ハイネケンCMから考えるブランドパーパスの在り方
ようやくnoteを書きたい意欲が出てきたので久しぶりの更新になりました。
今回のお題は「ブランドパーパス」
カンヌライオンズ2019でも強烈なブランドパーパスを打ち出したニューヨークタイムズやNIKE、バーガーキングが話題を呼んだが、共通したテーマは「ブランドパーパス」。
そのワードを僕の言葉で言うと「ブランドの存在理由、ブランドが伝えたいメッセージ」。
1.最近のブランドパーパス事情
昔ながらの日本メーカーと呼ばれる国産ブランドで、強烈にブランドパーパスの発信を感じる企業はほとんど見かけません。
もちろん、エシカルトレンドなどもあり、最近の会社ではブランドパーパスを強く打ち出している企業も多く出てきたのだけどね。鎌倉投信さんとかマザーハウスさんとか。
その理由の一つとして、ブランドパーパスの強い発信はカスタマーからの拒絶を恐れず行わなければならず、
後述するNIKEのコリンキャパニック起用の事例のように、超好きor嫌いになるのでマーケター&経営側にとって、とても難しい。
大当たりや大外れなどに対するリスク回避のバイアスもかかるし、何より定量的な指標で測れないブランドパーパスの発信は上司の合意が得られにくい。
誰しもが納得して総意を得られるものには強い魅力も無くなってしまう、という事でしょう。
2.ハイネケンの苦悩と最新CM
ハイネケンは2017年以降のブランドCMでヒットと炎上を交互に繰り返している。
例えば2017年のCM(画像タップで動画に飛びます)
Open your worldというテーマで、複数の価値観の異なるペアが語り合うというドキュメンタリー形式。ハイネケンというブランドが常に語らいの傍に存在できる事をメッセージングしている。ダイバーシティをシンボリックしたこのCMは大絶賛となった。
しかし、その翌年の2018年のCMがこちら。
Sometimes, Lighter is betterというテーマで軽やかなCMに仕上げた………
が、、
私はこれを見た瞬間、ええええええええええどどどどどうしたのおおおハイネケン!!という驚きを隠せなかった。
低カロリーであることの強調を狙ったCMだったが、
動画中では黒人の前をビールが通過して白人が飲む、というゴリゴリの人種区別を打ち出したCMで、勿論大炎上。
一瞬で動画を取り下げる事態となった。
そんな一悶着の翌年の2019年はラグビーワールドカップという事で、CM自体はラグビー押しとなって、ブランドパーパスの打ち出しとしては一休み。
にわかでいいじゃないか。ラグビーワールドカップ。
うん、単純に面白い。
そしてそして、充電期間を終えて満を持して迎えた2020年のCMがこちら。
Cheers to allというテーマで、ジェンダーに対するアンコンシャスバイアスを軽やかに描く爽やかな仕上がりになりました!
特に注目は男性店員のみならず女性店員の酒や料理の渡し方も描写されており、ジェンダーへのアンコンシャスバイアスは女性にも存在する、というメッセージが刺さります。
そして、私が特に唸った部分が最後のワンカット
(下の画像)
Men drink cocktails too. というビール会社のビールのCMで「男性だってカクテルを飲む」というフレーズで終わらせたところ。
「女性だってビールを飲む」ではなく。
ここに炎上から学び、ハイネケンとしてのブランドパーパスの模索~発信を感じました。
ブランド会議とかCM制作にあたって、どんな紆余曲折を経たのか想いを馳せます。。
3.ブランドパーパスの代表事例「NIKE JUST DO IT 30周年CM」
さて、話は変わり、ブランドパーパスの代表でありトップランナーであるNIKEの20周年記念CMの紹介。
広告業界ではすでに話し尽くされた話でもあるのですが一応紹介します。
カンヌライオンズ2019という広告の世界的な祭典で下馬評1位。実際に複数部門でグランプリを受賞したのですが、
この広告が実はアメリカで大騒動を引き起こしていました。
そのクリエイティブのキービジュアルはこちら。
まず、前提知識として、このクリエイティブに起用されているのは有名アメフト選手コリン・キャパニック。
彼は2016年の試合直前、人種差別に抗議するため、国家斉唱中に起立をせずに膝まずいたことで事実上の引退に追い込まれていました。
そんな彼をNIKEが広告に起用したことで、NIKEは保守派からの反感を買い、
NIKE自体の不買運動やトランプ大統領からの厳しいツイートを受けるなどして、株価が下落するまでに発展。
NIKEのブランドパーパスは世論から拒絶されてしまいました!
しかし、徐々に有名セレブをはじめ、このNIKEの持つブランドパーパスに共感し擁護する人たちが声を上げ、
世論の風向きは変わり始め、ついには世論を変える事となり、
史上最高値を更新するまでになりました!
一連の経緯の動画をダイジェストしたのがこちら。
ここで、改めてこのNIKEの広告のメッセージをもう一度。
「Believe in something. Even if it means sacrificing everything」
うーん、このメッセージとコリン・キャパニックの組み合わせはやっぱりすごい。
「JUST DO IT」の30周年にふさわしい、ものすごい強烈なブランドパーパスを表現するメッセージです。
4.コロナビールに一言
さて、なぜこのタイミングでNoteを書こうとしたかというと、コロナビールに一言いたくなったのです。
本当に頭の悪い人たちのせいで、今まさに風評被害にあってしまっているコロナビールには、ぜひともこの注目を追い風と捉えて、自分たちの強烈なブランドパーパスを世界に発信して欲しいと思っております。
ピンチはチャンス!
ぜひ、全マーケターがブランドの存在意義や発信したいメッセージを見つめなおして、より良い世界を作っていきたいですね。
本日はここまで!
藤本たぬき
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