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インスリン抵抗性の改善にアスタキサンチンが有効 日本で実施された臨床試験をご紹介

抗酸化作用・抗炎症作用のあるアスタキサンチンは、生活習慣病の予防・改善に役立つ機能性成分として広く知られています。アスタキサンチンのトップメーカーである富士化学工業は、糖尿病予備軍を含む健康な人を対象として、糖代謝や脂質代謝に対するアスタキサンチンの効果を検証する臨床試験を実施しました。試験では、アスタキサンチンの継続摂取が高血糖や動脈硬化の予防・改善に有益であることを示唆する結果が確認されています。

日本で行われたアスタキサンチンの臨床試験

学術顧問の望月です。今回の記事では、『Nutrients』に2021年に投稿された「The Beneficial Effects of Astaxanthin on Glucose Metabolism and Modified Low-Density Lipoprotein in Healthy Volunteers and Subjects with Prediabetes」という論文をご紹介します。富士化学工業による研究成果で、糖尿病予備軍を含む健康な人に対するアスタキサンチンの効果が報告されています。

糖尿病の主な原因は、インスリンに対する反応が鈍くなる「インスリン抵抗性」です。インスリンが効きにくくなると、骨格筋などに血液中の糖が取り込まれなくなります。糖尿病を発症して高血糖状態が長期間続けば、網膜症・腎症・神経障害など糖尿病合併症の危険度が高くなります。糖尿病では高血圧や脂質異常症を併発していることも少なくないため、患者さんは心臓病・脳卒中の発症リスクが高いこともわかっています。

糖尿病は予防が大切です。病態メカニズムを見ていくと、糖尿病の予防においてはインスリン抵抗性の改善が重要であることがわかります。以前の記事では、糖尿病に対するケルセチンの効果をご紹介しましたが、近年、血糖値を下げる働きのある機能性食品に注目が集まっています。強力な抗酸化作用・抗炎症作用を持つアスタキサンチンも、糖尿病に対する効果が研究されている食品の一つです。アスタキサンチンの詳細については、冒頭のリンクなど過去の記事をご確認ください。

今回の試験には、かみいち総合病院(富山県中新川郡上市町)の健診センターを受診した53人の健康な人がエントリーしました。分析対象となる条件には、20〜74 歳であること、空腹時血糖値が125 mg/dL未満であること、妊娠・授乳中ではないこと、ガンや腎不全、心臓病や甲状腺障害、そのほかの炎症性疾患を患っていないこと、過去6ヵ月間に健康食品を飲んでいないことなどが挙げられていました。なお、糖尿病の前段階である糖尿病予備軍の人も分析対象となっています。

これらの条件を満たした44人は、アスタキサンチンを摂取する23人とプラセボを摂取する21人という2つのグループに分けられました。試験期間は、12週間に設定。参加者には、それぞれの粒食品を毎日1粒ずつ飲んでもらいました。アスタキサンチンの粒食品には、ヘマトコッカス・プルビアリス由来のアスタキサンチンが1粒あたり12 mg含まれています。

アスタキサンチンでインスリン抵抗性が改善

アスタキサンチンの摂取によって、どのような変化が見られたのでしょうか。明確な違いが確認された項目の一つが、血液中のアスタキサンチンの濃度です。プラセボ群においては、0、4、8、12週目のすべてでアスタキサンチンは検出されなかったのに対し、アスタキサンチン群では4週目に122.69 ng/mLのアスタキサンチンが検出。このレベルは、12週間目まで維持されていたのです。

血液中で増えたアスタキサンチンは、代謝にもポジティブな影響を与えています。早速、試験の結果をご紹介していきましょう。

●糖代謝関連の指標

12週間後、75gのブドウ糖を摂取した後の血糖値を測定する糖負荷試験では、120分後の血糖値がベースラインと比較して大幅に低下していました。同様に、120分後のインスリンレベルもアスタキサンチンの摂取によって有意に減少していることが確認されています(39.62±34.3 to 19.09±11.9 μU/mL, p < 0.01)。さらにHbA1cは、糖尿病予備軍(HbA1c 5.6〜6.4に該当する人)においてもベースラインと比較して有意に減少していました(5.82±0.22 vs. 5.73±0.35%, p < 0.05)。アスタキサンチンによるHbA1cの改善が実証されたのは、人間を対象とする試験では初めてとのことです。

●脂質代謝関連の指標

アスタキサンチンの摂取によって、アポリポたんぱく質E(4.43±1.29 vs. 4.13±1.24 mg/dL, p < 0.05) とマロンジアルデヒド修飾低密度リポたんぱく質(MDA-LDL)(87.3±28.6 vs. 76.3±24.6 U/L, p < 0.05)が大幅に減少していました 。一方、トリグリセリド(TG)、総コレステロール(TC)、HDL-Cのレベルには大きな変動はありませんでした。健康な人を対象として試験を行ったためだと思われます。今回、数値に改善の見られたMDA-LDLは、アテローム性動脈硬化症の要因として知られています。アスタキサンチンが動脈硬化の予防にも役立つ可能性を示唆しています。

糖代謝と脂質代謝のほかにも、アスタキサンチンの摂取によって「RHI」がベースラインと比較して有意に増加し(1.84±0.36 vs. 2.12±0.55, p < 0.05)、血管の内皮機能が改善されることがヒトで初めて確認されています 。今回の試験では、人間の細胞における分子メカニズムは検証されていないものの、アスタキサンチンが糖尿病や動脈硬化の予防・改善に役立つ可能性があることが明らかになりました。

不二バイオファームで製造しているアスタニンには、富士化学工業のアスタキサンチンを主原料として使用しています(アスタキサンチン12 mg含有/1日量)。弊社でも、最終商品であるアスタキサンチンのエビデンスを蓄積していきたいと考えています。

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