本書はデザインに関する新しい古典となりうる一冊じゃないだろうか。
実はもう数ヶ月前に読んだ本なのですが、読み終えた後、清々しい気持ちで本書を棚に置いたことを思い出す。
デザイン(デザイン思考)に関する本をこの数年、いくつか読んできたが、これほどわかりやすく、且つ深くまとめた本はなかったのじゃないだろうか。デザイナーではなく、ノンデザイナーの方でも読み進められやすい一冊でありながら、今後の思索を深めるのに最適な一冊だと思う。
デザインについて学びたい、知りたい、実践で使いたい、という方のために最初の一冊目としてお勧めしたい本。
北欧視察後に本書を紹介する方が自分にとっても気づきがあるだろうと考え、改めて読み返してみました。以下、本書から気になった箇所を抜粋させていただきつつ、私なりのコメントを添えていきたいと思います。
北欧に過日視察してきてデザイナーの役割が多岐にわたっていることを見聞しました。まちづくりにデザイナーが中心的な役割で関わっていることもあれば、国や自治体の政策づくりにデザイナーが深く関与していることもあります。(単にウェブサイトやレポートの体裁を整えるデザインではなく)
参加型デザインの発想がイノベーションを生み出しているのは、先日書いた記事の通りです。
多様であるということは、なぜイノベーションを生むのだろう。参加型デザインはその前提を所与のものとして議論していますが、それはイノベーション(新たな付加価値の創造)は多様性ときってもきれない関係性にあるからなんだろうと思います。この辺りは、次回以降に取り上げようと思う書籍に記載されていますので、そちらに譲りたいと思います。ここでは、「協力しあったものだけが生き残った」というセンセーショナルな文を取り上げておきたいと思います。
デザインとは学習の場。私の専門分野は何かと問われれば、「人の成長、キャリア形成」だと考えており、この「コ・デザインはデザインするプロジェクトであると同時に、学習するプロジェクトでもある。」という文章は結構響きました。そうなんですよね、参加型デザインや共創は学習の場でもあるんですよね。なんとなく分かっていながら、自分の頭の中から、そうした概念が抜け落ちていたような気がしています。ハッとさせられました。
北欧に行って思ったのは、みんな平等な意識が強いんですよね。政治家であっても行政職員であっても、学識者であっても、それぞれの経験はリスペクトされつつ、普通の市民であっても生活のプロとしてリスペクトされて議論に加わることができます。声が強い人が仕切るというのはあまりなかったような気がしています。これはデモクラシーが根付いているというのが、一定の私の理解なのですが、その中でも意思決定はしっかりやって物事を進めていく、その辺りに北欧の良さがあるような気がします。
そうですよね。デザイン思考はそれなりに普及してきていると思うのですが、それが実際に成果を生み出しているか、イノベーションを生み出しているかと言われれば、確かにそれほどの結果を出していないとも言われます。官民共創の世界で捉えてみても、ようやくデザインプロセス(ダブルダイヤモンド)を用いて、課題定義、解決策検討が進められているような気がしますが、多くのケースでは民間企業と自治体とのマッチングで、その後はカタログマッチングで当てはまれば上手くいき、そうでなければ上手くいかないというが続出しているような気がします。課題検討の時点から本来であれば官民でディスカッションできると一番いいのですが、そうした場がこれまでなかったと思うのです。
ボディランゲージが重要! なるほど。体で表さないといけないのか。
最後にとても大切なことを述べておられるような気がします。「自分たちで何かをデザインすることは、Co〈私たち〉をつくる」。
つまり参加してデザインすること、共創活動そのものが、パブリックな領域を生み出すのだろうと。自治会・町内会の活動もそうだろうし、行政と民間企業との共創もそうだろうし、まちづくりにおける市民と行政との関わり合いの中でも、共創をしなければパブリックな領域にはなり得ない。そこは物理的な空間としてのパブリックではなくて、言語的、観念的なパブリックの空間だと思うのですが、そうしたものは、一緒に作る過程でこそ生み出される、改めて大切なことを学んだように思います。
ーー プロフィール ーー
藤井哲也(ふじい・てつや)
株式会社パブリックX 代表取締役/SOCIALX.inc 共同創業者
1978年10月滋賀県生まれ。20代に雇用問題に取り組むスタートアップを立ち上げ、30代は雇用問題に取り組むため地方議員として活動。40代の現在は官民のシナジーによる社会課題解決、社会変革に取り組んでいます。
京都大学公共政策大学院修了(MPP)。日本労務学会所属。議会マニフェスト大賞グランプリ受賞。グッドデザイン賞受賞。著書いくつか。
ツイッターはこちら