見出し画像

プラズマ乳酸菌が樹状細胞の働きを活性化 自律神経を整えて疲労の蓄積も改善

発芽そば発酵エキスは、そばの新芽の青汁を乳酸発酵させた食品です。発芽そば発酵エキスには、数種類の乳酸菌が含まれていることがわかっています。「Lactococcus lactis(以下、L. lactis)」は、発芽そば発酵エキスに含まれている乳酸菌の一つです。日本で実施されたヒト試験では、L. lactisの仲間である「Lactococcus lactis strain Plasma」は疲労の改善や免疫力の強化に役立つことが明らかになりました。

疲労の蓄積で免疫力が低下

学術顧問の望月です。前回の記事では、不安感・抑うつ状態・不眠に対する「Lactobacillus plantarum(以下、L. plantarum)」の効果を整理していきました。今回の記事では、『Nutrients』に2023年に掲載された「Effects of Ingesting Food Containing Heat-Killed Lactococcus lactis Strain Plasma on Fatigue and Immune-Related Indices after High Training Load: A Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled, and Parallel-Group Study」をご紹介します。

タイトルにある「Lactococcus lactis strain Plasma」は、最近注目されているプラズマ乳酸菌のことです。本研究では、強度のトレーニングによって体に負荷をかけた後の疲労感や免疫関連の指標に対するプラズマ乳酸菌の効果を検証しています。

低強度から中強度までの運動は、健康の維持・増進に効果的です。一方、強度の高い激しい運動は、生活の質を低下させ、睡眠障害やうつ病などを引き起こすことがあります。疲労と免疫の働きの関連も広く知られており、運動後の免疫力低下によって上気道感染症のリスクが増すことなどが実際に報告されています。高強度のトレーニングを続けるアスリートにとって、これらは深刻な問題です。

乳酸菌は、疲労や免疫力低下の改善につながる食品として注目されています。TLR-9という受容体のシグナル伝達を刺激することによって、免疫の司令塔である樹状細胞の働きを活性化するプラズマ乳酸菌には、疲労回復効果や感染防御作用があることが明らかになっています。

今回の試験に参加したのは、同じスポーツクラブに所属している37人の男性です。プラズマ乳酸菌を摂取する18人とプラセボ食品を摂取する19人の2群に分けて、37人にはそれぞれの試験食品を飲みながら、14日間のトレーニングを続けてもらいました。

乳酸菌は疲労に伴う活力低下にも有効

試験の評価項目は、樹状細胞の成熟マーカー、血液パラメーター、生理学的指標、疲労関連指標です。1日目と15日目に各データを記録して、それぞれの項目の2群間の違いが比較されました。また参加者には試験期間中、各試験食品の摂取量、運動(種類と期間)、食事内容、体調なども記録してもらっています。

それでは、主要項目の結果をご紹介していきましょう。最終的にデータ分析の対象となったのは、プラズマ乳酸菌グループ15人とプラセボグループ16人です。今回の試験では、上気道感染症にかかりやすくなることがわかっている強度のトレーニングが取り入れられており、試験後には実際に筋肉の損傷を伴う運動をした後に上昇するCPKの有意な増加が確認されています。

免疫力低下につながる強度のトレーニングを続けたところ、成熟した樹状細胞のマーカーであるCD86のレベルは、プラセボグループよりプラズマ乳酸菌グループのほうが有意に高いという結果が得られました。また、樹状細胞の活性度は、プラセボグループでのみ試験後に有意に減少していることが明らかになったのです。

一方、日記やアンケートをもとに評価した疲労感については、プラズマ乳酸菌グループで累積疲労日数が有意に減少していることがわかりました。先述のとおり、疲労と免疫の関係は、これまでの研究でも報告されています。今回の結果は、プラズマ乳酸菌の摂取によって樹状細胞が活性化して免疫機構の働きが維持され、疲労の主観的指標の改善につながった可能性があることを示唆しています。

ほかにも、疲労に対するプラズマ乳酸菌の影響が評価されています。試験参加者には14日間のトレーニングの後に短期の運動をしてもらったのですが、プラズマ乳酸菌グループでのみ、交感神経と副交感神経からなる自律神経のバランスの改善が認められました。さらに、疲労と活力に関連していると報告されているテストステロンの値は、プラセボグループでのみ有意に減少していました。これは、疲労の悪化を意味します。

過去の研究なども踏まえると、プラズマ乳酸菌はTLR-9を刺激することで副交感神経系を優位にしている可能性があると考えられるとのことです。自律神経系に与えるプラズマ乳酸菌の影響を解明するためには、TLR-9の機能のないマウスを用いた生理機能評価などが今後必要となるでしょう。現時点での結論となりますが、樹状細胞の働きを維持するプラズマ乳酸菌には、日常的なトレーニングに伴う疲労感の蓄積を軽減する働きがあることは間違いなさそうです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?