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京都ボヘミアン物語㉒ひまーな夏休み、さびしい男は宇宙人にさらわれた

「竜串」と「ん」

この建物の1階に名店「竜串」があった

ボヘミアンにはいきつけの居酒屋がふたつあった。
 ひとつは、銀閣寺交差点ちかくの焼き鳥店「竜串」。おやじとバイトひとりでいとなむ小さな店だ。いいちこの一升瓶をボヘミアン名義でキープしており、なくなるとだれかがつぎだした。しいたけなどは50円、鶏肉も100円から。名物は牛の頬肉をぴりからの味をつけた「天肉の炒め」。大阪では頬肉は薄切りにしてたべるが、竜串はぶつ切りでかたいけど味がこくてうまかった。カネがあるときはカツオのたたきをたのんだ。
 ぼくも月に一度はかよったが、麻雀にはまっている連中は連日いりびたっていた。
 午後3時ごろ京大教養部の「虹」というふるびたカフェにいくと、だいたいコージがソファーで昼寝している。ソースが焦げたちょっとかための焼きそばをたべているうちに、シノミーやクマ、ヤマハラたちがあらわれ、4人がそろうと清風(ちんぷう)という出町柳駅前の雀荘へ。

 日がかわり午前2時か3時に「勝負」がおわると「竜串」で明け方までのんで下宿にもどり、午後目をさますとまた「虹」へ。ボヘミ雀士たちは無限ループにはまっていた。
 
 少人数の飲み会は竜串だが、イベントの打ち上げや海産物をたべたくなると、北白川の「ん」という居酒屋にでかけた。チェーンの居酒屋なみかそれ以下の値段でおいしい惣菜をだしてくれた。北白川の「ん」はなくなったが、木屋町通りには系列店がいまも営業しているらしい。

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