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発芽そば発酵エキス製造のポイント“完全凍結” 発酵と腐敗の分かれ道となる理由

機能性成分が豊富なそばと発酵の組み合わせはどうか──。発芽そば発酵エキスは、こうしたアイデアから生まれた食品です。10年以上の改良の末に、現在の製法(発酵技術)に辿り着きました。具体的には、そばの新芽の青汁を完全凍結させた後、解凍するさいに温度やpHの変化に注意しながら乳酸菌を段階的に添加していき、発酵を進めています。今回の記事では、発酵と腐敗の違い、完全凍結の重要性を簡単にご説明します。

そばの新芽の青汁を乳酸発酵

常務の前島です。2020年3月31日にアップした「発芽そば発酵エキスができるまで!不二バイオファームの独自製法」という記事では、発芽そば発酵エキスの製造工程をご紹介しました。発芽そば発酵エキスは、弊社で水耕栽培しているそばの新芽を搾汁して得られる青汁を乳酸発酵させたものです。エキスにはケルセチンや乳酸菌の菌体成分などが含まれています。

発芽そば発酵エキスは、「そばの芽ぐみ FBP-100」という健康食品の原料として使用されています。お客様に商品をお届けしていくうえで大切なのが、品質管理です。現在のエキスの製法(発酵技術)が確立されるまでには、約10年の歳月を要しています。発酵というのは、とても奥が深いものです。原料の量などはもちろんですが、温度やpHなどの条件にばらつきがあれば、味やにおい、つまりエキスの性質が変わってしまいます。

青汁は、約3日かけて完全に凍結させます。完全凍結は発酵に欠かせないプロセスの一つ。雑菌の増殖を抑えつつ、低温下でも仕事を進めてくれる乳酸菌の発酵を待ちます。「発酵」と「腐敗」を分けるポイントです。
──発芽そば発酵エキスができるまで!不二バイオファームの独自製法

「発芽そば発酵エキスができるまで!不二バイオファームの独自製法」という記事では、発酵と腐敗を分けるポイントとして“完全凍結”を挙げました。今回、発酵と腐敗について、少しだけ掘り下げてみたいと思います。

発酵と腐敗は、いずれも微生物の働きで物質が変化していくことを意味します。食べられるものであれば「発酵」、食べられないものであれば「腐敗」、人間にとって有益なものであれば「発酵」、有害なものであれば「腐敗」というのが一般的な分類となるでしょうか。ただ、有害ではない食べ物でも、作ろうと思っていた発酵食品ができなかった場合は腐敗とされることもあります。このように、発酵と腐敗には明確な境界はありません。価値観や文化の違いなども関係しています。

例えば、スウェーデンにはシュールストレミングと呼ばれるニシンの塩漬けの缶詰があります。世界一くさいといわれている食べ物です。台湾には、臭豆腐という食べ物があります。いずれも発酵食品ですが、これらが苦手な日本人は少なくないかもしれません。同じように、海外の人からは納豆やくさやは腐っている食べ物と思わることがあります。

少し脱線しますが、私の好きな漫画に『もやしもん』という作品があります。もやしもんでは、菌を肉眼で見ることができる主人公の沢木惣右衛門直保を中心に、細菌学を研究する農業大学での生活が描かれているのですが、1話には、アザラシのおなかに鳥を詰めた「キビヤック」という北極圏の発酵食品(漬物)が出てきます。「このにおいが何かわかるか」と尋ねた樹慶蔵教授は、「腐ったアザラシの死体」という反応を見せた沢木らの前で、「乳酸発酵臭と腐敗臭の違いがわからないのか」といってキビヤックを食べて見せました。

以前、NHKの『チコちゃんに叱られる!!』という番組でも「腐ると発酵は何が違う?」というテーマが取り上げられていました。チコちゃんの回答は、「おなかが痛くなるかならないか」というものでした。シンプルで、わかりやすい定義でした。腹痛は、腐敗によって増えた毒素が原因で起こります。番組では「発酵食品は基本的には腐らない」という話も紹介されていました。保存状態などによりますが、発酵に使った菌がほかの菌の侵入を防いでくれるというのが理由です(甘酒など腐りやすいものもあります)。

乳酸発酵で機能性成分が増加

線引きが曖昧であるとお伝えした発酵と腐敗ですが、毒素による腹痛が起こらない“いわゆる発酵食品”には明らかなメリットがあります。発酵に欠かせない微生物には、発芽そば発酵エキスに使用している乳酸菌をはじめ、麹菌、酵母菌、酪酸菌などが挙げられます。これらの働きによって食品がある程度分解(消化)されているため、発酵食品の栄養は体内に吸収されやすくなります。また、ビタミンやアミノ酸が生成されるというメリットもあります。

発芽そば発酵エキスでもビタミンやアミノ酸、ペプチドの増加などが確認されています。ケルセチンなどの増加によって、抗酸化活性もそばの新芽の3〜4倍に増していることがわかってきました。

ソバスプラウトを乳酸発酵させると、発酵の過程で新しい機能性物質が生成されることがわかっています。
──スプラウト×発酵で機能性成分が増加 静岡大学名誉教授の衛藤先生が語るスプラウトの魅力と可能性

最後になりますが、発芽そば発酵エキスの製造で完全凍結がなぜ重要なのかをご紹介します。チコちゃんは、「発酵に使った菌はほかの菌の侵入を防ぐ」と話していました。菌の陣取り合戦は、発芽そば発酵エキスの製造工程でも見られます。

発芽そば発酵エキスの製造では、凍結させたそばの新芽の青汁を解凍しながらラクティス、プランタルムの順に乳酸菌を添加しています。乳酸菌には、腐敗をもたらす雑菌よりも低い温度で活動する性質があります。雑菌が動き出す前に、乳酸菌がエキス中で自分の居場所を押さえているというわけです。逆に、乳酸菌が陣取りで雑菌に負けてしまうと、発芽そば発酵エキスは腐敗してしまいます。凍結・解凍によって乳酸菌が活動しやすい低い温度の環境を作ってあげ、さらにpHを確認しながら発酵を進めていくことで、発芽そば発酵エキスはできあがっています。

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