見出し画像

 若い農夫が体中汗まみれで、小舟を漕いでいた。彼は収穫した農産物を村へ運ぼうと川の上流に向かっていた。その日は暑い日だった。彼は農産物を早く届けて、暗くなる前に家に戻りたいと思っていた。前方を見ると、別の船が見えた。流れに乗って彼の小舟に向かって急速に近づいてくる。彼は船をよけようとして猛烈な勢いで櫓を漕いだが、避けられそうにもなかった。
 彼は「向きを変えろ!おいらの舟にぶつかるぞ!」と叫んだ。だが、無駄だった。船はものすごい音を立てて彼の小舟にぶつかった。彼は怒鳴った。「このバカもん!こんなに川幅の広い川で、なんでおいらの舟にぶつかってくるんだ!」
 船の中をのぞいて、この事故の責めを負う人間を探したが、誰もいないことに気づいた。彼は、係留を解かれて流れに乗って下ってきた空の船に叫んでいたのだ。

「TRIGGER」より

いつだって、それは誰も乗っていない空っぽの船だ

  • 会議でいつもあなたを邪魔する同僚。彼はあなたに限らず、誰よりも自分が賢いと思っている。空っぽの船だ

  • 朝、通勤途中で何キロも後ろをつけてきた乱暴なドライバー。彼は毎日、どの道路でも同じことをしている。それが彼の走り方だ。空っぽの車だ

  • 銀行の担当者が、申請書に誤字があったからといって少額融資をはねつけた。彼は申請書を見たのであって、あなたを見ていたわけではない。スーツの下は空っぽだ

  • スーパーマーケットのレジの女性が、今夜のディナーパーティに使う小さなアンチョビの缶を詰め忘れたから、取りにスーパーに戻る必要があった。彼女は1日じゅうレジを打って品物を詰めている。80グラム入りの缶は見逃しやすい。彼女が意図的にしたわけではない。あなたに対してでないことは確かだ。これも空っぽの船だ

教訓

向こうの船は空っぽだ。私たちはいつも誰も乗っていない船に向かって叫んでいる。空っぽの船は私たちを標的にしているのではない。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

いかがだったでしょうか。
いま読んでいる本『TRIGGERー6つの質問で理想の行動習慣をつくる』(マーシャル・ゴールドスミス著)の中のとても好きな箇所です!

昨日の電話をかけてきた相談者の方が、まさに上の銀行担当者のケースの内容に近い相談だったことを思いだしました。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?