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より素早く、多く、小さな失敗をさせよ

こんにちは、価値ビンです⭐️

今回は失敗についてです。
今までの記事で何度も「失敗」は悪いことではない。
むしろ「失敗」を喜んでほしいとまで書いてきました。

しかし、実際どうでしょう。
大人でも失敗は怖いもので、できればしたくない。

それは決して日本だけではありません。
海外でも同じように失敗を恐れる傾向にあります。

個人だけではなく、組織的な問題、宗教的な問題、歴史を見ても様々な問題があり、失敗を恐れず立ち向かうのはなかなか大変です。
しかし、そういった中でも失敗を活かす人、組織であるほど後に成果を出しているというデータがあります。

今日はそんな内容が書かれたベストセラーの「失敗の科学」を基に、失敗とどう向き合えばよいかを考えていきたいと思います。


1. 親の心構え

そもそも失敗とは何とは何でしょう?
こんな状況を想像してみてください。

朝、天気予報では、雨は降らないと言っていたので、あなたは傘を持って出かけませんでした。でも、突然のゲリラ雷雨にあい、びしょ濡れになってしまいました。

傘を持っていかなかったことを、あなたは「あぁ失敗したな」と思うでしょうか。あまり思わないと思いませんか?

では、全く同じ状況でこの場合はどうでしょう?
天気予報チェック時にはゲリラ豪雨のことは言われてなかったけれども、最近の傾向からゲリラ雷雨の可能性があなたの頭にちらつきました。
あなたは傘を持っていくかどうかを悩みました。
そして、「やっぱり、今日はもっていかない」そう決断して、ゲリラ雷雨にあってしまいました。

あなたは「あぁ、失敗した!」と感じるのではないでしょうか。

この2つの違いは、傘を持っていくと自分で決断したかどうかです。人は、自分が決断したことに対して、失敗した、していないと感じるものなのです。「失敗は成功の母」であるとするならば、「自分で決める」ことが第一歩となるのですね。

1-1. 我が子に決断させよ

日々の生活で何かを決める場面は数多くあります。

朝起きてからも決断の連続です。朝の目覚ましが鳴って
「そこで起きるかどうか」
「今日は何を着ていこうか」

こうした細かいことを大人は自分で決めなくてはなりません。しかし、子どもは自分で決めなくても良い場面が数多くあります。

「ほら、起きなさい」
「これを着ていきなさい」

このような小さな決断を、知らず知らずの間に親がしてしまいますね。日頃から少しずつ小さな決断を子どもに任せ重要な場面でこそ、自分で決めさせましょう

「目覚ましなってたよ。起きるかどうか自分で決めてね」
「どれ着ていくかこの中から選んでおいてね」

最近寒くなってきましたが、あなたはこんなことを子どもに言いませんでしたか?
「今日は寒いから、そんな恰好じゃなくて、これを着ていきなさい」
これは優しさでから出る言葉ですが(風邪を引かれると困りますしね)、実は折角の決断チャンスを子どもから奪う声かけです。

親が子どもにかわって決めてしまうのではなく、親が情報提供し、子どもに決断を任せるという方法もあります。
「昨日よりも3度低いみたいよ。その格好で大丈夫?」

自分で決めることに慣れていない子どもたちは、親に聞いてくるかもしれませんね。
「お母さん、どうしたらいいと思う?」

ここで答えを出してしまっては、先ほどの問いが台無しです。こんな時は、子どもが自分で決めるためのヒントを親が提供する方法があります。
「外出てみたら?それで自分で決めてごらん。」

頭の中では、寒いから服を着て欲しいと思っていても、子どもが服を変えないと決めれば、それを尊重しましょう。

小さなことでよいので、子ども自身が判断することを促す場面を増やすことです。最初は子ども達も慣れないので、なかなか自分で決めることができないかもしれません。それでもじっとこらえて、子どもが自分で決めるのを待ちましょう

そうすれば、子どもたちは「自分ごと」として真剣になり、うまくいかなければ振り返り分析するようになるでしょう。

1-2. 失敗させよ

子どもが決断した後は、彼らが失敗してくることを楽しむマインドでドンと構えましょう。例えば、着ていく服をどうするかの判断する時に、子どもが
「まぁ、大丈夫だよ。そんなに寒くなさそう。」

と決めたとしましょう。親としては寒そうだと感じて、服を着ていって欲しいと思っても、そのまま送り出します。そして、子どもが帰ってきた時に
「どう?寒くなかった?」と聞いてみてください。

子どもは、
「いやー、寒かった。やっぱり着ていけばよかった」
「全然平気」

それがどんな反応であっても、前向きなコミュニケーションに繋げることができます。なぜなら、服を着るかどうかの判断が子ども自身の「自分ごと」になっているからです。

もし、親が毎日子どもが着ていく服を決めていたらどうでしょう。寒くて子どもが凍えた日には、
「お母さん、寒かったじゃん、なんで言ってくれなかったの」
と他責になっていくと思いませんか?

親は、「失敗するかも」と思ってもグッと堪え、「どんどん失敗してほしい」ぐらいの気持ちでいきましょう。子どもの決断が『失敗するとわかっていても』子ども自身が決めたことであれば、それを尊重してあげる心構えが必要です。失敗を繰り返して、子ども自身でつかんだ学びこそが成長なのです。

人生を生きていくのはその子自身です。親がいつまでも決めてあげるわけにもいきません。

1-3. 共感せよ

とは言ったものの、子どもの失敗をにこにこ笑っていてはいけません
子どもからすると、その失敗が恥ずかしく、隠したいことで、がっかりすることかもしれません。

それをサポートするのも親の役目です。失敗によっては人から馬鹿にされることがあるかもしれません。子どもにとっては、とても悲しい出来事のはずです。

どのようなサポートが親にできるでしょうか?
「次頑張ればいいさ」「次はきっとうまくいく」
というような励ましはあまりお勧めしません。次やるかどうかは子どもが決めることですし、うまくいくかどうかは子どものこれからの決断によって変わってくるからです。

ここで大切なのは『共感』です。
一緒に、悲しい気持ちを理解して悲しむ。
馬鹿にされて悔しいきもちを一緒に味わい、笑われて恥ずかしかったね、と一緒に恥ずかしがる。

相手の気持ちに寄り添い、話を聞いてあげることこそが親ができることなのです。その反省をいかして次に進むかどうかを決めるのも子ども自身が決めるべきものです。

『共感』は意外と難しいですが、基本は「相手の言葉を繰り返す(オウム返し)」「同じ内容を言い換えて伝える」という方法があります。

例えば、
「今日、絶対勝てると思ってた相手に勝てなかった。悔しいし、みんなにも勝てると思われていたから恥ずかしい。」
子どもがこのように言っていたとしたら、
「そうなんだね。勝てると思っていた相手に負けたのは悔しいよね。確かにみんなも勝てると思っていた相手に負けるのは恥ずかしくなっちゃうよね。」
このように、しっかり聞きながら言ってあげるのです。

話を聞いてあげれば、子どもは「自分の気持ちを理解してくれた」とわかり安心して、次の相談をしてくるかもしれません。もしかするとしないかもしれません。相談するかどうかも本人が決めることなので、それすらも尊重してあげましょう。

1-4. 成長を伝えよ

そして、何かしら子どもの決断によって成長を感じた際は、すかさずそのことを伝えましょう。
「いつの間にか、上手くなってるな、成長したね

シンプルに『成長した』という言葉は響くものです。

「いつも頑張ってたもんね。自分でどうやるか考えて決めて、失敗してもあきらめずに頑張った結果だね。そうやって人は成長するんだね。失敗するって大事だなぁ。」

今までの成長が、自分の決断によって生まれたことであることをしっかりと認識させてあげることで、次の決断を促しやすくなります。自分で決めたということを子どもに意識してもらいながら、成長を誉めてあげるといいでしょう。

仮に、まだ上手くいっていなかったり、何かを成し遂げていない時には、後押ししてあげるといいかもしれません。

親:「毎日頑張ってるな。」
子:「でも、あまりうまくいってないんだ。」
親:「そうなのか。うまくいっていないんだね。でも、自分で考えて決めることを続けていれば、必ず成長しているから。」

共感しながらも、自分で決めた決断による失敗は成長につながっていることを日々の会話の中から伝えてあげましょう。

2. 「失敗の科学」by マシュー・サイド

マシュー・サイド氏の著書「失敗の科学」は、この親の心構えがなぜ良いのかが書かれています。

マシュー・サイド氏はオックスフォード大学哲学政治経済学部を首席で卒業後、イギリス代表の卓球選手でした。10年近くイギリス1位の座を守っていたそうで、現在は、作家やライター、テレビのリポーターも務める売れっ子です。

彼は、過去の事例をもとに、失敗がいかに必要で欠かせないものかを書いています。子育てのヒントになればと思い、いくつか紹介します。

2-1. 医療業界と航空業界で起きた事故

本の冒頭は、突然医療の話から始まります。
2005年ごろの話、二人の子どもを持つ幸せそうな家族がいました。お母さんが37歳で副鼻腔炎に悩まされ、手術することになりましたが、ごく一般的な手術で「リスクもほとんどない」と医者には言われていました。

しかし、結果的に彼女は亡くなってしまいます。「小さな予想外」が連続してしまったのです。

詳細は本を読んでいただきたいのですが、麻酔後の酸素吸入のための気管挿管への移行が上手くいかなかったのですが、その後の最後の手段として、気管切開が残されていました。看護師から医者に警告があったにもかかわらず、医師が気管挿管に集中するあまりに時間がたち、脳に酸素がいかずに亡くなってしまいました。

医師はご家族に対して
「避けようがありませんでした。原因はわかりませんが、最善を尽くしました。偶発的な事故でした。」と伝え、気管切開に至らなかった経緯などには一切触れることはありませんでした。

続いて、航空事故の話が書かれています。1978年12月28日のユナイテッド航空173便の事故の話です。

乗客181人を乗せた飛行機は最終目的地ポーランドに向かっていました。いよいよ着陸しようと車輪を出した際に「ドン!」という音とともに、機体が揺れました。

通常は車輪が下りて、ロックされるとランプが光るのですが、それが点灯していません。機長はロックが正しく行われているかを確認するために、ありとあらゆることに考えを巡らせますが、旋回時間が長く、副操縦士や機関士の燃料切れの警告にもかかわらず、確認に集中しすぎて、ついには墜落してしまいます。(死者は乗員乗客含め10名)

2-2. 医療業界と航空業界の違い

この2つの事故には共通点があります。
手術の場合は医師に権限が、飛行機の場合は機長に権限があります。彼らは「ベテラン」の医師とパイロットであり、その彼らが不測の事態にあまりにも集中しているために時間の感覚がマヒしているにも関わらず、周囲の人間は、彼らに対して強く言えなかった。これが両ケースの共通点です。
つまり、人為的なミスというよりは、権限のあるものに強く言えないというシステム上の問題があったのです。

そして、ここからが失敗を活かすかどうかの分かれ道で、この後の対応がこの2つの業界では大きく異なりました。

医療業界では「言い逃れ」文化が根付いており、「不測の事態」「最善を尽くした」で片づけられてしまいまったと著者マシューは言っています。

一方で、航空業界は起こした事故のデータを徹底的に調べました。また、当事者は事故のことをありのままに話しやすいという環境もありました。なぜなら、事故の調査結果を民事訴訟の証拠として採用することは法律で禁止されていたからです。

ミスを誰のせいにするわけではなく、次起こさないための調査として生かされる文化が航空業界にはあったのですね。

実際に、この航空事故の後には、機長に注意喚起などを促しやすいコミュニケーション訓練方法が生まれ、チェックリストができ、チームワークの重要性が認識されるようになりました。

2013年には、360万機の民間機が30億人を乗せてフライトしていますが、そのうち亡くなったのは210人。欧米で製造されたジェット機については、事故率はフライト100万回につき0.41回という確率になります。

一方で、医療業界はどうでしょう?2013年に掲載された論文によれば、回避可能な医療過誤による死亡者数は年間40万人と算出され、これはボーイング747という飛行機が毎日2機事故を起こしているのに等しいそうです。

もちろん、医療業界の複雑さ、人命を直接扱う難しさもあるでしょう。しかし、それでも失敗に対する考え方の差にも原因があるように思います。

人も組織も、失敗から学ぶ姿勢の大事さが伺えます。

2-3. 非難すればするほど失敗は隠される

失敗から学ぶ姿勢が大事なことは皆が認識していると思いますが、ではなぜ学べない環境が生まれるのでしょう。そのヒントが、医療業界で行われた調査で明らかになりました。

2004年に、ハーバード・ビジネス・スクールのエイミー・エドモンドソン教授懲罰志向の組織文化がもたらす影響についての調査を行いました。

アメリカにある2つの病院で起こる投薬ミスの調査です。投薬ミスは医療ミスの一部ですが、アメリカで年間130万人もの患者が被害を受けているそうです。

そんな状況で、教授が行った調査は8つの看護チームに着目し、懲罰志向の高いチームとそうでないチームを比較しました。その調査結果は興味深いものでした

懲罰志向のチームでは、看護師からのミスの報告は少なかったのですが、実際には他のチームより多くのミスを起こしていたのです。
一方で、非難傾向が低いチームは、ミスの報告は多いものの、実際に起こしたミスは少なかったのです。

厳しく懲罰すればするほど、失敗は隠されてしまい、次の改善に活かされないことがわかります。

もちろん、失敗してもいいやという無責任な考え方とは違います。責任を持つことはとても大事ですが、失敗を非難・懲罰する人や環境には効果がありません。むしろ、失敗はオープンに受け入れる姿勢が大事なのです。

2-4. 成長を阻む罠

非難や懲罰が失敗を隠し、改善につながらないことに加え、もう1つ人の成長を阻む厄介なことがあります。

それは人の思い込みです。
人の成長は、自分の失敗や間違いを認め、それを改善することで起こります。しかし、人は自分が間違ったとわかってもそのことを認めない傾向があります。自分の過ちを認めるよりも、事実の解釈を変えてしまうのです。

かつてアメリカでは冤罪がはびこっていたそうです。事件が起きた際に、誰かを捕まえないと住民が安心できないということもあり、警察は疑わしきを逮捕しました。

そのような状況の中、DNA鑑定という画期的な技術が登場しました。DNA鑑定は過去の事件の事実を解きあかし、結果として次々と冤罪が発見されたのです。

その時に、警察は「すまなかった」と言ったのでしょうか?
実際には全く逆で「そんなはずはない、この人が犯人だ」と言わんばかりに、ありえない理論を展開しながら拘束を続けたのです。最終的に証拠が何もなくても「私はお前が犯人だと思っている」ということを言い続けました。

人は一度信じたものを簡単には覆せないのです。

他にも事例があります。
1954年に霊能者のキーチが世界が終わることを予言し、ある信者はそれを信じて、仕事を辞め、家を出て、キーチとともに暮らしていました。

科学者フェスティンガーは、予言が外れたときの信者がどんな行動をとるのかに着目し観察しました。通常であれば、予言が外れれば「キーチは詐欺師」として非難されると考えるでしょう。
しかし、結果は逆で、以前にもましてキーチの信仰が深まったのです。
それはなぜでしょう?
信者らは事実の解釈を変え「我々の信仰により神がチャンスをくださった」と考えたそうです。

フェスティンガーは、この信者らが抱えた「自分の信念と事実が矛盾している状態による不快感やストレス」を「認知的不協和」と呼びました。

人は、たいてい自分が正しいと考えていて、そうでないとわかった時にとる選択肢は2パターンです。
1つ目は、自分が間違っていることを認め正すこと。
それができない場合は、もう1つの解決策を選択します。事実の解釈を変え、自分の都合のいい解釈に置き換えてしまうのです。当然ながら、この解決策では人は成長できません。

2-5. 失敗を前提に設計せよ

人は一度信じたもの、思い入れの強いものほど、それを否定することは難しいということがわかりました。

ではどうすればよいのでしょう?
まず、「失敗する」ことの大切さを理解することです。
むしろ、失敗を前提に生き方を設計するのです。
しかも、早い段階で失敗を認識できるようにやってみること。

こんな実験結果があります。
ある陶芸の授業で生徒を2グループに分けます。

  1. グループ1:作品を「量」で評価

  2. グループ2:作品を「質」で評価

それぞれのグループの生徒達はこう告げられ、競わされます。グループ1は、とにかく提出する作品の総量を多く、グループ2は自分で最高だと思う作品を1つ提出することが求められています。

この結果、すべての作品で最も評価の高い作品1点を制作したのは「量」を求められたグループだったのです。

作品量を求められた場合、制作途中での試行錯誤で作品は改善され、粘土の扱いもうまくなったからだと考えられています。

このように、とにかく早く、より多く試行錯誤することが大事なのです。
心理学者のバビノー氏とクランボルツ氏は次のようなポリシーが大事だとうたっています。
「素晴らしいミュージシャンになるために、まずひどい曲をたくさん演奏しよう!」
「強いテニスプレイヤーになるために、まずたくさん試合に負けよう!」

クオリティが低い前提、負ける前提でよいのです。とにかく早い段階で多く失敗する。

失敗は気にするなという話ではなく、失敗することこそが必要だということだと思います。

2-6. マージナル・ゲイン(小さな改善)の重要性

それでも、失敗は嫌だという感覚をぬぐうのは難しいですね。では、もう1つ重要な考え方をお伝えします。

マージナル・ゲインです。これは小さな改善のことを言います。

小さな改善を積み重ねていくことで大きな偉業を達成することです。
何か大きなことを成し遂げるには一発逆転のようなものをイメージしがちですが、偉業を成し遂げる人たちはその真逆で、小さな改善をコツコツと行っているのです。そこには小さな失敗が数限りなく存在しています。

この方法で、イギリスのプロ自転車ロードレースチーム「チームスカイ」が偉業を成し遂げました。

チームスカイのジェネラルマネージャー、デイブ・ブレイルスフォードが小さな改善を実践しました。
1997年にはイギリスの自転車競技連盟のアドバイザーと参加し、2000年にイギリスは初の金メダル。
2004年には2つの金メダル。2008年と2012年にはそれぞれ8つずつの金メダルを獲得しました。

そして、その間の2009年にブレイルスフォードは自転車競技の最高峰ツール・ド・フランスにチャレンジしました。
そして「5年以内に優勝する」と宣言したそうです。

世間の人のほとんどは笑ったそうです。イギリスの自転車メーカーさえも「イメージダウンになる」と嫌がったとか。

しかし、蓋を開けると2012年と僅か3年後にチームスカイの選手がイギリス人初の総合優勝を果たし、翌年も優勝を飾りました。

ブレイルスフォードはその秘訣を「マージナル・ゲイン(小さな改善)の積み重ねですよ大きなゴールを小さく分解して、一つひとつ改善して積み重ねていけば、大きく前進できるんです。」と言っています。

具体的な小さな改善をみると驚きます。
・選手が寝る場所が変わっても睡眠の質が変わらないように、専用マットレスやまくらを導入
・感染症の予防のためにスタッフが選手の部屋を掃除
・肌に優しい洗剤でユニフォームを選択
自転車の改善は当たり前だと思いますが、自転車以外例でここまで細かいことの改善をやっていることに驚きです。

もう1つシンプルな例を紹介しましょう。小林尊氏という日本人のお話です。

彼はお金がない時に、たまたまテレビで見たホットドッグの大食いコンテストの優勝賞金50万円を発見、応募しました。
ルールは簡単で、12分間でどれだけホットドッグを食べられるかというものです。

大会参加者は大柄な男たちばかりで、彼は小柄で細い。それまで大会記録は25.125本だったのですが、小林氏はその倍近くの50本を食べて優勝しました。

彼が実践したのはまさにマージナルゲインです。
ソーセージを先に食べるのが良いのか?
残ったパンは水と一緒に食べるとよいのか、水の温度は何度がいいのか。
1つ食べたら、次を食べやすくなるようにするために、体をどんな風に動かせばよいのか?
より多く試し、小さなことを1つずつ分析し改善していくことで、他者を圧倒したのです。

2-7. 成長型マインドセットを育てる

著者マシュー・サイドの出身地であるイギリスで有名なサッカー選手と言えば、デビッド・ベッカムです。フリーキックの名手で、数々のゴールを決めてきました。そのベッカムもこんなことを言ったそうです。

私のフリーキックというと、みんなゴールがきまったところばかりイメージするようです。でも私の頭には、数えきれないほどの失敗したシュートが浮かびます

一流選手の彼も、失敗したことを忘れたわけではなく、失敗から学び成長していったのでしょう。

2010年ミシガン州立大学の心理学者ジェイソン・モーザーは、成長する人の脳内で何が起こっているかを解き明かすために、ある実験を行いました。実験内容は、被験者が失敗した時に脳内でどんな反応が起こるかを調べることです。
彼が観察したのは2つの脳の信号です。

  1. エラー関連陰性電位(ERN)

  2. エラー陽性電位(Pe)

ERNの方は、失敗に気づいた後、50ミリ秒ほどで自動的に現れる反応だそうです。
一方、Peは失敗の後200~500ミリ秒後に生じる信号で、失敗を意識的に着目するときにあらわれるもの。
つまり、ERNは体が反射的に感じるものですが、Peは意識的に失敗に着目し、そこから学ぼうとする反応であり、どちらも強い人が失敗から素早く学ぶ傾向があるということです。

ここからが面白いのですが、事前のアンケートの結果によって、このPeが現れるかどうかが予想可能だというのです。

ジェイソン・モーザーは、アンケート結果の傾向を2パターンに分類しました。

  1. 「固定型マインドセット」タイプ:知性や才能はほぼ固定的なもので、生まれ持ったもので変わらないと考えるタイプ。

  2. 「成長マインドセット」タイプ:努力によって伸びると考えるタイプ。

実験の結果、脳の反応としては、どちらのマインドセットでもERNはでましたが、成長マインドセットを持っている人たちはPeの反応が遥かに大きかった(約3倍)そうです。

成長できるかどうかは知性や才能ではなく、マインドセットによる違いが大きいということですね。

心理学者キャロル・ドウェックが行った実験では、11歳~12歳の子ども達を上記の2つのマインドセットで分類し、少し難しい問題を与えた時の違いを観察すると、固定型マインドセットの子は『自分には知性がない』と思い諦めてしまうそうです。

一方で、成長マインドセットを持っている子たちは、やる気が継続し、取り組み方の改善が見られ、実際に問題を解決することもできました。

3. まとめ

いかがでしたか?
本ではもっと詳細に書かれており、かなり読ませる文章で面白いのでお勧めす。この本から学べることは、失敗が大事だとか、努力は必要とか、そういう次元ではありません。

『人生の中で失敗を前提として組み込むこと』が大切だということです。

大きな目標に対して、小さく分解し、その一つ一つを小さくチャレンジし、早く失敗すること。失敗したら改善していくこと
そして、小さな改善が成長につながるということを信じること

このような考え方が大事になってくるのではないでしょうか。

親ができることは、子どもがそのような考え方が持てるようにサポートすることです。子どもの成長を信じ、小さいことをコツコツ改善することで達成できるものがあることを共に理解し、楽しんでいくことだと思います。

できることから一つずつ。
それでも確実に一歩ずつ。
一緒に歩いていきましょう✨


(株)Kachibin
「英語」と「ワクワク」の力を伸ばそう✨

「この勉強、どうせ僕の未来には役に立たないし」という子ども達の疑問を払拭する学びは、学校では提供しづらいものです。カチビンは、子ども達のキラキラした目を追い求めて、今日も探究し続けています。

✨お気軽にご連絡ください✨
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✨ホームページ✨
https://www.kachibin.com/
「価値ビン」が目指しているのは以下の2つです。
1) 子ども達自身が自らの成長を感じて「僕の・私の価値がビ~ンと上がった!」と感じてくれること。
2) 彼らに関わる大人達が、子ども達の変化を感じて自分の価値がビ~ンと上がった!」と感じてくれること。

このブログが、我々が子ども達の成長のサインを見つけて受け取り、彼らと共に学びの旅を歩むための、数ある冒険の書の中の一つとなってくれることを願っています。


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