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「縦」と「横」の視点でデータを見る

6月20日の日経新聞に、「資源、高まる供給リスク」という記事が掲載されました。「銅は20年6月上旬比で7割高、原油は2倍」の値動きとなっていて、価格が高騰しています。
同記事の一部を抜粋してみます。

~~鉱物資源などの国際商品価格が2020年半ばから急上昇している。需要の急回復に加えて鉱山操業や物流の停滞が足元の需給を逼迫させた。短期的な要因が資源高をけん引するが、上昇は一過性にとどまらないとの見方も出ている。投資抑制や脱炭素をにらんだ需要増といった中長期の構造要因がある。

銅は20年6月上旬比で7割高、原油は2倍――。国際商品の総合的な値動きを示すロイター・コアコモディティーCRB指数は急ピッチで上昇し、6月11日には約6年ぶりの高値の212台を付けた。

短期的には中国や米欧を中心とした資源需要の急回復や、新型コロナウイルスの影響で海運などの物流や鉱山操業が停滞して需給が逼迫した。銅の在庫は5年前比で6割減少し、ニッケルも4割減った。在庫が減少した商品ほど価格は上昇している。

中長期の需給を見渡すと、投資不足に伴う供給面の制約がある。資源開発大手は過去の過剰投資の反動で設備投資を絞った。新興国の需要拡大で資源高が続いた00年代に増産投資を進めたが、金融危機後の資源バブル崩壊で生産能力の余剰があらわになり、新規投資を削減した。

その結果、金、銀、銅の生産上位5カ国の合計生産量は16年をピークに減少している。住友商事グローバルリサーチの本間隆行氏は「鉱山開発には10年程度の期間を要し、投資縮小は長期の供給制約につながる」と指摘する。原油も投資が減っている。~~

価格は大きく、需要と供給の結果と、政府等の介入の要因で決まります。商品価格の高騰は、上記も参考に、シンプルには以下のように整理できそうです。

需要:景気回復により企業向け、消費者向けともに増加
供給:供給能力の減退により減少
⇒需要増と供給減のダブル要因により、価格が急騰している

なお、一言で「商品」といっても、細かく見ていくと鉱物等の種類によって動きが違います。景気との連動性が高く「景気のバロメーター」と言われているのが、銅です。用途が多様で、幅広い生産活動に使われているためです。太陽光発電、風力発電、電気自動車等でも銅は必要なため、脱炭素化の流れの中で引き続き景気のバロメーターであり続けそうです。その銅が上がっています。

原油も依然としてエネルギー源の大半を占めているため、多くの企業活動や消費活動と連動していて、景気との連動性が高い資源です。しかし、銅に比べて各国政府の政策内容や地政学的要因に左右されやすいという性質があります。その上で、銅と合わせて値動きを見ることで、より景気の動向を把握しやすくなると言えます。その原油も上がっています。

景気と逆の動きをしやすいのが、金という商品です。金は埋蔵量が限られているため、価値が落ちず長期的には上がり続けているという性質があります。経済活動に伴う実需の需要もあります。一方で、リスクが高まっているとされる経済局面での駆け込み先として認識されていて、景気後退時に買われるという性質があります。「有事の金」です。昨年8月には2000ドルを超えていた金先物が、今は1800ドルを割り込んでいます。この推移は、先物投資家が景気拡大を意識した動きをしている(よって金を売る)ということでしょう。

昨日、データの「縦」と「横」について取り上げ、あるデータの時系列推移を見ていく「縦」の視点について考えました。上記は、別々のリアルタイムのデータを関連付けて考察する「横」の視点です。例えば上記のデータを横に並べると、銅上昇、原油上昇、金下落です。

6月21日の日経新聞でも、2021年度の全産業の設備投資計画額が前年度実績比10.8%増える見通しとありました。2年ぶりの増加で、新型コロナウイルス感染拡大前の水準に並ぶということです。コロナ禍によりかえってデジタル投資が増えた面もあり、投資を増やす動きが見られます。例えばこのことも、上記の動きと一致している「横」の動きに見受けられます。

今後の景気は、変異型ウイルスの動き如何によって変わる可能性のあるものですが、様々なテーマで縦横どちらの視点を見ても、今のところ景気拡大を示しているものが多く見られるのが現状と言えそうです。

<まとめ>
データを「横」の視点でも追うことで、現状把握と先読みに役立つ。


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