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余談「シリーズ構成」

シリーズ構成の役割

テレビアニメでスタッフのクレジットを見ていると
「シリーズ構成」という役職が目につくと思います。

文字通り、テレビアニメのシリーズの物語全体の構成を
まとめる役職となります。

テレビアニメのシリーズは全体の話数が決まっていることがほとんどです。

1クールの場合13話か12話、
2クールならば26話、
4クールの場合は50話か52話という場合が多いです。

これは放映されるテレビ局などの都合で決まることがありますので
シリーズの企画段階で決まっています。
(同時に全体の予算も決まります)

この話数に合わせて与えられた企画の物語の配分を決めるのが
シリーズ構成の役割となります。

構成はどう決まるのか

シリーズ構成が物語の配分を決めるといっても
独断で自由に決められるわけではありません。

例えば連載漫画の構成会議の場合です。

テレビ局プロデューサー
代理店担当者
出版社編集者
(原作者)
アニメ制作会社プロデューサー
監督
シリーズ構成
(各話数脚本家)
(デスク・設定制作)

などで構成打ちが行われます。

構成打ちが行われますよと言われると
まず、シリーズ構成の担当者がおおまかな構成表を提出し
それをたたき台にしてそれぞれが意見を出していきます。

シリーズ構成は脚本家としての経験値もそこそこある方が
指名される場合が多く、だいたいの盛り上げどころなど
作品のテイストに合わせて構成をしていきます。

連載中の作品で、掲載分が足りなくなると判断すれば
オリジナル要素を提案したりもします。

またはアニメとしての強さを出すために
原作の設定を使うだけでアニメとしてのエピソードに
塗り替えられることもあります。

けれどこれを構成打ちに参加した
プロデューサーや監督などが「NO」と言われれば
それぞれの意見をすり合わせた形での構成表を
作り直して次回に提出することとなります。

こうした構成打ちは放映時期が先であれば数ヶ月かかることもあります。
ただ放映が半年後に控えてる状態での構成打ちなどは
構成などしてる暇もないのでとりあえずなんとなく割った感じで
始まり方と終わり方を決めて、後は野となれ山となれと
各話脚本を走らせながらの調整となったりします。
(アニメ業界ほんとうにあった怖い話あるある)

この構成打ちで作品の方針が決まります。

原作付の場合なら、原作の魅力をどこまで引き出すのか。
ほぼ原作のママで行くと決めたり、
キャラクターに味付けしてみたりと様々です。
細かなシーンの調整などは各話脚本のしごととなります。

オリジナルの場合であれば
原作がないので、一話1ページのおおまかなプロットを構成として
提出し、必要な設定や伏線、盛り上がりなどを皆に提示します。
こちらは原作付以上に各話脚本を進めつつ、構成も修正するという形になりがちです。

例えばこれは僕がシリーズ構成した作品の構成表の一部です。
Microsoft EXCELで作っています。
(※諸事情により多少ぼかしてあります)

シリーズ構成表

小説原作の作品でしたが4クールあり、オリジナルパートをはさまないと原作が足りなくなると判断したこと、更にもう少し前段で主人公と登場人物の絆のようなものを描きたかったのでそこを膨らましてあり、原作部分の冒頭が第6話となったというものです。

こうした構成表を脚本家さんに発注する前に作り、
原作のどの部分にどれぐらいの時間を割くか、
また制作の状況を鑑みて、まとめエピソードを作るかどうかなど
相談したりします。
(※まとめエピソードであり、総集編ではない!! これ大事。制作的にとても大事!! 音声新録だし!!! 絵は兼用ほとんどだけど……)

また別のオリジナル作品では、原作がないため登場人物の出し入れなど
物語の中での絡み方が複雑だったりしたため登場人物を軸とした
物語の構成チャートを作成することもあります。

シリーズ構成チャート

(※また諸事情によりぼかしてあります)

こうすることで客観的に物語の流れにキャラクターがどんな役割を果たしているのかなどが一目瞭然となります。
また「このキャラクター、あまり出てないね」など見えることになり、
キャラクターが多い場合などは削ったりすることもあります。

こうした資料を元にシリーズ構成は物語の展開や構成、内容をスタッフに理解してもらいつつ、各話脚本家に発注していくのです。

他の仕事

シリーズ構成の仕事はこうした構成をするだけが仕事ではありません。

各話脚本が上げた脚本を前後の話数と合わせて調整し、修正を加えたりして決定稿とする作業もあります。

人によってはまったく手をいれないシリーズ構成の方もいます。

また人によっては完全に書き換えてしまうシリーズ構成もいます。

これは現場によって様々で、シリーズ構成と各話脚本家さんとの間で取り決められることが多いです。
構成「ちょっと手を入れるかもしれないけどごめんね」
脚本「あ、いいですよ」
みたいな感じです。

僕がシリーズ構成をする場合ですが、
最初の頃はすごく手をいれること多かったのですが、
最近は各話脚本家さんにほとんど任せて、細かな調整をするだけです。
本読みで修正ポイントやニュアンスを伝えきれなかったら自分の負けだ――くらいな気分です。

こうした修正の仕事の他に、アフレコなどに立ち会って
最終的な台詞の調整などをすることもあります。
各話脚本家が立ち会うことは稀なので、
シリーズ構成が立ち会い、台詞の長さを変えたり、言い回しを変えたりと細かな調整をしていきます。
(とはいえ、余談「アフレコと脚本家」に書きましたが修正台本が来ないので現場で「え? ここかわったの!?」というのがほとんどですが)

またあらすじを書いたりもします。
200字、400字が多いです。

更には予告を書く場合もあります。
現場によってこれは様々なのですが、
僕がシリーズ構成をやった作品はほとんどは僕が予告を書いています。
僕が一番、楽しいというか、遊べるところなので譲りたくないというのでやらせてもらってます。
各話脚本で参加する場合は求められれば書くといった感じでしょうか。

あとはサウンドドラマの仕事などもシリーズ構成がやることがあります。
各話脚本家の方は割と他のタイトルの仕事も兼ねていて、あいていればお願いできますがそうもいかないこともありますので、シリーズ構成に回されることが多いです。
(現場によっては新人ライターさんがやることもあります)

割とシリーズ構成はシリーズの中において脚本に関わる調整や雑務が多いです。

多いんですが――、シリーズ構成費、だいたい一話あたりこれぐらいでまとめてこんなもん――的な感じでギャラが提示されます。
僕の場合、会社員ということもあり自社のシリーズ構成作品など、構成費がいくらか知らずにやってたりします。
(出てないのかもしれませんが……)

参考までに自分がここまでにしてきたシリーズ構成作品です。

BLOOD+(監督兼任・初シリーズ構成)
獣の奏者エリン(小説原作)
RD潜脳調査質(オリジナル)
APPLESEED XIII(漫画原作オリジナルエピソード)
もしドラ(小説原作)
ピカイア!(オリジナル)
ピカイア!!(オリジナル)
アトム・ザ・ビギニング(漫画原作)
ガル学。(オリジナル)
MARS RED(2021年放映予定)(朗読劇原作)

シリーズ構成がオリジナルを作る場合、
様々な条件を鑑み、構成していることがほとんどですので
「ほんとはこうしたいんだけど」とかもありますが
常にその時々でベストの選択をしていると信じて仕事をしています。

今日はシリーズ構成の仕事についての余談でした。
また次の余談をお楽しみに――!

おまけ

小説の構成もシリーズ構成に似てるのでちょっとだけ掲載しておきます。

**00・ディーヴァと響と奏
・ディーヴァが赤ん坊のふたりに語りかける言葉。
(02)

**01・響がアダムに会う 
(2月1日6時)
・横田基地近くで暮らす音無響。高校までの道を自転車で行く。基地のある町は沖縄に似ていて好き。
・早朝の学校。陸上部で走る。誰もいない場所は心地よい。周りに溶け込みたくない。
・自分自身が他人と違うこと。意識している。自分を見ている人物。青い目の男の子――アダム登場。
・ホームルーム。五嶋ミノリ。謎の薬の噂。転校生の登場。またも自分を見ている。デヴィッドと名乗る。
・学校で暴れる学生。薬きめてた?とか噂。米兵から流れてきた?とか。
・怪しい情報。テロリストたちの巣がある。どこか――?
・部活は中止。一斉下校。響を見ているデヴィッド。言い返すが迷惑と逆に返される。
・夕方。OMORO。奏が出かけるところ。自分自身の身の置き場所、ここにはない。
・響を見つめる黒い影。ハジ? 敵?
(30)

**02・奏のこと――ふたりの距離感。 (24)
(2月1日16時)
・立川。町のノイズのこと。学校の友だちとの約束。将来の夢。歌を歌いたい。
・ヨコチの陰謀。よくない噂が最近あるケンジと一緒。薬? 帰ろうとする奏。
・奏のピンチ。奏、逃げる。追いかけてくる悪漢。何者かに倒される。ネイサン?
・反体制的な存在。
・OMOROに戻った奏。平然として。カイとの会話。カイが好き
・寝ている響。一番振り向いてほしいのは響。
(2月2日8時)
・翌日。響はもう学校に行っている。奏も学校に。
・学校でヨコチと会う。謝られる。さっぱりしてる奏。県立高校で暴れた生徒の話。
・心配する奏。放課後の町。おかしな声。胸騒ぎ。
・自宅に帰る奏。家を見つめる謎の影の存在。
(24)

**03・響に降り掛かる事件――学校帰り・ハジ登場?>何となく分かる程度。(24)
(2月3日5時)
・学校に行きたくない雰囲気。生理が近い? カイから休めと言われるが行く響。
・学校に来た響。昨日のことで全校集会。教師のひとりに呼ばれて。
・教室に向かう響。途中で現れた黒衣の男。なにこのひと? 「逃げろ」と囁き。逃げ出す響。
・教室にこもるともうひとり生徒。ミノリ。様子がおかしい。襲われる。助けたのはデヴィッド。
・デヴィッド。銃を持っている。そこからも逃げる響。体育館。生徒たちが皆おかしい。
・逃げられないか? デヴィッドが連れだして。学校から逃げる。バイクを盗むデヴィッド。
・追いかけてくる謎の人間たち。チェイス。デヴィッド逃げる。
・地下道に隠れて。なんとかやり過ごす。OMOROに帰りたいというが帰れないと説得。
・夜になってOMOROに向かうが、そのOMOROは焼けていた。
・謎の黒服たち。逃げるデヴィッドと響。
(24)

**04・奏――帰ってこない響、襲われるOMORO。ネイサン遭遇。(32)
(2月3日10時)……少し時間遡る。
・家にいる奏。生理とかいってズル休み。謎の声聞こえてきて。その声に導かれるままに表に出る。
・ネイサン(名前はまだ明かさない)の声。はなれたところから「逃げろ」
・家に突っ込んでくる車、家が炎上。カイが死んじゃう!と慌てる奏。
・奏たちが狙われる背景。反体制派。テロリストの疑い。いま世界を騒がせている無国籍集団。
・その一味として認識されているカイ。
・公安を名乗る警察の襲撃? カイ、行方不明。
・混乱の中、奏は別の組織に保護されて――。
・君たちは騙されている。――君たちが親だと思っていた人物が本当にその人物なのか?
・君たちは誘拐されている。騙されてるんだ――と言われる。赤い盾を名乗る人物たち。(嘘)
・沖縄からなぜ東京にまで来たのか。彼らは赤い盾から君たちを奪ったからだ。ようやく探し出した。
・もうひとりが危ない。
・奏、響を救いたいと思う。響は敵の人間に騙されて逃走中だ――と。
・横須賀に待っていた船。ここで待つ。いったいなにが起きているのか。
・奏は聞かされる。お前たちは狙われている――と。
(32)

以上、『BLOOD♯』の構成です。
こういうのを小説を書く前に書いてたりします。

そろそろ続き書きたいなぁ。




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