて奇抜な方向に走る"正統派漫才師"もいるのではないかと思ったからです

「うまさでみせる"正統派漫才"」というのは,どんな漫才師でもできるわけではありません。二人ともしゃべりがうまく,掛け合いもうまいという特定の条件を満たした漫才師だけができるものです(ちなみにオズワルドは,掛け合いはものすごくうまいですが,しゃべりは特別うまいほうではないと思います)それでもし,二人ともしゃべりがうまく,掛け合いもうまい漫才師がいるとすれば(もしくはその素質があるのであれば)それは相当強い武器であり,奇抜なことをするよりも,その武器にさらに磨きをかけたほうがよっぽど目立ちます

「とにかく強いネタ」は
どうやって作ればいいのか

問題は,どうやって「とにかく強いネタ」を作るかです。一番いいのは,「二人の普段の会話を漫才に"昇華"する」という方法だと思います。どんなネタかというと,今年のTHE MANZAIで和牛かまいたちがやっていたようなネタです

あのネタをM-1でやっていたら(かまいたちは今年のM-1の出場資格はありませんが・・・)「和牛もかまいたちも最終決戦の3組に残ったのではないか」と思えるほどのクオリティの高さで,しかも,文句なしの"正統派漫才"でした

「動かない漫才」が目立つようになってきた今,"正統派漫才師"にとってこれはむしろチャンスです!

このテーマに関する質問・意見・反論などは
「みんなで作る漫才の教科書」にお寄せください

みんなで作る漫才の教科書とは,テーマ別に分類した「漫才論」にみなさんから「質問」「意見」「反論」などをいただいて,それに答えるという形式で教科書を作っていこうというプロジェクトです

THE MANZAI magazine
❶「自分たちにしかできない漫才スタイル」を確立する方法 ❷しゃべくり漫才のうまさは「相槌」で決まる ❸「漫才台本の書き方」と「オチのつけ方」 ➍ボケやツッコミってどのようにして思いつくものなの? ❺「言い訳-関東芸人はなぜM-1で勝てないのか-」は"現代漫才論"ではない-ナイツ塙さんが何を「言い訳」しているのかが分かれば,関東芸人がしゃべくり漫才でM-1王者になる道が見えてくる- ❻漫才詩集「38」

フィクション漫才『煮豆🌱』-いとこい師匠のテンポで-
作: 藤澤俊輔  出演: おせつときょうた

あらゆるオチを誰よりも先に小噺化するプロジェクト『令和醒睡笑』過去の創作小噺を何回も何回も回すと"古典小噺"になる・・・はず・・・【小噺はフリー台本】