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西田社長インタビュー!原料供給世界トップシェアの富士化学工業の社長が語るアスタキサンチン

不二バイオファームでは、アスタキサンチンとニンニクスプラウトを組み合わせたアスタニンというサプリメントを展開しています。使用しているアスタキサンチンは、富山県にある株式会社富士化学工業が製造している原料です。富士化学工業は、アスタキサンチンの原料供給で世界トップシェアを占めています。今回、1946年の設立以降、医薬品の受託製造を続けてきた同社がアスタキサンチンの製造に乗り出した経緯、アスタキサンチンの製造工程や特性などについて、西田洋代表取締役社長に話を聞きました。

病気の予防をコンセプトとする新規事業

富士化学工業(富山県中新川郡上市町)の代表取締役を務めている西田洋です。当社では1994年以降、アスタキサンチンの製造を続けてきました。現在、国内におけるアスタキサンチンの原料供給のトップシェアを獲得しています。グループ会社のアスタリール株式会社(東京都港区)から販売されているアスタリールシリーズやアスタビータシリーズなど、もしかしたらご存知の読者もいらっしゃるかもしれません。

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アスタリールなどの原料であるアスタキサンチンの製造を手がけている富士化学工業。世界トップシェアのアスタキサンチンの供給量を誇る(提供:富士化学工業 ©︎2014 AstaReal)

アスタキサンチンの製造に乗り出すまで当社は、1946年の設立以降、医薬品受託製造を事業の柱としてきました。医療や美容・健康という領域から離れることなく新たな事業に挑戦したいと考えていたときに、父である前社長が出合ったのがアスタキサンチンでした。新素材のリサーチ対象は世界──抗酸化作用を持つ天然物の探索を進めた結果、“これだ”という大きな可能性を感じたそうです。“病気を治す”という既存事業に対し、新規事業のコンセプトは“病気の予防”といえるでしょう。

当時、アスタキサンチンの原料であるヘマトコッカス藻の研究を進めていたのは、スウェーデンの名門であるウプサラ大学の研究室でした。後にAstaCaroteneという大学発ベンチャー企業として独立して、アスタキサンチンの商品開発に成功したものの、同社は安定供給や販売などの面で苦戦を強いられていました。AstaCaroteneと合流した当社は、アスタキサンチンのさらなる研究・開発、販売強化に取り組みました。

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アスタキサンチンはヘマトコッカス藻から抽出されている(提供:富士化学工業 ©︎2014 AstaReal)

体内では作り出せないアスタキサンチン

前後してしまいましたが、アスタキサンチンのことを簡単にご紹介しましょう。アスタキサンチンは、エビやカニなどの甲殻類、サケやタイなどの魚介類に豊富に含まれている天然の色素成分「カロテノイド」の一種です。リコピンやβ-カロテンといったカロテノイドの中でも、アスタキサンチンは動脈硬化などの原因となる活性酸素を消去する働きが最も強いことがわかっています。医学・生物学の文献データベース『Pubmed』で「アスタキサンチン(Astaxanthin)」と検索すると、2000以上の文献がヒットします。

残念ながら私たち人間は、体内でアスタキサンチンを作り出すことができません。そのため、アスタキサンチンはふだんの食事で補う必要があります。サプリメントは、効率的にアスタキサンチンを摂取する手段の一つです。当社では、ヘマトコッカス藻から抽出したアスタキサンチンを原料として供給していますが、「色素成分を補う」と聞いてもなかなかイメージがわかないかもしれません。アスタキサンチンはどのように製造されているのか、簡単にご説明します。

色素成分を補う?製造工程をご紹介

現在、当社のアスタキサンチンはスウェーデンとアメリカのMOSES LAKEで製造されています(過去に静岡県三島市での製造を試みたこともありましたが、放射冷却など気候の問題を克服できずに断念)。最初のプロセスでは、培養タンクでヘマトコッカス藻を光合成させ、細胞分裂を促していきます。一つひとつのヘマトコッカス藻は薄い緑色をしているのですが、成熟した細胞の数が増えるにつれてタンクの中は濃い緑色に変化していきます。

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成熟した細胞の数が増えると緑色が濃くなっていく(提供:富士化学工業 ©︎2014 AstaReal)

ヘマトコッカス藻が十分に成熟・増殖したのを確認したら、次のプロセスとしてタンクに紫外線を主とした過剰なストレスを与えます。すると、ストレスによってヘマトコッカス藻が休眠状態になり、色は緑色から赤色へと変化していきます。これはヘマトコッカス藻が紫外線などのストレスから体を守ろうという反応で、細胞壁の中にアスタキサンチンが蓄えられることで生じています。最後に、主に「超臨界抽出法」という技術を用いて、乾燥したヘマトコッカス藻から高純度のアスタキサンチン抽出物を製造します。

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アスタキサンチンが蓄えられることで赤くなる(提供:富士化学工業 ©︎2006 AstaReal)

とても重要な品質管理

私たちは、アスタキサンチンの品質管理をとても大切にしています。培養や抽出の少しの違いでピュアなアスタキサンチンが少なくなって純度が低くなったり、不純物が残ったアスタキサンチンができてしまったりします。アスタキサンチンの質が異なれば、摂取後に得られるはずの健康効果にもバラつきが出てしまう可能性があります。アスタキサンチンの製造には、創業から70年以上にわたる医薬品製造の品質管理・製造プロセスのノウハウが受け継がれています。これは、当社の強みです。

健康効果でいうと、代表的なものとして眼精疲労の改善が挙げられます。最近では、グループ会社の商品が美容効果に関する機能性表示を2つ取得しました。アスタキサンチンが肌を保護するというものです(「肌の水分量と肌の弾力を維持することで、肌の健康を守るのを助ける機能」「紫外線の刺激から肌を保護することを助ける機能」)。そのほか、老人性筋萎縮や廃用性筋萎縮と呼ばれる「サルコペニア」の研究は、旬の話題といえるでしょうか。筋肉が衰え、筋力が低下していくサルコペニアは、寝たきりのきっかけとなるつまずき・転倒や、誤嚥性肺炎を引き起こす嚥下障害などと関係しています。

サルコペニアの研究について、少しだけふれておきましょう。アスタキサンチンを1日12mg飲んでもらいながら、傾斜をつけたトレッドミルを使って毎日40~60分間ウォーキングをしてもらったところ、運動のみの場合と比べて3ヵ月後に筋量が増え、筋力も上がっていることを確認することができました。試験に参加したのは、65~82歳の高齢者42人です。負荷の高い筋肉トレーニングと積極的な栄養摂取が必要とされている「サルコペニア」において、中程度の負荷であるウォーキングによる筋力上昇は非常に興味深い結果です。

アスタキサンチンには、抗酸化・抗炎症作用、糖代謝(インスリン抵抗性)の改善作用などがあります。酸化・炎症、インスリン抵抗性とサルコペニアの関連を示唆する論文がいくつか出ていますので、これからアスタキサンチン摂取によるサルコペニアの予防効果の検証を進めていく方針です。研究のおもしろさを、あらためて感じています。

アスタキサンチン商品を選ぶポイントは

現在、アスタキサンチン商品は、さまざまな会社から販売されています。アスタキサンチンを基本の抗酸化・抗炎症剤として、相加効果・相乗効果を狙った素材を組み合わせるのが一般的です。目にいいとされるルテインやブルーベリーなどの配合は、代表的なものといえるでしょうか。

今回、執筆の機会をいただいた不二バイオファームでは、ニンニクスプラウトを配合したアスタニンを展開されています。アスタキサンチンには、筋肉や脳といった心身の疲労を改善する働きがあることもわかっています。滋養強壮のイメージがあり、抗炎症作用があるニンニクスプラウトとの組み合わせも、おもしろいと思っています。

商品を選ぶポイントは先ほどの製造工程でもふれたとおり、やはり品質です。アスタキサンチンだけでなく、副原料にも目を向けてもらいたいと考えています。飲み方に関する質問をいただくことも少なくありません。アスタキサンチンは脂溶性と水溶性の性質を持っているので、食後に飲むと吸収率が上がるといわれています。12時間ほどかけて腸管からゆっくり吸収され、48時間ほど体内にとどまります。サプリメントの場合、飲むタイミングや量の指定(処方)はできませんが、私は朝・晩の食後の1日2回飲んでいます。なお、当社で手がけてきた試験の多くは、1日12mgを基本の摂取量としています。

アスタキサンチンを中心に話をしてきましたが、健康維持・増進にはアミノ酸やビタミン・ミネラルといった基本的な栄養成分が必要です。もっというと、「食事」「睡眠」「運動」のいずれも欠かすことはできません。超高齢社会では、医療費の問題とともに健康寿命の重要性が語られることも少なくありません。医療費削減という国家としての課題も大切ですが、個人レベルで考えると「外に出て元気に生活できる」というのがいちばんではないでしょうか。「食事」「睡眠」「運動」に留意した上で、アスタキサンチンなどをはじめとする機能性食品の利用を検討してほしいと思います。

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