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マンゴー河村、祖父との別れとグランドオープン。

2021年6月10日からの1ヶ月間のプレオープン期間を経て、7月10日(土)満を持して直売所グランドオープンを迎えることができた。

マンゴーの本格的な最盛期が中々読めずにいた。今年の梅雨入りが早かったため、グランドオープンを当初は7月中旬頃を設定していたのだが、梅雨入りした割には天気が良い日が続いたため、収穫高も増えるだろうと想定し「7月4日」に変更。

その後また雨となり、二転三転 ....

最終的には「7月10日」を、スイートネスファーム藤枝「ふじえだ完熟マンゴー」直売所グランドオープンすることにようやく決まった。

そんな最中、一本の電話が家族からかかってきた。

おじいちゃんが危ない!!

もちろんだが「おじいちゃん」とは私の祖父であり、自動車部品製造会社「株式会社カワムラ」の創業者で現役会長。数日前から入院しており、峠は越えたと連絡で安堵していた中での出来事だった。

1年前から介護施設に入っていたのだが、コロナウィルスの関係で一切面会も出来ず数回電話をしたのみ。心配をかけたくないとマンゴー事業のことは一切伝えておらず、本格的に収穫が始まったらマンゴーを食べてもらいながら話をしようと考えていた。

しかしその願いは叶う事なく、祖父(会長)は天国へ逝ってしまった。94歳という年齢を考えれば、寿命を全うしたと思うこともできる。が、コロナの影響による面会禁止で、家族や社員とも会えない寂しい思いをしながら日々を過ごしていたと思うと、やるせない気持ちになった。

そしてグランドオープンの日と、祖父の葬儀の日が重なる。

二転三転しようやく決めたオープン日を、再度変更しようか非常に悩んだ。しかしスタッフに相談すると『もし社長が来れなくても、私たちだけでも大丈夫です!』の力強い言葉が返ってきた。スタッフへの感謝とお待ちくださっているお客様に、1年間の苦労と喜びをこの日にぶつけよう!
そう心に決め、当初の予定通りグランドオープンを「7月10日」にすることにした。

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オープン当日。結果、私がグランドオープンの日に直売所に立つことは叶わなかったが、スタッフのおかげで無事終えることができた。
近隣からも遠方からも多くのお客様が、この小さな直売所にわざわざ訪れて下さり、私たちのマンゴーを買い求めてくださったと聞いた。私自身、初めての本格的な小売り事業。恐らく多くの不手際があっただろうが、バタバタと充実した忙しさに時、感謝に溢れたグランドオープンの日は終了した。

バタバタと葬儀のなんとも言えない時間が過ぎ、スタッフとの通話を切り「ホッと一息」ついたとたん、幼き頃からの祖父との時が頭を巡る。祖父との別れは私にとって、言葉では言い表せないほどだ。心に穴が開くとは、こうゆう事なのかと・・・。

思い返すと未だに胸が苦しくなるので、あまり詳しく記すこと出来ないが、私がカワムラの社長になった時、祖父から貰った徳川家康の『大将の戒め』の手紙は今でも自宅のトイレに大切に貼ってある。

大将の戒め

兎にも角にも、スタッフとお客様への感謝を胸に、その晩は眠りについた。

が翌朝。ハウスに出勤すると、数えきれないほどの「日焼けしたマンゴーたち」が...。

梅雨明けと気温の変化と、グランドオープンの対応に追われ、遮光カーテンを閉めるタイミング遅延よって、1年間かけて育ててきた数えきれないほどのマンゴーが

たった一日で日焼けし、売り物にならなくなってしまった。

これまで何回も、ハウスにうずくまり立ち上がれなくなった事があったが、最盛期収穫を目の前にして、この出来事は私のショックを倍増させた。

日焼け

しかし、ただどれだけ落ち込んでも日焼けしたマンゴーが再生することない。やるべきコトは、これ以上日焼けのマンゴーを出さないように対処すること。その日から今まで以上に日射の管理を徹底していった。そしてグランドオープンから数日が経ち、収穫のピークを迎え「てんてこ舞いの日々」が続くこととなった。

亡くなった祖父、会長も元々は農家だったらしい。ただ当時このまま続けても農業は重労働であり商売は大きくはならない、という判断で製造業に新規参入しカワムラの礎を築いてくれて今がある。

その製造業から、新規事業で農業を始めた私。

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祖父の葬儀と直売場のグランドがオープンが重なったのは
農業は大変だからやめた方がいいというメッセージなのか?
それとも頑張って農業をやっていけという意味なのか?
私は後者が祖父からメッセージだと思い、一歩ずつ前に進むしかないのだ。


【連載小説】雲の中のマンゴー

この物語は、自動車部品メーカーを営む中小企業の若き経営者「沢村 登」が様々な問題に直面しながら、企業グループの新しい未来づくりを模索し新事業に挑戦する「実話を軸にしたフィクション」ストーリーである。


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