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自らの素直さを振り返る

先日、ある経営者様とお話をする機会がありました。その際、同社様のマネジメントチームについて次のような振り返りをされていました。

「自分が経営のバトンを受け継いで10年以上になる。長く経営トップの座に居続けたことで、今自分を支えてくれている役員、部長も全員、自分が選んだ結果となっている。よって、彼らは自分の言うことに対して、意見や異論を差し挟むことができていないかもしれない。

そのことが組織を硬直化させているかもしれないと気になっている。自分を客観視して、自分の至らなさや、自分の価値観自体がずれていないか、自問自答することが大切だと考えている。」

幹部人材登用の人事を最終判断するのは経営者の仕事でもあり、悪いことではありません。そのうえで、自分の選り好み人事でイエスマンを集めてしまっていないかという振り返りをなさっているわけです。そして、自分をよく知っている社外のチューター的な人物に師事し、自分の判断が鈍っていないか、自身を見つめ直す時間をとるようにしていると聞きます。

偉大な経営者だった松下幸之助氏は、経営者には素直さが最も大切だと説いていたと聞きます。松下氏がいろいろな一流の人物と会う中で、一流といわれる人には素直な心を大事にするという、その一点の共通点があることを見出したことによるそうです。

東洋経済オンライン記事「松下幸之助は「素直な心」が成功の要と考えた」には次のようにあります。(一部抜粋)

松下幸之助は、「自然の理法は、いっさいのものを生成発展させる力を持っている」と考えた。だから、素直な心になって自然の理法に従っていれば、うまくいく。世の中は成功するようになっている。

ところが、私たちにはなかなかそれができない。自分の感情にとらわれる。立場にとらわれる。地位や名誉にとらわれる。自然の理法になかなか従うことができない。それゆえ、かえって状態を悪くする。無用な苦労をする。望むような結果が得られない。一人ひとりのとらわれが、争いになり、つまるところは戦争にまで至る。

自然の理法に従うならば、もともと人間には進歩発展する本質が与えられている。言葉を替えて言えば、平和、幸福、繁栄を実現する力が与えられている。

「それがうまくいかんというのは、とらわれるからや。素直でないからや。だとすれば、素直でないといかん、と。素直な心こそが人間を幸せにし、また人類に繁栄と平和と幸福をもたらすものであると、わしはそう考えたんや」

「その根源の力にひとつの決まりがある。それが自然の理法というもんや。そしてその力には宇宙万物すべてを生成発展せしめる力があると。前に自然の理法は生成発展やと言うたのは、そういうことやったんや」

松下氏は、自らつくった「根源の社」の前に座り、次のような時間をつくるのが習慣になっていたそうです。

「今日、ここに生かされていることを、宇宙の根源さんに感謝しとるんや。ありがとうございます、とな。それから、今日一日、どうぞ素直な心ですごせますように、すごすようにと念じ、決意をしとるわけや。ここはわしが感謝の意を表し、素直を誓う場所やな」

松下氏の著書に『素直な心になるために』があります。この本にある「素直な心を養うための実践十カ条」は次の通りです(PHP研究所サイト参照)。まず、素直な心になりたいという強い願いをもつことが重要だとしています。

“まず素直になりたいという強い願いをもち続けること”
“たえず自己観照を心がけ、自分自身を客観的に観察し、正すべきを正していくこと”
“毎日、自分の行ないを反省して、改めるべきは改めてゆくように心がけること”
“素直な心になるということを、日常たえず口に出して唱えあうようにしていくこと”
“心して自然と親しみ、大自然の素直な働きに学んでいくこと”
“先人の尊い教えにふれ、それに学び、帰依していくこと”
“素直な心を養うということ自体を、お互いの常識にすること”
“素直な心になることを忘れないための工夫をこらすこと”
“お互いそれぞれの素直な心の実践体験の内容を発表しあい、研究しあっていくこと”
“お互いに素直な心を養う仲間同士として協力しあっていくこと”

同経営者様は、素直さを求めたいという気持ちが、冒頭のようなお話や社外のチューターも使って自己観照する行動となって表れているのではないかと、(勝手に)感じた次第です。

同社様の取引先や社員の方も存じていますが、総じて評判のよい経営者様で、結果としての業績も残しています。冒頭のようなお話がご本人の内面から湧き出ている時点で、実はそのような懸念は少ないのではないかと思います。

<まとめ>
素直な意思決定になっているか、振り返ってみる。

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