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面倒くさい楽しさを知ってしまったら


7月1日

雨が続いている。窓の向こうに見える山には白い雲がかかり、木々の緑色はより一層深く見えた。自転車で買い物が行けなくて少し不便だけれど、この街へ来てから雨が好きになった。木々たちが雨の恵みを喜んでいるように見えるからかもしれない。観葉植物へ水をあげる時もなんだか喜んでいるように見える。今日は月に一度のサボテンへの水やりの日。頻度が少なくて忘れてしまいそうだから、月の始めと決めている。私が枯らしてしまいそうだったサボテンをおばあちゃんがいつの間にか植え替えをして、巨大化させていたことは今でも忘れない。なにそれと聞いてしまうくらい大きかった。


ここ数日はもっぱら新曲のレコーディング。雨が続いているからちょうどいい。気温はそんなに高くないのに、蒸し暑さに襲われる。クーラーはまだ付けたくないから、なんとか扇風機でしのぐ。自分は放っておくと何週間も引きこもれてしまう。この引きこもり体質が今では創作へ役に立っていてよかった。「鶏が先か、卵が先か」という話があるけれど、私は引きこもり体質だから創作をするようになったのか、創作をしたいから引きこもるようになったのか。どちらにせよ、創作は引きこもり体質のおかげだし、引きこもり体質は創作に支えられている。


スイカを買ってきた。大きいから半分に切って、2日間に分けて楽しむ。塩はかけない派。栄養があって体にいいんだよと、整体の先生に教えてもらった。ほぼ水分で、何の栄養もないと思ってたスイカごめん。水々しく輝く赤と緑。いよいよ夏が近づいてきた。


7月2日

観葉植物の水上げスピードが早い。パキラとベンジャミンとオリヅルランに水をあげる。久しぶりに雨もあがり、たまった洗濯物を干す。そんなことをしているうちにせっかく淹れたコーヒーが冷めてしまうことに気づき、最近は一通り終わってから淹れるようにしている。今回は近所にある珈琲焙煎屋ヴェッカーの豆。新鮮な豆は、85℃くらいのお湯で淹れると香りが引き立つのだと店主に教えてもらった。お湯を注ぐと挽いた豆がプクプクと膨れ上がり、コーヒーの香りを漂わせる。


今日も新曲のレコーディングをする。音楽の生成AIがすごいという話を聞き、何日もかけて作っているこの曲も一瞬で作れてしまうのかと思うと少し複雑な気持ちになった。今から絵を描き始めようとする人間が紙とペンではなく、ペンタブを選ぶように、曲を作り始めようとする人間も生楽器ではなく、AIを選ぶようになるのだろう。こういう文章もChat GPTに書かせる人間が増えていく。それでも私がそれらを選ばないのは、面倒くさいことをわざわざやりたいからだ。創作の楽しさとは、簡略化させて完成までの時間を短縮させることではなく、いかに過程を楽しむかだと思っている。わざわざ自分でやる面倒くさい楽しさを知ってしまった私はもう、元に戻ることはできない。


お昼ご飯を食べていると、ベランダへ野良猫がやってきた。そのまま座り込み、寝始める。お昼寝かな?いや、しょっちゅう寝ている猫にお昼寝という概念はないか。私も眠い。昨日切ったスイカの残り半分を食べよう。


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