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Bリーグ川崎がYouTubeで集客できたよって話【Jリーグ様へのセミナー内容公開】

はじめまして。
プロバスケBリーグに所属する川崎ブレイブサンダースにて、マーケティングを担当している藤掛(ふじかけ)です。

分析・集客・イベント等に加えてデジタル領域も担当していますが、ありがたいことに川崎ブレイブサンダースのデジタル施策を色々な記事やTVニュースで取り上げていただくことも増えました。


今回はJリーグの方に招いていただき、全クラブの広報担当者向けのYouTubeに関するセミナーに登壇したので、その内容を一部公開します!
※本noteの公開は、Jリーグ様ならびに所属先(川崎ブレイブサンダース)から許可を得ています。

ちなみに今、一緒にYouTubeやTikTokを盛り上げる仲間を探してるので、応募が増えると良いなぁという下心もあります。笑


川崎ブレイブサンダースの現況

今シーズン、ついに来場者がBリーグNo.1になりました。
入場制限などの影響を受けつつも、多くの方にご来場いただきました。

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他有力クラブと比較してもチケット購入者が若く、動画SNSに注力してきた効果が出ていると言えます。

※川崎はファミリー層も非常に多く、30代40代のご購入者の多くはお子様連れの方々になります。(購入者の集計なので10代以下の方は、ほとんど反映されておりません)

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特にYouTube運用は大きな成果を上げており、クラブのファンベースに比して多くの方にチャンネル登録いただいております。

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という背景の下、川崎ブレイブサンダースのYouTube運用についてご紹介させていただきます。


YouTubeに注力した目的

2019年8月から川崎ブレイブサンダースはYouTubeに注力し始めたのですが、目的は2つありました。

1つ目は、「新アリーナに向けてのファン層の拡大」です。
我々は現在、川崎市内に1万席規模の新アリーナ建設を計画しています。しかし現状のキャパ5,000席のアリーナで漫然と運営していては、新アリーナが竣工されたからといって急に10,000席を埋めることはできません。

そのため新アリーナにも来ていただけるようなファン層を、今からアリーナ外で拡大する必要がありました。

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2つ目の目的は「新規広告媒体の獲得」です。
アリーナのキャパというのは動員だけでなく、アリーナ内の広告媒体の価値にもキャップを作ってしまいます。今後スポンサー様への提供価値を拡大していく上で、新しい媒体を生み出すニーズがありました。

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YouTube運用のスタート

実は元々クラブのYouTubeアカウントは存在していましたが、あまり注力されていない状況で登録者数も3,000人程度でした。
2019年8月からリニューアルして、運用を本格化させましたという経緯があります。

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2019年の春頃にYouTube運用を本格化したいと考え、DeNAのゲーム『逆転オセロニア』でYouTubeチャンネル運営をしていたメンバーを引っ張ってきました。

初期は工数10%だけで、企画と編集をしてもらい、さらにカメラマンはクラブ広報が担当するミニマムな体制でスタート。ミニマムながらも、内製ゆえに選手との距離が近く、撮影時に自然体を引き出せるのは強みです。

そして、しっかりクオリティにこだわって勝負の1本を投稿したところ、すぐに20万再生に到達するなど大きな反響をいただきました。


リニューアルに際し、投稿のテイストを大きく変えました。
下画像の左が昔の投稿で、右がリニューアル後の投稿動画です。サムネイル・タイトルが大きく異なることが分かると思います。

これまでブランディングを重視してかっこいい動画を投稿してきましたが、エンタメ寄りの投稿にシフトしました。
過去のブランディングと異なるので喧々諤々の議論になりましたが、見られないコンテンツに意味はないので、多くの方に興味を持っていただけることを重視するという結論になりました。

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投稿する動画は、「川崎ブレイブサンダースやバスケを知らない人でも楽しめる」という軸がブレないようにしています。YouTube文脈を捉えたエンタメ企画をバスケに絡める形で再構築し、バスケ選手だからこそ価値のある動画を意識しています。

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そして「チャレンジ動画やハウツー動画で興味を持っていただいた後、舞台裏を描いたドキュメンタリーを見て選手としての魅力を知っていただく」という流れを狙って、投稿割合を調整しています。

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チャンネルが伸び始めたきっかけ

上述の方針へ絞り込むことを重視し、ハイライトや告知動画、煽り動画などの投稿はサブチャンネルに移行させました。「川崎ブレイブサンダースやバスケを知らない人でも楽しめる」という縛りなしで投稿できる場があった方が、既にファンの方に対してより幅広いコンテンツをご提供できるためです。

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これはメインチャンネルの投稿本数を減らすという判断なのでリスクがありましたが、あえてメインチャンネルは量より質を重視する方針としました。その理由は2つあります。

理由の1つ目は、撮影機会が限られているという制約によるものです。あくまでもスポーツ選手として優勝することが第一であり、YouTube活動はメインではないので、撮影に割ける時間は多くありません。撮り下ろしではない動画を織り交ぜて、投稿本数を稼ぐやり方も考えましたが、クオリティが高く楽しんでいただく自信がある動画のみに絞って投稿することにしました。

理由の2つ目は、KPIをチャンネル総再生数ではなく、各動画の平均再生数に定めていたことです。10万再生の動画5本と50万再生の動画1本を比較すると、前者は視聴者の被りが多く発生するので、新規層へのアプローチという観点では明確に後者の方が効果的だからです。

上記のような理由で各動画のクオリティを重視した結果、メインチャンネルの投稿は月1〜2本程度となることを許容していました。

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その中で生まれたのが神回。↑のグラフの1個目の大きなスパイクがこれです。初の100万再生超え動画で、このタイミングで一気に登録者数も伸びました。

ヤラセを疑われるくらいブザービーターが繰り返されたのが再生回数が伸びた直接的な要因ですが、根本的には選手の人間的魅力、仲の良さが土台にあってこそだと思います。加えて、このような撮れ高が確保できたチャンスを逃さない編集と企画が重要と考えています。


また、先程のグラフで2個目のスパイクが米須選手の加入です。入団会見に連動させる形で、同時にYouTubeや TikTokで動画を投稿しました。
ウインターカップで準優勝した米須選手はTV露出も多く注目されていたこともあり、YouTubeでの投稿は急上昇ランク入りしました。

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これに限らず、自社に閉じないあらゆるトレンドを追うことはインプレッションを高める観点で重要です。川崎ブレイブサンダースでも、Twitterで「#黒子のバスケ」がトレンドになっていたタイミングで以下動画を投稿でき、好調な初速を記録しました。


しかしリニューアルから1年半ほど経過し、少し伸び悩みを感じ始めました。これまで投稿本数を絞って運用してきましたが、次のフェイズに行くタイミングになったと判断し、クオリティを維持しつつ投稿本数を増やす方法を模索することにしました。

その中でUUUMさんとのアライアンスがまとまり、企画や編集などを協力して行う座組を作ることができました。それにより高いクオリティを保ったまま投稿本数を増やすことができ、チャンネル登録者数にも好影響を与えています。

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YouTubeの事業貢献実績

YouTubeが集客に寄与したというファクトも紹介させていただきます。

昨シーズン初めて来場した方を対象に「チケット購入前に見た媒体を選んでください」というアンケートを取得しました。以下表を見て分かる通り、各種広告媒体よりも高い数字を記録しています。もちろんイコール購入理由とは言い切れませんが、認知・購入契機に大きな貢献をしていることは間違いありません。

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最後に改めて。
現在、川崎ブレイブサンダースではYouTubeや TikTokなど動画SNSの編集アルバイトを募集しています。ご本人のキャリアにとっても有意義な経験をご提供できると考えておりますので、スポーツビジネスに興味がある方は是非応募してみてください!

また機会があれば、プロスポーツクラブ×TikTokの話もしたいなと思います。


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