見出し画像

余談「アフレコと脚本家」

アフレコにいく理由

アフレコとは声優さんがアニメの絵に合わせて声をいれること。
アフターレコーディング……のはずなのだが
最近は絵コンテや原画の絵に合わせたり、
名前のボールドが出ている間に声をあてるので
プレスコ(絵の前に声だけ収録するスタイル)
でもないけど、昔から言われている
アテレコが最適解なのだろうかとも思っていますが、
アフレコはアフレコなのでアフレコと呼ぶことにしておきます。

実際にアフレコの現場において
監督と演出家さんは立ち会うことが多いです。
絵に合わせて台詞が合わなかったした場合、
タイムシートなどで確認して絵を修正することがあるからです。

また絵がまだ完成していない場合、
キャラクターの動きなどがどのようになっているのかも
実際に絵作りをしている演出家さんでないとわからない場合が
多いからです。

けれど実際に文字で書かれた台詞を
音で聞いてみると違和感がある場合や
言いにくい言葉が並んでしまった場合、
尺の問題で台詞が入らないこともあったりします。

このとき台詞を修正しなくてはなりません。

直せるのは収録現場にいるスタッフだけです。
監督、音響監督、プロデューサー、はたまた声優さんたち……。
こんなときその物語を書いた脚本家がここにいたら――となるわけです。

アフレコ現場での仕事

アフレコはリハーサルから行われることが多く、
テレビアニメの場合、ABパートとCMを挟んで
分かれているので、このパートごとに収録を
すすめることが多いです。

現場次第なのでこれに限ったことではありませんが、
リハ1回の本番1回、あとは部分修正といった流れで収録は進められます。

この流れの中で、脚本家はリハーサルの段階で
実際に音となった台詞を確認していきます。

音のリズム、イントネーション、ブレスの位置や
用語の統一、または口調の確認など様々です。

更に、脚本家が自分が担当した作品の絵コンテを渡されることは稀です。
(くださいと言えばくれることもある)
そこで物語が絵作りに合わせて変わっていたり、台詞が直されることも少なくありません。
人によっては脚本すら使ってないこともあったりします。
(最近はそこまで乱暴な話は聞かなくなりましたが)

更にカッティングと呼ばれる工程で
尺に入らずカットしなくてはならないシーンなどもあり、
そこで台詞が前後に移されたり、短く直されることもあります。
またその逆で尺足らずという恐ろしい現象が起きた場合、
シーンをなんとかもたせるために台詞を作ることもあります。

ですがカッティングに脚本家が立ち会うことはほぼありません。
大体は立ち会った監督さんや演出さんがそれを行い、
そこでシーンを取捨選択し尺調整されたアフレコ用の映像でアフレコは行われます。

脚本家がアフレコ現場にいる場合、
ここではじめて自分自身の脚本が(未完成ではありますが)
映像という形で提示されることになります。

台本もアフレコ現場ではじめて見ることが多かったりします。
そしてリハーサルの段階で脚本から修正された箇所などをはじめて知るわけです。

修正台本などの情報が事前にくればいいのですが
脚本家は現場の人間ではないという認識が強く
こうした連絡が来ることはほぼありません

二回いいます。
ほんとに、ほぼありません!

シリーズ構成をやってても来ないので
制作さんの目には脚本家は映ってないのではないのか
と思うこともたまにあります。
(制作さんへの意見はまた別の機会に)

「次、ください」と行っても来ないので
リクエストすることはあるときから辞めました。

アフレコのリハーサルの段階で
どこが落とされ、どこが変更となり、
問題があればリハーサルの後に
音響監督、監督、プロデューサーなどに意見します。

声優さんから言い方のニュアンスなど
リクエストされることもあるので
それにも対応したりします。

間が空きすぎて言葉が足りないときなどは
台詞を少し増やして間を埋めることもあります。

そこそこやるべきことはあったりするのです。

アフレコに立ち会うメリット

僕自身の考え方ですが脚本家はできるだけ
アフレコに立ち会ったほうがいいと思っています。
現場に聞いてみて、OKならばできるだけ行ったほうがいいでしょう。

アフレコの現場で実際に声が吹き込まれる瞬間は
絵が動き出すのと同様にキャラクターに生命が吹き込まれる瞬間です。

自分の書いた台詞が頭に描いたテンポや芝居になっているのかどうかがわかるのです。

バッチリはまることが最高の瞬間ですが、
声優さんがこちらの上を行く芝居をしてくることもあります。

それがまた楽しいわけです。

仕事だから楽しんじゃダメなんですが、
この声を吹き込まれた瞬間で脚本家の仕事はほぼ終わっています。

あとは絵作りを監督たちに任せるだけです。
(絵が完パケしていればダビングだけなのでみんなでお疲れさまな感じになりますが……実際はそんな現場はほぼないでしょう)

あとアフレコに立ち会っていると
その番組のサウンドドラマなど、絵のいらないコンテンツを作る際に
頭の中に声が再生されますので、生き生きとした芝居が書けるようになります。

また声優さんの芝居や声質などがわかれば
別の番組などでご一緒した場合にも、ある程度のイメージがわいてきます。
そうしたシミュレーションをもって脚本が書けると、より活きた台詞が書けるのではないかと思うのです。

今回は脚本家が思うアフレコ現場での話でした。

次回、また別の余談を送りたいと思います。
お楽しみに――!






サポートしていただけることで自信に繋がります。自分の経験を通じて皆様のお力になれればと思います。