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「ゆるブラック」と若手人材を考える(2)

前回は、9月20日の日経新聞記事「「ゆるブラック」にご用心 残業や待遇を改善…若手なぜ辞める?」を参考にしながら、若手人材のキャリアについて一考しました。そして、働きがいを求めている人材は多いだろうということ、自己成長できないと感じることはそのまま勤続することへの危機感を高めてしまうだろうということについて考えました。

3つ目は、個の対応の有効性です。

同記事のように、労働時間もいとわず成長欲求や働きがいの充足を最優先にする人材もいれば、そうしたくても育児・介護などいろいろな制約を抱えている人材、あるいはまったく別の労働観をもっている人材もいるはずです。

同記事では全日出社の企業に魅了された人材が紹介されていますが、真逆の人材もいます。

多様性の実現というテーマも叫ばれ始めて久しくなりました。労働力人口がますます減っていき、限られた人材数で機械やAIにはできない、人だからこそできる価値を創造していこうという局面では、多様性の実現は改めて重要なテーマだと考えます。

働き方に関する全社員一律のルールというのも、これまでに比べて有効性が下がっていくのかもしれません。場所・勤務時間・職務内容・賃金・評価方法など、個人ごとに異なるのが理想になるのかもしれないと思います。

勤務時間も、所定の始業・終業時刻通りに動く人と、裁量労働制で労働時間という概念のない人とが併存するなど。そのような個別対応まで可能な制度を整備するのは難しいとしても、複数の選択肢を用意することはできるかもしれません

私の周囲でも例えば、仕事上の主な期待役割・機能とその範囲、出張や配置転換の可能性の有無などを改めて整理し、複数の職群として明確に定義しなおして各人に選んでもらうようにすることで、選択肢と納得感を高めようとしている企業もあります。このような取り組みによる選択の自由度を高めることは、これからさらに有効になりそうです。

4つ目は、3つ目とも関連しますが、成果の定義の重要性です。

組織として何の成果を追求するのかの定義は、言うまでもなく重要です。同様に、個人として各人に何の成果を期待し本人がどんな取り組みで貢献するのか、これまで以上に成果の定義が重要になってくるはずです。

同記事では、主に成長環境の整備の重要性がテーマになっていたように見受けられますが、あくまでも、企業が付加価値を生み出してお客さまにお買い求めいただくプロセスの中で、各人に何の成果を期待し、それに各人が応えているかどうかが、仕事における第一義です。個別対応が可能な制度の整備や働きがいの充足感、働き手が成長するかどうかなどは、成果が第一義で組織活動を考えるうえでの副次的な要素にすぎません。

しかしながら、「成果主義」というニュアンスが「単に売上や利益のみを評価する活動」などの偏った(誤った)理解がなされている組織も、いまだに多く見かけられます。各人が求められる成果は何なのかの明確化に、改めて立ち戻る必要があると思います。

同記事では、座談会に参加した20代のビジネスパーソン4人による、転職前の企業と転職後の企業に対する定量的な評価結果(主観に基づくものですが)も紹介されていました。各人による評価スコア5項目は、左から順に、①社員の士気、②待遇面の良さ、③風通しの良さ、④20代成長環境、⑤人事評価の適性感です。

・Aさん・女性・17年卒の場合
転職前(IT業界):      ①3、②3、③5、④3、⑤2
転職後(エネルギー企業): ①4、②4、③4、④4、⑤5

Bさん・男性・21年卒の場合
転職前(通信業界): ①3、②3、③4、④4、⑤2
転職後(SaaS企業): ①4、②3、③4、④5、⑤3

Cさん・女性・20年卒の場合
転職前(製造業):   ①2、②4、③3、④2、⑤3
転職後(EC支援企業): ①3、②2、③4、④5、⑤3

Dさん・男性・20年卒の場合
転職前(小売業):      ①3、②5、③4、④2、⑤3
転職後(人材サービス企業): ①4、②4、③4、④5、⑤5

同4人によることの偶発的な要素は多分にあると思われますが、「②待遇面の良さ」「③風通しのよさ」は環境として低下することは受け入れている人が見られる一方で、「①社員の士気」「④20代成長環境」「⑤人事評価の適性感」の低下を受け入れている(①④⑤が下がってもよいという環境を選んでいる)人はいないようです。

冒頭の3つ目でも挙げたとおり、あくまでも人それぞれ求めるものが違いますので、上記構図が当てはまらない人材もいるはずです。そのうえで、若手ビジネスパーソンの多くに共通して見られる一定の傾向=雇用側として押さえておいてよいポイントだと想定できる可能性はあると考えます。

<まとめ>
改めて、20代成長環境を重要視する若手人材は多いと想定される。

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