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東京文化会館のイリーナ・メジューエワ「ショパンの肖像」ピアノリサイタル


2024年6月22日(土)、私は東京文化会館でピアノの演奏を聴き、上野の森美術館で書を鑑賞してきました。

東京文化会館でピアノを演奏していたのはイリーナ・メジューエワさん、上野の森美術館に展示されていた書の作者は石川九楊きゅうようさんです。

イリーナ・メジューエワさんと石川九楊さんの共通点はというと、お二人とも専門的なことをわかりやすく一般向けに本として出版したり、ウェブ上で解説やインタビューを公開したりしています。しかも、それが面白い。

そんな読みやすくて面白い本のひとつに、イリーナ・メジューエワさんの「ピアノの名曲 聴きどころ 弾きどころ」という著書がありまして、この本ではバッハからラヴェルまで9章に渡りピアノの名曲の魅力についてイリーナ・メジューエワさんが熱く語っています。

この語りというのは、担当編集者とご家族が忙しいスケジュールを縫って2年がかりで質問に回答した会話を元としているそうで、主に日本語で行われた会話とのことですが、日本語でうまく伝わらないときには英語、ドイツ語、ロシア語を交えながらの回答になったそうです。

このように、イリーナ・メジューエワさんを悩ませてしまう難解な日本語について、書を通して日本語を深く考察していらっしゃる石川九楊さんは次のように語っています。

日本語があるのではなく、漢字語とひらがな語とカタカナ語、この三つが混じりあった言語、これに日本語という名前を付けているだけ――これが正しい理解です。

 ~中略~

日本語の一番めんどうな問題は、漢字を使うことではなくて、漢字語と、ひらがな語と、カタカナ語と、この三つの違った言語からなるシステムからできている言語であるということです。

石川九楊さんの著書「日本論 文字と言葉が作った国」より


それでは、つたない漢字語、ひらがな語、カタカナ語で先を続けます。



東京文化会館小ホールで行われたイリーナ・メジューエワさんの「ショパンの肖像」というピアノリサイタルの様子はというと、

まず、イリーナ・メジューエワさんが小脇に楽譜を抱え落ち着いた色のドレスで舞台へ登場し、挨拶の後ピアノへ楽譜をセットし、演奏を開始します。

プログラムはショパンのマズルカ2曲(Op.33-3とOp.41-2)から、落ち着いた感じで始まり、ワルツ3曲(Op.34-1〜3)で華やかになり、前半の山場はピアノソナタ第2番「葬送」でした。

休憩をはさみ、

後半はポロネーズ第4番から始まり、ワルツ(Op.42)、バラード第3番 、マズルカ (Op.50-2〜3)、即興曲 第3番と来て、最後はポロネーズ 第6番「英雄」で盛り上がりが最高潮に達しました。

アンコールは、

3つの新しいエチュード第1番、マズルカ(Op.50-1)、ワルツ第6番「子犬のワルツ」で終了です。

イリーナ・メジューエワさんの著書によると、ショパンをベートーヴェンと比較すれば、ベートーヴェンはポリフォニスト、ショパンはメロディストであり、ショパンをバッハと比較すれば、バッハはどの楽器で演奏してもバッハになり、ショパンはピアノに限られ、いくら練習してもなかなかショパンにならない。

そんなショパンの世界を堪能しました。



ショパンの演奏を聴いた後、時間があったので、東京文化会館のお隣にある上野の森美術館へ立ち寄ることにしました。

上野の森美術館では「石川九楊大全」展を開催中です。いい機会なので、石川九楊さんの著書を何冊か読み、ウェブで調べたところ、そこでわかってきたことは、

書を鑑賞するには文字の上手い下手とか、文の意味とかは気にせず、筆で書かれた過程を追うことで、書きぶり、紙を舞台として筆が演じる「深度、速度、角度」の劇を楽しめばよいということです。

紙を舞台とした筆の劇。

「石川九楊大全」展へ立ち寄って書の見方が少しわかってきたのでした。

最後に、

シェイクスピアの「お気に召すまま」の名言で締めたいと思います。

この世は舞台、男も女も(筆も)みな役者。

イリーナ・メジューエワさま、
 ショパン役お見事でした。



読んでいただき、ありがとうございます。

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