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アルプスへGO!/YONA YONA WEEKENDERS

今年で28歳。分母が大きくなるにつれて、時の流れが早くなるって本当なのね。周囲は家庭を持ったり、仕事に精を出したり、趣味に生きたり。私はひとり、何も選択できないまま、今夜も氷で薄まった黒霧島をちびちびと飲む。


居酒屋の小さなトイレに貼ってある海外渡航へ背中を押すポスター。学生の頃、自分探しに旅立つ連中を心の底では薄ら笑っていたが、まさか今更自分が行きたいと思うようになるとは。結局小心者の自分が選択したのは、仕事帰りの1杯を探す旅だった。


幼い頃は両親の絡み酒が苦手で、学生時代は例え成人しても断固として飲酒しないと息巻いていたが、今や立派な酒好きとなってしまった。遺伝子には逆らえないな、とひとり呟く。隣の席で飲む仕事帰りのサラリーマンに適当な相槌を打ちながら、銘柄を吟味していく。女の子一人で珍しいね。今日は一人でのんびり飲みたい気分なんです、なんて定番のラリーを片手間に、最近ハマったウフマヨにライトな白ワインを合わせる。両親と違うのは黙っても酒が飲めるところかな、と田舎の両親を思い出して顔が緩む。隣のサラリーマンは何を勘違いしたのか饒舌になり、一杯ご馳走してくれた。


「結婚前にやりたいことやっとけよ」と言い放つ先輩たちは、やりたい事を教えてくれなかった。結局みんな自分以外の芝生が青く見えるだけなんでしょう?と思いながらも時間の空白を埋めるように、酒を飲む。

お気に入りのお店はいくつかある。日本酒とおばんざいで心を休める和食居酒屋。ワインと生ハムでご機嫌になるイタリアンバル。その日の気分で作ってもらうカクテルに酔いしれるbar。気まぐれに顔を出し、一期一会を楽しむ。やりたいことってなんだろうとぼんやり考えながら。


終電間近、ホームで電車を待つ時間、一人で何をしているのだろうと虚無感に襲われる夜もある。それでも、どこかに特別な夜があるのではないかと、飲みに行かずにはいられないのだ。 今夜も、誰も私を知らない場所で、私は私を探しに行く。


YONA YONA WEEKENDERS

「アルプスへGO!」


PS. 夜のお散歩をご機嫌にしてくれる曲です。



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