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プライベートチェーンとパブリックチェーンについてざっくりと説明する|ブロックチェーン・サービスデザイン

ブロックチェーンのシステムには大きく分けて2つのシステムが存在します。
1つは、閉じたネットワークで構成された複数の端末で分散処理を行うプライベートチェーン型。
もう1つは、ネットワークを公開して処理を行う端末を公募して参加者を募り、報酬を一定の基準で還元するパブリックッチェーン型です。

現在、一般的な仮想通貨はパブリックチェーン型で運用されています。
ビットコイン(以下、BTC)を例にとって説明しましょう。

BTCは買い物や送金で使われることが多いのですが、その度に処理が走ります。
具体的なデータの処理の内容については以下の前回のエントリーをご覧ください。

仮想通貨の場合、取引が発生した際に、その処理をどこの誰だかわからない人が持っているサーバで処理してくれます。
これがパブリックチェーン型の革新的なところです。

サーバが世界中に分散されており、処理があらゆるところで行われます。
これがなぜ画期的かというと、システムの可用性が異常に高い状態を作り出したというところです。

インターネットのサービスを作るとすぐに世界中から不正アクセスの攻撃を受けます。目的は様々ですが、世界中に悪意あるシステムが存在していて有象無象が攻撃してきます。セキュリティが破られるとシステムがダウンしたり、内容を改ざんされたり、サーバがクラッシュしたりします。

サーバが止まることで被る経済的損害は非常に大きいです。
第一に、停止している間の機会損失。
第二に、復旧までのコスト
第三に、信用の回復までのコスト。

すぐ止まる、すぐ落ちるサービスを誰が好んで使うでしょうか。
サーバトラブルの嫌なところはマイナスをゼロに戻す作業で、コストが発生するのにリカバリーができないところですね。ここを理解している経営者やサービス主体者はサーバの構築やシステムの可用性にはコストをかける人が多いですね。

パブリックブロックチェーンベースのシステムの場合、サーバがどこにあるかと言われれば世界中に無数に存在し、どこかが攻撃されたとしてもシステム全体が壊滅することがありません。

また、世界中にデータが分散しており、処理が行われるので、ある一地域の通信が分断されたとしても、天災でサーバセンターが大打撃を被ったとしてもシステム全体が瞬時に壊滅的な状況になるわけではないのです。

webサービスに精通していない方にはこの部分の画期的な感じがあまり伝わらないかもしれないので、すごく極端な例を示しましょう。

複数の隕石の落下によりたまたま世界数カ所のサーバセンターに直撃。
データが全て消えてしまい、あなたの銀行預金が突然ゼロになったとしましょう。
そして以前の預金額を自分で証明できなければ預金は戻りません、というルールになるとしましょう。
どこかにデータが集中して保管されていると、こういった事態があり得るのです。

パブリックブロックチェーンについては、さらに一歩踏み込んで言ってみれば国によって支配されません。
パブリックブロックチェーンの強烈なシンパの人たちはこの点が最大の魅力であると語っています。
中央で処理されるサービスモデルの場合、必ずそこにはルールを決める人がいて、その人の作ったルールの上で物事が決められてきました。
スマホのゲームで例えるならば、ガチャの確率はブラックボックスに入っていて運営の掌中にあるわけです。操作するのは簡単なのです。

しかしパブリックブロックチェーンのシステムの場合、ルールを誰もが見ることができます。
その上で、データを暗号化してやり取りしているわけです。
公平で公明で公正で、平等で自由な世界です。
パブリックブロックチェーンのシステムにはすごい可能性が秘められているのです。

さてさて、ではプライベートチェーンはどうでしょう。
プライベートチェーンのシステムは、サービス主体者が自分で契約したサーバを複数繋げてブロックチェーンのシステムの処理を行うというものです。

この場合、データは複数のサーバに分散され、不特定多数の第三者が処理に参加できないように設計をします。
当然、サーバコストはオーナーが担うわけで、旧来型のサーバーを借りてコンテンツやシステムを作ってデータをやり取りする、ということと変わりません。

ですが、ここに先ほどのブロックチェーンの特徴である、可用性と分散性の強みを生かすことができるということで、最近は様々なサービスで使われ始めました。
もちろん、プライベートブロックチェーンはシステムが公開されないので、
他人がシステムの持つルールを知る方法はありません。

プライベートブロックチェーンの特性として、開かれたルール上でどのようにデータが動いたのか丸見えであり、改竄できず、公平で公正であるという点が抜け落ちるわけです。
ですが、大半のサービスではそうであっても問題ないのです。

なお、パブリックチェーンとプライベートチェーンの良い所どりをする仕組みもあります。パブリック性に制限をかけてしまえば良いのです。ハイブリット型と呼ばれたりします。

例えばこんな感じです。
・ある国からしか参加できないパブリックチェーン
・ある特定の条件を満たした人しか参加できないパブリックチェーン
などなど。

言ってみれば制限付きのパブリックチェーンです。
なぜこういった制限付きのパブリックチェーンが必要かというと、
ブロックチェーンのシステムには51%問題と言われているシステム上のリスクがあるためです。

ブロックチェーンの承認アルゴリズムである「プルーフ・オブ・ワークス」における正しさの証明は、システム内の51%以上の計算能力を持っている場合、”正しさ”を作れてしまうところにあります。

これは、「プルーフ・オブ・ワークス」を採用するブロックチェーンの仕様で、チェーンが分岐した時により長い方のチェーンを信用して短い方のチェーンを破棄するという仕組みがあります。
この、長いチェーンを意図して作れてしまう場合、取引情報を改竄することが理論的には可能になります。これが「51%ルール」と言われるブロックチェーンの脆弱性です。

この「51%ルール」を回避するためには、ネットワークの規模をとてつもなく膨大にするか、もしくは51%を完全にサービス主体者が掌握していればよいのです。旧来型の中央集権的なシステムの場合、1箇所ハッキングされてしまえば全てを掌握されてしまいます。
逆に、ブロックチェーンのシステムにおける51%以上の処理能力を悪意ある集団に持たれてしまうことは
リスクの管理ができている状態とは言えないため、サービスを開発した人の信用を落とす状態と言えましょう。

仮想通貨でも実際に51%の脆弱性を突かれて取引履歴を改ざんされた草コインがあります。マイニングの参加者が少なく、51%ルールを低コストで破れるような仮想通貨は信用が少ないシステムなので、大量に保有しない方が良いでしょう。

さて、逆にビットコイン(BTC)のように世界中でマイニングが行われているシステムの場合51%以上の処理能力を持つに至るには相当なコストと労力が発生します。そのため、参加者が多いためにBTCは信用が高いわけです。

しかしながら、楽観もできません。
ブロックチェーンのシステムを支えているマイナーたちは、処理を行う代わりに報酬をもらっています。
より多く処理するとより多く報酬がもらえるので、電気代の安いエリアで大量のサーバを稼働させて利益を得るのがトレンドです。

この時、ある特定の国に処理が集まってしまうとセキュリティリスクが発生してしまいます。どこかの誰かがその気になればもしかしたらビットコインですら51%ルールを突かれてしまうかもしれません。それがものすごい資産性を持つ場合、なおさらです。パブリックブロックチェーンのシステムに賛同する人たちは常に相互監視が必要なのです。

プライベートチェーンの場合、この心配がありません。
全て自分の管理下のサーバで処理を行うためです。
ですが、その分、中央集権的になり、ハッキングリスクや、可用性の低下のリスクがあります。

これら両方をクリアする方法として、参加条件を制限したパブリックチェーンを構築すれば良いと考えます。

例えば、あるサービスを開発した際に、そのサービスを受ける人たちに
自分たちで処理を行ってもらうシステムを作り、自分たちで相互に監視も行ってもらう。
こうすると、パブリックだがクローズな環境で監視と抑止が働くシステムになり、データが外に出る心配もなく、それでいて、全員が正しく処理を行えば全体最適が進み参加者、利用者のコストが逓減していくというような仕組みも作れます。

私がブロックチェーンで最も可能性を感じているのはここです。
参加者と利用者がイコールであり、利用者がシステム内で処理を手伝えば報酬を得られる。

アフィリエイトの仕組みに近いですが、全体のリソースとコスト構造の最適化をスマートに行える方法なのではないかと思っています。
ちょうど、こういうシステムを取り入れた提案を数社に行なっています。

今日はパブリックチェーンとプライベートチェーンについて書きました。
まとめます。
 ・ブロックチェーンにはパブリックとプライベートがある
 ・パブリックチェーンはデータが世界中に分散
 ・パブリックチェーンは一部が攻撃されても突然全部は壊れない
 ・パブリックチェーンは基本的にマイニングを通じて報酬を参加者へ配布
 ・プライベートチェーンはサービス運営者が端末を複数保有して
  クローズドなネットワークを構築。
 ・「プルーフ・オブ・ワークス」の場合51%ルールを意識してサービスを設計する必要がある
 ・パブリックとプライベートの良いところどりをしたハイブリットなシステムに実用化の鍵が眠っている

以上です。


多少なりとも、あなたの生活にプラスとなるような情報でしたら嬉しいです。