金融市場の環境変化を考える
米シェアオフィス大手のウィーワークの経営破綻が話題になっています。新しいオフィスのあり方を提案する象徴的な存在の企業でしたが、経営が成り立たなくなったようです。
11月8日の日経新聞記事「ウィーワークが経営破綻 オフィス需要低迷響く 金利上昇が重圧」を一部抜粋してみます。
同記事からは、2つの環境変化について感じ取ることができます。自社の事業が属する市場の環境変化と、金融市場の環境変化です。
ウィーワークは2010年の創業です。世界的なワークスタイルの変化や働き方改革の流れを先読みし、リース方式で借りたオフィスを改装し、「また貸し」するシェアオフィスとして急成長しました。
その後コロナ禍もあり、「従来型のオフィスに出社」というワークスタイルは変化を続けました。しかし、在宅勤務を含めたリモートワークなど、シェアオフィスという形態を超えるところまで変化が及んでしまい、シェアオフィスという形態への需要が逆に減ってしまったというのが大きな流れだったと想定されます。
自社の属する市場環境を絶えず観察しながら、変化の察知と見通しの予測をすることの難しさと重要性を、改めて感じます。
加えて、金融市場の変化です。
金利が5%ということは、仮に必要資金のほとんどを借入に依存している場合、単純な図式として営業利益率が5%を超えていないと事業活動として成り立たないということになります。安定して利益率5%を維持するというのは簡単ではありません。
別記事を参照すると、米国では7~9月にクレジットカードの支払いができずに延滞した割合が8%超と、12年ぶりの高水準となっているようです。物価高・金利高の家計負担をやりくりしきれず、30~39歳で延滞が急増しているそうです。コロナ禍で20年3月から3年半支払いを免除されてきた学生ローンも10月から返済が始まっていて、今後の行方が注目されています。これらによる影響が広がると、経済環境の悪化も懸念されます。
日本でも金融市場の変化の影響が指摘されています。11月8日の日経新聞記事「コロナ融資の不良債権、昨年度末6% 検査院調べ」によると、コロナ融資の不良債権が昨年度末で全体の6%あるということで、今後増えていく可能性があります。
政府系金融機関が中小企業に行った実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)について22年度末までの貸付残高は14兆3085億円、うち回収不能の恐れがある「リスク管理債権」が8785億円あるということです。リスク管理債権の額は20年度末の3倍強になったとあります。
民間分も同様の傾向ならゼロゼロ融資全体の不良債権は2兆円超になる可能性があるとしています。ゼロゼロ融資以外での貸付にも一定の不良債権があるでしょうから、融資全体ではもっと大きな規模になることが予想されます。
東京商工リサーチによると、23年4~9月の倒産件数は、前年同期比44%増だということです。
金利ゼロで借入ができる、返済が猶予されるというのは、本来、通常の状態ではありません。未来も過去と同じコンディションを前提にできるわけではないということです。
日本では、金利がゼロに近い低金利に長期間慣れてきました。日本で米国のような高い金利になるとは、しばらくの間あまり考えられませんが、それでも従来に比べると金利が上がっていくことが想定されます。自社の財務状況で、金利が上がっていった場合にどうなるのかの影響についても、想定しておく必要があると思います。
また、自社の借入規模が限定的で借入に関する影響が軽微であっても、金利が上がることで自社を取り巻く外部環境が変わった場合に受ける影響も想定しておく必要があります。
<まとめ>
金融市場の環境変化に備える。
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