【短編小説】ゾーンに入る
博士「遂に完成させたぞ、『神経を研ぎ澄ませる薬』じゃ!」
助手「おお!何ですかそれは」
博士「よくボクサーが、パンチが止まって見えるなどというじゃろ。あれは神経が研ぎ澄まされている状態なのじゃ」
助手「なるほど」
博士「いわゆる"ゾーン"というものじゃ、あれは類まれなるセンスを持った人間が、尋常ではない努力をし、極限状態で発動する状態…それを凡人でも体験できるのがこの薬じゃ」
助手「それはすごい!天才だ!天才博士!」
博士「はっはっは!早速飲んでみぃ」
助手「はい!」
助手、薬を一気飲みする
助手「あれ?なにも変わりませんよ?」
博士「そうじゃ、だんだん効いてくるだろう。スポーツの試合を想定して、だんだん効果が大きくなるように調合したのじゃ。5分後に効き始め、その10分後に効果が切れる。こうしちゃおれん!試しに卓球をしてみよう」
助手「効果時間が短いですね…分かりました。卓球苦手ですけど大丈夫ですか?」
博士「はっはっは!問題ないさ!なんせ"ボールが止まって見える"のだから」
助手「なるほど!」
二人卓球を始める、卓球をしながら話す。
助手「だんだん効き始めました!ボールがゆっくりに!!」
博士「おお!成功じゃ!この薬は30秒ごとに体感速度が1/2になるのじゃ」
助手「たしかに!どんどん遅くなっていく!!」
博士「つまり30秒後に1/2に、さらに1分後にはその半分の1/4に!」
助手「え?」
博士「5分後にはには2の10乗で1/1024じゃ」
助手「ってことは、10分後には1秒が31457280秒、効果が切れるまで体感で728日、2年かか…」
博士「おお、さすが1秒を16倍に感じている男、暗算が早いな!はっはっは!!」
二人、無言で卓球を続ける
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