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エストニアVeriffのCPOジェイナー、経産省瀧島さんによる、あるべきデータ議論【L&UX制作記⑥】

ついに来週、5月17日スタートのL&UX2021、エストニアを代表するスタートアップVeriffのCPOジェイナーさんと、経産省で"Data Free Flow with Trust"の提言に携わった瀧島さんの回をご紹介します。

■ セッション概要

5/20(木)18:00-19-00
個人データと認証の社会活用可能性
Janer Gorohhov(Veriff) / 瀧島 勇樹(経済産業省) / 藤井 保文(ビービット)

個人に関わるデータは、正しく活用することで人々の生活を便利にし、新しい可能性を広げることができます。しかし一方で、データやデジタルに関する知識及びリテラシーの壁があったり、プライバシー保護をはじめとする堅牢性と、同時に使いやすさやアクセスしやすさに関わる利便性、この双方を両立する技術的ハードルがあったりと、「本当に活用できるのか」という疑念がわくほど、様々な問題がつきまといます。

このセッションでお呼びしたVeriffのJaner Gorohhov(ジェイナー ゴロホフ、エストニア読みではヤネー)さんは、KYC(Know Your Customer = 個人認証)のサービスを提供する、エストニアの会社の共同創業者、兼CPO(Chief Product Officer)です。エストニアは、「デジタル化が最も進んだ行政サービス」として取り上げられることも多い、世界有数の電子国家。この環境で生まれたVeriffは、その出自を活かし、様々な国でこの「個人認証サービス」を展開しています。国ごとに規制もリテラシーも異なる中、どのようにして様々な国で受け入れられているのでしょうか。

対する瀧島勇樹さんは、経済産業省にて、デジタル時代に公共サービスを誰がどう担うのか、政府の役割を再定義する試論をとりまとめられ、2019年のG20で採択された「Data Free Flow with Trust」というデータの社会活用の検討も行っておられました。

「デジタルによる行政のアップデート」といった社会実装の可能性を検討される中、エストニア発で世界を股にかけるサービスの考えは、何かしら示唆をもたらすのではないでしょうか。垣根を超え、「信頼性のある自由なデータ流通」が如何に成立し得るのか、議論していきます。

■ みどころ① 「日本はプライバシーが...」という思考停止

このセッションを通して私が「ああ、本当にそうだよな」と心に染みたことの一つに、ジェイナーさんから私への返答があります。

私から以下のように質問しました。

「この国、この文化圏では、データについてはだいたいこういう反応をするから、こういうことをちゃんとやらなければいけない、という想定や考え方はあるのでしょうか?」

エストニアは電子国家として世界有数のレベルに達しているわけですが、そこから生まれたVeriffは、世界40~50か国に展開をしている個人データ認証サービス。

私も上海でビジネスをしながら、そこでの事例を話すと、日本の方々からは「中国はデータやプライバシーについて意識していない国だからいいけど、日本はもっとプライバシーに敏感ですよね?どうすればいいのでしょうか?」という質問を聞きます。なので、彼のような視点からどのように見えるのかを聞いてみました。

すると、ジェイナー氏はこう答えます。

「想定するのは簡単ですよね。例えば欧州の方々はそう簡単にID提示してくれないだろう、とか。ですが、こうした想定を『UDを提示してくれない主な要因』とするべきではありません。」
「その想定が地理的なものなのか、実際に正しいものなのかを理解するためには、人々と話合い、検証する必要があります。まずは『ユーザが何を期待しているか』を知り、解決すべき問題を知って対応するのです。」

いやあ、本当にそうだよな、と。

国の違いを想像して、机上の空論で傾向の話をやいのやいのしている暇があったら、サービスを出してちゃんと問題点を検証し、解決しろ、と。40~50か国でユーザテストをしてID認証のサービス展開をしている方が言うと、圧倒的な説得力があります。

確かに文化背景などによる違いはあるでしょうが、目的は「問題を解決してサービスをきちんと展開すること」なのだから、違いがあったとしても、解決できないということではない。ジェイナーさんのユーザへの真摯な姿勢が非常に印象的でした。

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■ みどころ② 日本が提唱するDFFTと各国の反応

2019年、京都で開かれたG20で、日本は"Data Free Flow with Trust"という考え方を提唱し、これがG20に採択されています。意外と知られていないかもしれませんが、つまり、日本が提唱した概念で多くの国が合意をしているのです。

これを検討し、まとめた中の重要人物が瀧島さん。彼から見ると、今の世界の「データへのトラスト」はどのように映っているのでしょうか。

日本のメディアの話ばかり聞いていると、どうも信用ならないとか、問題ばかりのように思ってしまう方々もいると思いますが、瀧島さんやその周辺の方々とお話していると、私は日本の官僚にもまだまだ想いを持った方々が世の中を良くしようとしている姿勢や誠意を感じます。(最も、頑張っても如何ともしがたいようなこともあるのでしょうし、そこばかりが目立つようなこともあるのでしょうが...)

是非、瀧島さんのお話や、それに対するジェイナーさんのコメントも、見てほしいと思います。

■ 全体を通して

データ利用において最大の問題となる「信頼=トラスト」をどのように作っていくのか。積み重ねるのは時間がかかるのに、失うのは一瞬であるこの問題に、ユーザと真摯に向き合う誠意を感じる回です。

L&UXの動画は、配信後アーカイブされます。何度でも見ていただけたら嬉しいなと思います。是非ご参加ください。


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