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漫才論| ¹³漫才をみるときにアイドルのコンサートのような歓声をあげるのはNG❓

芸人をアイドルのように応援するのはもちろん自由ですし,大好きな漫才師が登場するとテンションが上がり,歓声をあげたくなる気持ちもよく分かります

しかしだからといって,漫才の最中にそういう応援をしてしまうと,まわりの人も漫才師本人も困ってしまう「切実な理由」があります

ただただ心から笑ってほしい

「漫才」というのは,フリートークのように実際にあった話をしている場合と,架空の話を実際にあったかのように話している場合があります。話はじめた時点では,実話なのか架空の話なのかは分からない場合が多いです

この状態で,アイドルのコンサートのときのような「キャ〜」とか「かっこいい〜」といった歓声をあげると,困ったことになります。例を挙げます

漫才師「昨日ダンクシュートを決めたんですけどね」
観 客「キャ〜かっこいい〜」

昨日ダンクシュートは決めた可能性もありますし,決めていない可能性もあります。漫才においては,本当にダンクシュートを決めたかどうかは重要なことではありません。なぜなら,「昨日ダンクシュートを決めた」はフリで,このあとにボケがくるからです。なのでここは,「ほうほう。それでそれで?」というふうにじっくり聴いて,そのあとにくるボケへの期待を高めてほしい場面です。ここで「キャ〜かっこいい〜」という反応が起こると,ボケの前に一つの山がきてしまい,一番ほしいボケでの反応が分散してしまうので,とても困ります。漫才師は,「そこじゃない」と思います

もしくは,絶対にダンクシュートが決められないタイプの漫才師が言う「昨日ダンクシュート決めたんですけどね」はボケなので,「笑い」ではなく「キャ〜かっこいい〜」という反応が起こると,困ります。ほとんどの漫才師が,「かっこいい〜」と言われることよりも,「ただただ心から笑ってほしい」と思っているからです

漫才はフリートークではない

こういうパターンもあります

漫才師「昨日1万円落としてしまいまして」
観 客「え〜かわいそう〜」

これも,同じ理由で困ります。これは本当の話かもしれませんし,架空の話かもしれません。漫才師は,「そういうことじゃないし,そこじゃない」と思います。コントではこういうリアクションをすることはほとんどないのと同じ理由です。コントの最中に,「え〜かわいそう〜」とか「キャ〜かっこいい〜」というお客さんはあまりいません。それが「芝居」だと分かっているのと,「芝居」の邪魔をしてはいけないと思っているからだと思います。この点では漫才も同じです。フリートークをしているように見えても,通常は「演じている」ものだからです

漫才師とお客さん全員で作り上げていくもの

コンサートであれば,盛り上がることによってみんなで作り上げていくものですが,漫才の場合は,本当におもしろいところで心から笑うことによってみんなで作り上げていくものです。漫才師とお客さん全員で作り上げていくものです

「漫才」とはそのようなものだ知らずに,コンサート感覚でリアクションをされる方もいるかもしれません。そのような方にはぜひこの点について教えてあげてください

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