見出し画像

脚本 コクリコ坂から

 読もうと思って読み進められていなかった、「脚本 コクリコ坂から」を読み切った。

 アニメ本編自体は、金曜ロードショーで観たきりなのだが、宮崎駿監督が基本、絵コンテで物語を作ると聞くせいか、ジブリ作品にはあまり脚本というものがないイメージがある。
 「コクリコ坂から」にしたのは、たまたま図書館にこれだけがあって、「そういや、宮崎さんの脚本なんて読んだことないな…」と思ったからだ。

 実際には、丹羽圭子氏という脚本家との共著ではあったのだか、宮崎さんが企画書で提示したイメージを上手く文字化しており、なかなか面白かった。
 1963年の風景や人々の生活を、まるでその場にいるかのように記したト書きやセリフの数々は、今やジブリ以外の日本の映像作品ではなかなかできない、リアリティを感じるものになっていた。

 特にト書きの書き方は、とても参考になった気がする。

 僕は大学時代、シナリオの授業で、アニメの脚本は、実際にアニメを作るスタッフ、特に、絵コンテを描くアニメ監督をはじめとした演出家が、どんな作品かをイメージできるように書くのが重要だと教えられた。
 その言葉には納得できるし、だからこそ、文章的な表現にならないよう書くようにしているのだが、そのとき僕はいつも、ト書きにどこまで場所や人の動きなどの情報を書き込めばいいのか悩んでしまう。

 事細かに書き込みすぎると、その脚本が全ページ読んでて楽しいものであっても、読むのが辛くなるぐらい長くなるし、演出家たちの想像力を狭めてしまう。
 かといって、あまり大雑把に書きすぎると、彼らがやらなければいけない作業量が増えて、単に脚本料を持っていくだけの脚本になってしまう。
 人からの依頼ならともかく、オリジナルで脚本を書く場合なんかは、その塩梅がとても難しく、正直、僕はそのせいで途中から書けなくなってしまうことが多いので、その意味でこの脚本は、その指標がとてもわかりやすかった。

 今回読んだこの脚本を読む相手は、鈴木プロデューサーと宮崎吾朗監督である。
 そのため、彼らが読みやすいと感じて決定稿としたものを出版していると考えれば、なんとなく答えが出てくるだろう。
 まぁ、吾朗監督によれば、人が並んでの会話シーンが多いという、アニメ的にはある意味難しいことをさせられたそう(仕掛けたのは確実に駿監督だろう…)だが、これから脚本を勉強するアニメ制作希望の学生にとっては、手に入りやすく、なおかつわかりやすい教材だ。

 この本と作品本編を見比べて、脚本からアニメを作るにはどうすればいいのか、よく知ってもらいたい。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?