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第八十話:暴炎竜ロッソから依頼~サロモネ王の願い?~

 翌日――
 ロッソ火山への実践採取講義の五日間が始まった。

 いくら何でも、一日で全員の分をやるなんてできないので、五日間の内、どれか一日出席しておけばいいのだ。

 初日は人が最も少ない為、私はその日を選び、エリア、クレメンテ、アルバート、カルミネの四人も同じよう参加する事にしてもらった。
 ブリジッタさんとフィレンツォも従者として参加。
「――さて、本日は総合講義の中で重要な素材採取の実践講義のです!! 移動地はロッソ火山!! 比較的安全な場所に転移しますが、くれぐれも、油断しないように!! 怪我人はすぐさま医務所に運ぶように!!」
 教授が伝達魔術で全員に聞こえるように喋っている。
 私はそれを聞きながら、こちらに向ける対抗心丸出しの視線をちらりと見る。

 ベネデットの奴が、いた。

――この男、しつこい!!――
――ストーカーか?――
『あー今回のはただ単に初日で最優秀の成績を収めようとしてるだけだから、偶然だ』

 神様からの言葉。

――え、だって初日以降の方が成績良いの取りやすくなるんじゃ?――
『誰からもアドバイスを受けず、初日以降の連中にアドバイスした上で超えられない地点にいたいらしい』
――何と言う自己顕示欲……――

 神様からの事実に嫌な気分になる。

――こちとら、自己顕示欲ないのに、そうせざる得ないんだぞ!――
『お前のは仕方ない、まぁまずは火山地帯に行って体、何、すぐ声が聞こえるだろう』

 いつもの如く「戻り」髪をかきあげる。
「初日だから人が少なくてよいですね」
「ですね、最初のあの講義の時より少ないので気分が楽です」
 フィレンツォに私はそう返した。
「あの……私達も行動をご一緒させていただいて、宜しいのですか?」
「ええ、勿論です。アルバートさん。そちらの方が安全かもしれないですし」
「お心遣いありがとうございます」
 アルバートとカルミネは頭を下げた。
「いいんですよ」
 私は穏やかに返した、対抗心バリバリの視線を向け続けるベネデットの方を知らんぷりしながら。

「では転移を開始します。転移メタスタシス!!」

 魔術発動で光に包まれ、そして消えたと思うと学院ではなく、赤と黒の混じった少し暑い大地へと転移していた。
「……暑いですね」
「そうですね……」
「少し体の方を保護しましょうかね、冷却レフリジェ
 私と、四人、そしてフィレンツォとブリジッタさんが淡い薄水色の光に包まれた。
「すごい……すごしやすくなりました……!」
「この暑さですから気を付けなければ」
 私は驚く四人にそう告げる。

「では、採取始め!! 夕方の四時までにはここに戻ってくること!!」

 採取開始の合図が告げられると、各々行動を開始しはじめた。

「さて、では――」
――ようやく来たか!!――
「?!」
 神様がするような形に近いが、全く異なる感じで今の私の頭の中に声が響いた。
 時間は止まっていないし、声も神様の声とは全然違う。
 男の声をしていた。
「ダンテ殿下?」
「すまない、少しだけ静かにしてください、ちょっと待ってて欲しいのです」
 私の様子が変わった事を、フィレンツォはすぐ気づき、声をかけてきたが、私はそれを一度遮る。
(貴方は誰ですか?)
――我の名はロッソ、お前達が暴炎竜と呼ぶこの一帯の主だ!!――
(私のような者に、何故声を?)
――それは簡単だ――

――お前があのサロモネ王の最後の願いを叶えるに相応しい存在だからだ!!――

 謎の存在――否、暴炎竜ロッソの呼びかけに私は困惑する。
 後始末をするべきに相応しいとは、どういう意味だ、と。

――早く火口まで来るがいい、直に話してやろう!!――
 そこで、念話テレパシは終わり、私は息を吐いた。
「……すみません、ここの主に呼び出されたので逝ってきます。フィレンツォ皆様の方を――」
「何をおっしゃいますか、お供します」
「ダンテ殿下一人を危険にさらす気などありません、私も行きます」
「ぼ、僕も……あ、あしで、まとい、かも……しれないけど……いきます……」
「私も勿論行きます、そちらの方が危険でも構いません」
「お供いたします」
「私も、ついていきます」
 全員ついてくる発言に、私は頬を引きつらせた。

 暴炎竜ロッソが入り口を開いていたので、火口付近まですんなりと転移できた。
 また冷却も使用していたので、暑さ対策も万全だった。
「大丈夫ですか?」
「はい、皆さま体に異変はないようです」
「それなら良かったです……」
 私は火口へと足を進めた。

 目の前に現れたのは、半身を溶岩に浸らせている、真っ赤な竜だった。
「……貴方が暴炎竜ロッソ様ですね」
「いかにも!!」
 竜――ロッソは上機嫌な風に顔を緩ませ笑い声をあげた。
 周囲に笑い声が響き渡る。

 笑い声をあげる少し前に障壁オビジェ――所謂バリアーを発動させて、全員の体を包んだので笑い声の生み出す風圧などから皆を守れた。

「うむ、うむ、やはりサロモネの奴の言う通りだったな!!」
「は、はぁ……それで、私に何の用でしょうか?」
「端的に言えば、背後の山――封印の山の封印が解けかかってるから、どうにかしてこい」
「はいぃ?!?!」
 ロッソの言葉に、思わず私は耳を疑った。
「お待ちください!! 赤き誇り高き炎の竜の長ロッソ様!! 私の主にそのような頼みをするのではなく、この国の国王であるカリーナ陛下にお頼みするべきでは?!」
「お前達的に言えばそれが良いかもしれんのだろうが、駄目だ。アレをどうにかするのはお前の主であり、サロモネの子孫であるそ奴でなければならない」
 フィレンツォの問いかけに、ロッソは何でもないように返した。
「……」
 私は、ここで成程と理解した。

――神様が言ってた厄介な奴ってそれか――

 と。
「分かりました、やります。その代わりお願いがあります」
「良いぞ」
「私達は素材採取の為にここに来ました、ですから何か素材になるようなものを頂きたいのです」
「ふむ」
 ロッソは考え込むように瞼を閉じた。
「――そ奴らには我の鱗をくれてやろう。お前はそうだな、貴重なものをくれてやろう」
「有難うございます」
 竜の鱗――しかも暴炎竜ロッソの鱗となれば超貴重だ。
 私のはそれより貴重なら、やる価値はあるし、それとあのベネデットが決して勝つことができないという事を知らせるチャンスだ。

 性格が悪いのは承知だ、だって、私の大事なエドガルドを馬鹿にしたんだ。
 これくらいで済ませてるのはまだ優しいと思ってほしい。

「では、封印の地の行くための鍵を渡そう、手を出すがよい」
 ロッソの言葉に私は両手を出した。
 手の上にエステータ王国の紋章がかかれた赤い宝玉が出現した。
 片手で持てるくらいの大きさだが、凄い魔力を保有しているのは分かる。
「後で返してもらうぞ」
「分かっています」
 頷き、私は黒い山の方を見据えてから、皆の方を見る。
「少しだけ待っててくださいね」
 私はそう言って転移で黒い山の方へと移動した。

「――なんじゃこりゃあああ?!?!」
 黒い山に足を入れた途端、空間が平坦な何か汚い黒っぽい鼠色の地面の空間へと色が変わった。
「ど、どゆことだこれは⁇」
 地鳴りがすると思ったら、様々な色の柱が立ち、円で何かを囲んでいるような所から地面と同じ色の良く分からない存在が這い出てきた。
「なんだこれー!!」

 前世では一切なかった展開と、見たことのない存在に、声をあげるしかなかった。






https://note.com/fujisaki_25/n/nc7c0dc0d8af0  81話

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