閑話:想定以上でした(side:フィレンツォ)
「あ、あの、フィレンツォさん」
「何でしょうかブリジッタさん、お茶のお替りでも?」
「いえ、そのダンテ殿下と……」
私達はリビングでお茶を飲みながら過ごしていた。
ブリジッタさんがいいたいのはわかる。
が、これは全部ダンテ様が蒔いた種だ、自分で収穫してもらわないと困る。
「大丈夫ですよ」
「その……」
「ダンテ殿下はアレですが、誠実ですからね。全員に無理などさせないでしょう」
「そうですかね……」
これに関しては私の予測も甘かったし、私がどうなるかの予測も甘かったです。
一晩が経過し――
部屋からじゃっかんげっそりとした表情のダンテ様が出てこられました。
「ダンテ殿下、おはようございます。昨晩はお楽しみになられましたか?」
皮肉を込めて言うと、ダンテ殿下はぎらりと目標を見据えた獣のような目をして――
「何がお楽しみだボケェ!! 奥さんに連絡するからな覚悟しろ!!」
と私の顔面に拳を叩き込みました。
シャレにならない程痛かったです。
昏倒している私をダンテ様は容赦なくゲシゲシと蹴りつけます。
「だ、ダンテ殿下。あ、あまりそのような……」
「ブリジッタさん、止めないでください。今回ばかりは私も我慢できないのです」
「ぐ、ぐおお……わ、私は間違った事はして」
「間違った事とかどうとかじゃねぇんだよ!! 五人への焚きつけ方を考えろってんだこのアホが!!」
普段どころか私との口喧嘩でも出ない程の口調の悪さからかなりダンテ殿下は怒り心頭のようでした。
私はそのまま腰を掴まれ、頭部を背中から投げられるようにして床に激突しました。
「ごは!!」
「ブリジッタさん、私はちょっと自室で休んでますので。フィレンツォの事お願いしますね」
意識が遠のく中、何だかんだでやっぱり甘い御方だと思いながら私は目を閉じました。
ちなみに、後日談としてしっかり妻に報告され、私は妻からお説教を貰いました。
ぐすん。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?