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大学生の試験ストレスに対する乳酸菌の効果を検証 進級・進学テストに伴う不安感・抑うつ状態・不眠が改善

ストレスは、不安・うつ・不眠の引き金となります。これらの症状が起こる背景には、腸内細菌や腸内細菌の代謝産物の変化が関わっていることも広く知られています。近年、腸と脳の関連に注目して、プロバイオティクスのストレス緩和効果を検証する研究が進められています。海外で行われたヒト試験では、Lactobacillus plantarumが不安・うつ・不眠の改善に有効であることが報告されました。

不安感に対するプロバイオティクスの効果

学術顧問の望月です。前回の記事では、ビッグバンのスーパーウェルター級の新・チャンピオンとなった藤村大輔選手にご登場いただきました。藤村選手は、私たちが販売している「アスタニン」というサプリメントを体づくりに取り入れています。藤村選手がベルトを獲得したことを、私たちもうれしく思っています。おめでとうございます。

さて、今回の記事では、不二バイオファームのもう一つの主力商品である「発芽そば発酵エキス」に関連する研究情報を久しぶりにご紹介します。ピックアップしたのは、『Front. Immunol.』という学術誌に2023年に掲載された「Psychobiotic Lactobacillus plantarum JYLP-326 relieves anxiety, depression, and insomnia symptoms in test anxious college via modulating the gut microbiota and its metabolism」という論文です。

発芽そば発酵エキスは、自社農園である不二バイオファームで無農薬栽培しているそばの新芽を青汁にした後、乳酸菌で発酵して得られるエキスです。発芽そば発酵エキスには、Lactobacillus plantarumをはじめとする複数の乳酸菌が含まれていることを確認しています。今回の論文では、中国広⻄省のバマ地域の伝統的なもち米を発酵・分離して得られる「Lactobacillus plantarum JYLP-326(以下、JYLP-326)」の機能性研究が紹介されています。

過度のストレスは、不安感・抑うつ状態・不眠などを引き起こすきっかけとなります。中国で行われた本研究では、進級・進学テストに伴う不安を抱えている大学生を対象として、不安感・抑うつ状態・不眠、腸内細菌叢に対するJYLP-326の効果が検証されました。

試験には、不安感と抑うつ状態のスコアが正常よりも高い60人と、不安と抑うつ状態のスコアが正常である30人が参加。スコアの高い60人は30人ずつの2群に分けられ、それぞれのグループにはJYLP-326を含むプロバイオティクス食品とマルチデキストリンを含むプラセボ食品を1日2回、3週間飲んでもらいました。一方、スコアが正常である30人は対象群として研究に参加。ふだんと同じ生活を続けるよう指示が出されています。

なお、試験に参加した90人はいずれも同年齢で、男女比は1:1となっています。また、試験期間が終わる3週間後は大学のテストの日で、緊張感が増していく環境の中で今回の試験は行われました。

腸内環境の改善が脳にも好影響

結果を簡単にご紹介していきましょう。試験開始後、対象群の不安感と抑うつ状態のスコアはテストが近づくにつれて少しずつ上がっていき、最終的には軽度の不安と抑うつに該当する数値に上昇。また、プラセボ群のこれらのスコアは、試験終了時にわずかに悪化しました。それに対し、JYLP-326群のスコアには数値の大幅な改善が認められました。試験では、不安や抑うつのレベルと不眠の重症度には正の相関があることも確認されています。JYLP-326群の不眠が改善したのです。

ストレスは、腸内細菌のバランスにも悪影響を与えることがわかっています。試験では、参加者の糞便サンプルを用いてJYLP-326が腸内環境に与える影響についても分析されました。その結果、JYLP-326の投与がBacteroidesとRoseburia属の減少とPrevotellaとBifidobacterium属の増加に関与していることが明らかになりました。これは、JYLP-326がストレスに起因する腸内微生物叢の乱れを改善することを示唆する結果です。

今回の研究ではさらに、腸内細菌の代謝産物と不安感・抑うつ状態・不眠の関連についても分析が進められました。その結果、各症状と正の相関、負の相関を示す腸内細菌が特定されました。先述のとおり、ストレスは腸内環境に悪影響を与えますが、テストの緊張感によって腸内細菌叢とその代謝に変化が起こり、不安感・抑うつ状態・不眠を誘発すること、プロバイオティクスがストレスから腸内環境や脳を保護することが、あらためて確認されたのです。

一連の結果は、腸内微生物と糞便代謝産物が不安障害の診断・治療のバイオマーカーになりうる可能性を示しています。一方で著者らは、「JYLP-326の潜在的な働きが示されたが、今回の結果がプロバイオティクスの投与によるものなのか、被験者間の個人差によるものなのかはまだ断定できない」としています。今後の研究では、腸内細菌と脳の関連を含めたJYLP-326の根底にあるメカニズムを解明していくことが期待されています。

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