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   令和のマイホームの建て方no6

~プロが教える土地の購入から注文住宅を建てるまで〜
夢のマイホームまでのステップ3:家の工法と性能についての考え方

ステップ2で住宅ビルダーの選び方について説明しました。その際に一緒に考えていきたいのが、家の工法と性能についてです。

むしろ家の工法と性能を中心に考えて建築会社を選んでも良いほど、令和の家づくりにおいて重要な要素となってきます。

家の工法についての考え方

柱や梁、土台など、建物を支える骨組みのことを「構造」と言い、その構造を造る方法を「工法」と呼びます。

構造は素材によって次の3つに大きく分けられます。

  1. 木造

  2. 鉄骨造

  3. 鉄筋コンクリート

また工法は一般的なものとして、次の4つが挙げられます。

  1. 木造軸組工法(在来軸組工法):柱と梁で建物を支える工法。設計の自由度が高く、比較的広い間口部を作れる。

  2. ツーバイフォー工法(2×4工法):「枠組壁工法」とも呼ばれる。柱と梁ではなく、木材に構造用合板を貼り付けてパネル化したものを組み上げていく工法。頑丈な建物が作りやすいというメリットがある。

  3. RC造(鉄筋コンクリート造):柱や梁を鉄筋コンクリートで構築する工法。鉄筋とコンクリートのそれぞれの特性を活かし、木造よりもさらに強い建築物が建てられる。

  4. 鉄骨造:柱や梁などに鉄や鋼でできた部材を使用する工法。一般的にはマンションやビルなどの大きな建物用の工法だが、一戸建てにも用いられている。

構造と工法はまさにマイホームの『骨格』となる重要な部分。そのため、ネット上にも構造と工法についての情報は溢れています。

しかし、では実際にどの工法を選んだら良いのか?というところまで踏み込んで説明しているサイトは少ないように思います。
そこでここではプロの目線から、家の工法と性能についてどのように考えるべきか?という点を分かりやすく解説していきたいと思います。

工法について考えるべき理由

土地を買って注文住宅を建てようと考えていても、工法をどうしよう?とまで考える人は少ないように思います。
地震に強くするならツーバイフォーの方が良いのかな?とか、それくらいのものではないでしょうか。

丸太から切り出した無垢材に大工さんがカンナをかけて、柱を一本ずつ組み上げていく…なんていうのは、もはや昔話にすぎません。
今の家づくりは、加工されたプレカットの柱や梁、土台などを現場でボルトや金物を使って固定していくのが主流です。

もしくは大型パネルといって、工場で柱に窓や断熱材も設置して現場で一日で組み立てるなんていう、かつては大手ハウスメーカーしかできなかった工法も、多くの工務店で行えるようになっています。

何しろ令和になって、建築業界も空前の人手不足。なるべく人手がかからないような家づくりになってきているのです。
そのためハウスメーカーでも工務店でも、それぞれ得意としている工法があり、それ以外のやり方を取り入れることはほとんどありません。

RC造を売りにしているメーカーに木造をお願いしても、うちにはそんなプランはありませんと相手にされないでしょう。
もしくは在来工法でずっと家を建ててきた工務店さんにRC造の家にしてくれなんて言っても、無理に決まっています。

結局のところ、消費者としてはハウスメーカーや工務店が取り入れている工法に従わざるを得ないのです。

これは裏話になってしまいますが、住宅業界ではXR(複合現実)やDX(デジタル・トランスフォーメーション)を始めとした先端技術がどんどん取り入れられ、ハイテク化が進んでいます。
ところが、実際に現場で働く職人さんは高齢化しているため、そうしたハイテクについていけない。

そのため、たとえ消費者が〇〇という工法で家を建てたい!と思ったとしても、それができるかどうかはハウスメーカーや工務店しだい、というのが現状なのです。どの工法にするかは、お願いするハウスメーカーや工務店によって決まってしまう
工法についての知識や理解が全く無いままでビルダーを選んでしまうと、彼らが取り入れている工法を受け入れるしかない。

だからこそ、ハウスビルダーを選ぶ際に工法についても十分に、真剣に考えるべきなのです。

でもなぜ、工法についてそこまで真剣に考えるべきなのでしょうか?

それは、家の構造と工法、そして性能こそがその家の根幹であり、快適なマイホームづくりに直結するからです。その上、結果的に資産価値の高い家にすることもできます。
長期優良住宅」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
これは国が定めた基準を満たし、長期に渡って住める家であるとの認定を受けた家のことです。

長期優良住宅の認定を受けると住宅ローンの優遇金利や減税などの優遇措置を受けることができますが、それ以上に重要なのが今後のことです。
実は2025年に建築基準法が改正され、家づくりに関する基準と考え方が大きく変わることになっています。
これまでは「4号特例」といって、木造の一戸建て住宅の場合は家の強さを担保する構造計算を省略しても良い、ということになっていました。

ところが建築基準法の改正によってこの4号特例が縮小され、一般の戸建て住宅でも構造計算を行うことが必須となります。これによって、今まで以上に地震に強い家づくりを行っていくべし。という国の方針に業界を挙げて大きく舵を切ることになります。
この改正される建築基準法にすでに適応している家が、長期優良住宅。

長期優良住宅の認定を受けるには「構造計算を行った上で耐震等級2、または耐震等級3」の強度が求められるため、法改正後の基準にもしっかり対応できることになります。

長期優良住宅の認定を受けるには様々な条件をクリアする必要がありますが、一番むずかしいのが構造と省エネ(断熱性能)。

断熱性能についてはこの後で考えるとして、もし耐震性の低い家を建ててしまうと、2025年以降は基準を満たしていない家ということになり、一気に資産価値が下がってしまいます。

そのためこれからの時代に合った家づくりのためには、耐震性を高めた長期優良住宅であることが前提となるのです。

柱や梁、土台といった家の構造部分は、法律が変わったからといって取り替えることはできません
そのため、今の時点から家の工法についてもしっかりと考えておかなければならないのです。

どの工法を選ぶべきか?

ではこれからの時代に即したマイホームづくりのために、どの工法を選んだら良いのでしょうか?
その点についてハウスメーカーや工務店に尋ねても、工法の違いについて説明し、お客さんに選んでもらうなんてところはほとんどありません。
むしろそれぞれ話すことはバラバラで、かえって混乱してしまうんじゃないでしょうか。

例えば鉄骨造が売りのハウスメーカーのショールームに行くと、RC造のメリットをこれでもかと説明してきます。曰く、天井を高くできる。柱のない1スパンでLDKも広く取れる。窓も壁一面の素敵な家ができる。等々…。
一方で工務店に行ってみると、伝統的な在来工法で木材をふんだんに使い、自然で健康的な家が一番ですよ、などと言われます。

結局、どれが良いんでしょうか?

天井を高く、LDKを広くしたいなら絶対に鉄骨造にすべき?
木造軸組工法は本当に自然で健康的な家なんでしょうか?

決して、そういうわけでもありません。

木造の在来工法でも設計次第で天井を高く、広いスペースの家づくりを行うことも十分に可能です。
また木材と一言でいっても無垢材もあれば、鉄骨並みの強度を出せる集成材を使っていると宣伝しているメーカーだって存在します。
集成材に天然・自然というイメージを持つことは難しいですし、かと言って鉄骨材の値上がりも続いているので、木造にするか鉄骨造にするかという判断も悩ましい。

考えるべきなのは、どの工法で建てるか?ではなく、どんな家にしたいのか、そしてそれにはどの工法が適しているかを考えることです。

では耐震性能を高めたマイホームにするには、やはりツーバイフォーかRC造が良いのでしょうか?
実際に耐震性能を上げるためには在来工法ではダメだ!と主張する方もおられますが、それは間違いです。

実際に日本で一番多く取り入れられているのは、在来工法(木造軸組工法)です。

それにはそれなりの理由もちゃんとあって、日本の狭い敷地の中で家づくりを行うには、在来工法が最も適しているのです。そのためほとんどの工務店が在来工法で家を建てていますし、設計事務所でも設計や間取りが特殊な家以外は、在来工法が基本。

何よりも、在来工法は自由度が高くてアレンジの幅も広いんです。

そのため在来工法でも設計の仕方によって耐震性能を高め、長期優良住宅の認定を受けることも可能です。
繰り返しになりますが、大切なのは工法そのものではなく、その工法によって快適で強い家づくりが可能か?ということなのです。

在来工法でも、ツーバイフォーでも、RC造でも構いません

自分の希望と予算に適した工法を選び、快適で強い家づくりをしてもらうこと。これが大事。
工法はあくまでも手段に過ぎません。

そのため、何よりもまず相談している建築会社が取り入れている工法で、強い家づくりができるのだろうか?という観点で考えましょう。
そのためにハウスメーカーや工務店さんには、「この工法で耐震等級3をクリアできますか?」と聞いてみてください。

耐震等級とは、2000年に施行された「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」によって示された、地震に対する家の強さ(耐震性)を示す指標です。
耐震等級は1から3までのグレードがあり、数字が大きいほど地震に強い家となります。

耐震等級1:建築基準法で定められている、最低限度の耐震性。震度6~7までの地震に一度は耐えられるものの、その後は建て替えが必要になる。
耐震等級2:耐震等級1の1.25倍の強度を備えている。震度6~7の地震が起きても補修を行えばその後も住み続けることが可能とされている。
耐震等級3:耐震等級2の1.25倍、つまり耐震等級1の1.5倍の耐震性がある。震度6~7の地震が起きても簡単な補修のみで引き続き暮らせると想定されており、地震に対して非常に強い家と言える。

耐震等級3をクリアできるなら、在来工法でもツーバイフォーでも、RC造でも何でも構いません。あなたの好きな工法を選べば良いのです。

一般的には耐震等級が上がるほど柱や梁を太くする必要があり、窓の開口部などを小さくしないといけないという制約が生じます。そのため、耐震等級を上げながら住みやすい家にするために工法についても気を配る必要があるわけです。

でも、もし「そのためには予算が足りません」と言われたらどうしますか?
マイホームづくりは、常に予算との戦いです。
そのためビルダー選び、工法を選ぶ場合にも常に予算との兼ね合いを考えなければなりません。

しかし、ぜひ覚えておいていただきたいのは家の構造部分は簡単に変えられないということです。
建築会社と工法を選択するときには、ぜひ何十年も変えられない構造のことを優先させましょう。
もし耐震等級3以上を達成するために予算が足りないのであれば、後でも変えられる部分の予算を削るのです。

例えば、お風呂やキッチン。
水回りは目につくところなので予算も潤沢にかけたいところですが、優先度的には構造が上です。

もし20年後に家を売ることになったとして、その時点でお風呂やキッチンはすでに時代遅れになっているはずです。それらのグレードが査定に影響することはほとんどありません。どのみちその家を購入する人は、キッチンもお風呂も新しいものに取り替えるに違いないのですから。
しかし壁の中の柱や梁などの構造部分は変更することはできません。

まずは家の基本性能に関わる部分に予算を振り分ける。後から変更できる部分は、お金に余裕ができた時に変更すれば良いのですから。
家の基本的な性能こそが、これからの家の資産価値を大きく左右するということを、ぜひ覚えておいてください。

とはいえ、実は構造部分は家づくりの総予算の中で大きな割合を占めているわけではありません。
よほど斬新な間取りなどを望まない限り、柱の原価などは大きく変わらないのです。もし耐震等級を3以上にするためにコストが大幅に上がるというのであれば、

そのハウスメーカーや工務店がこれからの時代の家づくりに適応できていないということなのです。

今や建売の住宅ですら、耐震等級3を達成しているメーカーも少なくないわけですから。注文住宅で耐震等級3をクリアできないハウスメーカーや工務店は、選択肢の中から排除するのが一番でしょう。

<プロからのアドバイス>

家の構造は簡単には変えられない。そのため業者選びの段階で工法についてもしっかり考える。耐震等級3以上のマイホームづくりを目指そう。

家の性能についての考え方

2025年の建築基準法改正で構造以上に大きく変わるのが、家の性能に関する項目です。
法律の改正によって、2025年以降は基本的に全ての建築物について省エネ基準への適合が義務付けられることになります。

簡単に言うと、2025年以降は省エネの家しか建てられなくなるということですね。

そのため工法と同じく、いやもしかするとそれ以上に、家の性能についても真剣に考えなければならないのです。
省エネな家とはずばり、断熱性能の高い家ということ。

少ないエネルギーで夏は涼しく、冬は暖かい家。そんな家は資産価値が高いことはもちろん、住んでいる人を幸せにします。
だからこそ、家の性能にはこだわってもらいたいのです。

先日、地方に移住するために住み替えを検討しているお客様のご相談を受けました。
その方が、家の断熱に関してはおそらく日本一有名な松尾先生と私がYoutubeで対談しているのを見ましたよ、と仰られたので、家の断熱はやっぱり気になりますか?とお尋ねしました。そうすると、実はすごく気になっているんですと。

そうですよね、最近は電気代も高騰していることもあって、家の断熱を気にされる人が非常に増えています。
でも、気密についてはどうでしょうか?

実は家の断熱について考える時に切っても切り離せないのが、気密性能なんです。

気密」とは、簡単に言うとどれだけ空気の出入りがあるかを示すもの。
気密性能の高い家はそれだけ隙間風が入り込まない家ということになり、断熱性能も自ずと高まるのです。
逆にいうと、いくら断熱性を高めた家づくりをしても、気密性が低ければ意味がありません。

日本では昔から、風通しの良い家が良い家とされてきました。

昔はエアコンが無かったため、風通しを良くすることによって夏に快適な家づくりが重宝されていたわけですね。
しかし、令和の今は時代が違います。

高気密の家にすることによって熱効率を高められるのはもちろん、効率よく換気を行うことができ、結露やカビなども防げる非常に快適な住まいとなれるのです。
そのため、住宅ビルダーを選ぶ際には工法だけではなく、断熱と気密性能の高い家づくりが行える業者を選ぶように心がけてください。

高性能の家を建てるための業者選び

先ほど述べた長期優良住宅の認定基準の中にも、当然断熱性能に関する評価が含まれています。
それによると、1~7まである断熱等級(数字が高いほど断熱性能が高い)のうち、長期優良住宅として認定されるためには5以上でなければなりません。


出典:一条工務店

断熱等級5は別名ZEH(ゼッチ)基準とも呼ばれ、これからの家づくりのスタンダードとなります。
そのため快適で資産価値の高いマイホームを建てたいならば、最低限、断熱等級5以上の施工ができる業者を選べば良いということになります。

もちろん、断熱等級が上がれば上がるほど、快適でかつ資産価値の高い家になることは言うまでもありません。
ところが、この断熱等級には気密性能についての評価は含まれていません。
というのも断熱等級はあくまでも設計上の計算であり、気密の高い家にできるかどうかは施工の問題となるからです。

どういう意味でしょうか?

気密の高い家というのは、隙間の無い家ということになります。
つまり実際に家を建てる工程の中で、いかに隙間を埋めるかが大事になってくるのです。
そのためには、施工精度の高い作業が行える業者でなければなりません。

例えば、換気ダクトの周りには必ず隙間ができるのでそこをしっかりコーキングしましょうとか、ジョイント周りもシートでしっかり囲みましょうとか、そういう一つ一つの細かな作業をしっかり行える業者でなければならないのです。

先ほどの地方への移住で住み替えを検討しているお客様にも、断熱を気にされるのであれば、ぜひ気密のことも考えてください、と提案しました。
とはいえ、地方では気密性のことまで考えて施工してくれる会社はまだそう多くはありません。
気密に関して経験の浅い工務店にあれこれうるさいことを注文すると、嫌な顔をされてしまうかもしれませんし、その後も住みにくいですよね。将来的な補修のことなどを考えると、工務店さんとはなるべく良い関係を保ちたいものです。

そこで、その方にはJIO(日本住宅保証検査機構)のような第三者機関に依頼する方法をお伝えしました。
JIOには気密測定というメニューがあるので、家の気密を中立的な立場で測定してもらえます。気密が低いところ、つまり隙間が空いていて空気が漏れているところもちゃんと分かりますので、施工不良も防ぐことができます。
JIOはあくまでも検査機関なので施工管理を受けてくれるわけではありませんが、気密測定をお願いすることを工務店さんにも伝えれば、その分しっかりと施工してくれるでしょう。工務店とのやり取りで余計なストレスを抱えずにすむわけです。

その方もすごく納得し、相談して良かった!と仰っていただけました。

建築会社を選ぶ時には工法に加えてぜひ、断熱や気密への取り組み方についても尋ねてみてください。

それに対して答えられない会社はそもそも話になりませんが、逆に自社の断熱や気密以外は全然ダメだ!という会社もちょっと考え直したほうが良いかもしれません(意外と多いんですよ、こういう建築会社)。

もちろん自分の会社のこだわりについて説明するのは大切なことですが、世の中にはそれ以外の方法も様々あるわけです。そして何より、消費者一人ひとりのライフスタイルや望む家のかたちも異なる。どの方法が一番だ!とは誰にも言えないわけです。
家は建売で十分という人もいれば、オール自然素材の家にしたいという人もいる。

だからこそ、自分の希望とその建築会社の強みが合致するのか、予算内で可能なのか?ということを考えていただきたいのです。

家の基本性能も、工法と同じく後で簡単に変更するというわけにはいきません。
そのため、最初の段階で断熱と気密といった家の性能についてもしっかり考えておきましょう。


この図にあるように、家づくりで一番大変なのは実際に建築が始まるまでです。
どんな家にしたいか?どの業者にお願いするか?予算はどうするか?
そうしたことをグルグル回りながら、決定しなければなりません。

後からいくらでも変更できることもありますが、家の工法と性能についてはそうもいきません。

住みやすく快適で、かつ資産価値の高いマイホームづくりのためには、基本性能の高い家にすることが一番です。そのためにたとえほかの予算を削らないとしても、そうするだけの価値はきっとあります。
大手ハウスメーカーでも、最高レベルの断熱等級7の家づくりを提案しています。

ぜひ、耐震性能が高く、高断熱・高気密のマイホームづくりにチャレンジなさってください。

<プロからのアドバイス>

断熱だけではなく、気密についてもしっかり業者に尋ねる。高断熱・高気密の家づくりができる建築会社を選択する。

次回はどこにも書いてない、住宅ローンについて書きます!よかったら❤️おねがいします。

住宅購入のご相談はこちらまで。




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