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中国の開発用不動産を考える

9月1日の日経新聞で、「中国主要不動産11社、開発用地3割評価減なら債務超過 政策効果は限定的」というタイトルの記事が掲載されました。しばらく前から各所で中国の不動産市場の見通しが懸念されていますが、そのことについて取り上げたものです。

同記事の一部を抜粋してみます。

中国の不動産開発会社に債務超過リスクが浮上している。主要11社の6月末の開発用不動産(開発用地)は約6兆3500億元(約130兆円)にのぼる。単純計算ではこの評価額がおよそ3割下落すれば現在の資本は枯渇し、債務超過に転落する。

開発用不動産は住宅開発のために仕入れた土地使用権や建設途中のマンションを指す。日本経済新聞が2022年の販売上位10社に中国恒大集団を加えた11社の6月末の開発用不動産を集計したところ、合計約6兆3500億元だった。

不動産開発会社は入札や相対で開発用地を仕入れ建設会社に建設を発注する。引き渡しまで物件を自社のバランスシート(貸借対照表)上に保有するため、住宅価格の下落局面では評価減のリスクにさらされる。

主要11社の6月末のバランスシートは資産総額約12兆3300億元に対し、負債総額が約10兆3400億元。差し引き約1兆9900億元が資本となっている。資産のおよそ半分を占める開発用不動産の評価が32%下がれば資本不足で債務超過に転落する計算だ。

主要11社が保有する開発用不動産は経営再建中の恒大が最多で1兆859億元にのぼる。

恒大は2021年12月期に3736億元、22年12月期に16億元、23年1~6月期に21億元の評価損を計上した。これが巨額の最終赤字の主因となり、6月末に6442億元の債務超過となった。

不動産最大手、碧桂園控股(カントリー・ガーデン・ホールディングス)は6月末時点で2544億元の資産超過だった。ただ8436億元と資本の3倍を超える開発用不動産を抱え、リスクをはらむ。

1~6月期決算は恒大と碧桂園の2社が最終赤字、4社が減益、5社が増益と分かれた。資産をどう評価するかは経営陣と監査法人の裁量が大きい。恒大以外は目立った評価減を計上しなかった。

中国政府は政策金利引き下げや住宅購入規制の緩和などで住宅市場の活性化を狙う。ただ消費者は引き渡し不能を恐れて未完成物件の購入をためらうようになっており政策効果は限られている。

資本は、返済義務のないお金です。負債は、返済義務のあるお金です。負債総額の約10兆3400億元は、返さなくてはいけない借金です。

一方で、持ち物である資産は約12兆3300億元です。そのうち、開発用不動産が約6兆3500億元ということで、だいたい半分です。残りの半分は、現金や現金以外の金融資産や設備などです。仮に今すぐ借金を返済しなければならなくなったとしても、すべての持ち物を投入できるのであれば、10兆<12兆で返済可能です。

しかし、開発用不動産は、売れることが決まっているわけではないものが含まれているようです。「土地使用権や建設中の物件を完成させれば、これぐらいの値段で売れるだろう」という想定のもと、仕入れた土地の評価や建設中の建物の評価が約6兆3500億元ということです。

実際にこれに近い値段で売れれば問題はありません。あるいは仕入~開発の間に評価額が上がってより高い値段で売れれば、差分が利益となって成長していきます。以前はまさにこのモデルが成り立っていたのだろうと想定できます。

逆に、約6兆3500億元を下回る値段しかつかない場合は、売って回収できるお金が減ってしまいます。同記事によると、主要11社全体で開発用不動産の評価額が3割下がると、主要11社全体の借金が返せなくなるというわけです。同記事の内容だけでは全貌は分かりませんが、しばらく前から各所で指摘のある不動産市場悪化の情報等によると、想定されうるシナリオだとも考えられます。

現在、1元=約20円です。10兆3400億元は、203兆4000億円となります。日本のGDPは約560兆円です。日本の国家予算における一般会計は約110兆円です。これらを踏まえると、中国の不動産開発会社による借金の金額が、主要11社のみでも莫大な規模だということがイメージできます。仮にこれらの返済が滞ってしまった場合、その影響は莫大なものとなりえます。

中国の不動産市場は基本的に国内資本で成り立っていて、海外からの投資はほとんどないとも言われます。しかしながら、中国の不動産業界は中国GDPの約3割を占めているため、当然ながらその悪化は中国経済全体の悪化へ大きく影響します。中国経済とかかわりのある日本をはじめとする他国への影響を与えます。

中国の不動産市場を注視すべき状況が当面続きそうです。

<本日の一言>
海外経済動向に注視が必要。

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