相互副業を考える(2)
5月23日の日経新聞で、「パーソル、副業「稼ぐ」から「磨く」へ リスキリング活用 100社橋渡し」というタイトルの記事が掲載されました。パーソルホールディングスが7月に始めると発表した、企業が相互に副業を受け入れる仲介サービスに関する内容です。
同記事の一部を抜粋してみます。
相互副業のテーマについては、以前の投稿「相互副業を考える」でも取り上げました。人材を相互に送り合っている、いくつかの企業の事例について考えた内容でしたが、上記の記事は、仲介のサービスを立てることでそうした機会を体系的につくりだそうということのようです。働く個人の側の心理的負担と企業側の物理的な負担と、両方を下げる有力な方法として、今後広がっていく可能性があるのではないかと感じます。
企業としては、労働力人口の確保が難しくなる中で、1人当たりの生産性向上が重要テーマになってきます。上記記事中にあるように、社内に知見やノウハウがない領域については、その領域に明るい人材を社外から調達し、社内の人材がかけるのと同じ時間を社外から来た人材が投入することで、明らかに生産性が高くなります。相互に人材を送り合って、両社の手薄な領域をカバーし合えば、総従業員数が同じでも組織としての生産性が高まります。
加えて、多様性の視点です。社外から来た人材の目で見たときに、不自然に見えること、改善できそうに感じることで、社内の人材には当たり前になっていて気が付かないということは、多いものです。そうした指摘をし合うことができれば、両社の生産性はさらに高まるはずです。
そして、もともと所属している企業のほうに、業務委託先で得た視野の広がりを逆輸入できれば、生産性を高めることにつながります。こうしたことを実現しようとすると、所属している企業、業務委託先企業の双方の環境で、社外の声に耳を傾ける、本当の意味での心理的安全性が不可欠だと思います。
このシステムの良い点のひとつとして、本人の希望をベースにしているということが挙げられます。
本業を持ったまま、さらに自身のキャリアづくりも目指して業務委託という形態で仕事をすることを希望するのであれば、モチベーションだとかワークライフバランスだとかいうテーマは、基本的に本人次第であり問題にならないはずです。
あくまで、所属先で取り組んでいる本業で成果を上げたうえで取り組むのが原則であり、本業をおろそかにしての取り組みになると本末転倒だとは思いますが、原則に沿っての取り組みであれば得られるものも大きいのではないかと想像します。
「副業で自信や能力を高めると、ステップアップのために離職してしまわないか」というジレンマは、気になるところではあります。そのうえで、そうした人材は、囲い込むことで果たして離職する確率を減らせるのかどうかも、一考の余地があると考えます。
<まとめ>
相互副業は、双方の企業にとって生産性を高める取り組みとなる可能性がある。
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