宇宙の世界へようこそ⑰「宇宙機と宇宙施設」

2022年9月1日 23:48

有人無人問わず軌道上に存在する人工物のうち、軌道変更が容易なもの及び小型のものを宇宙機と呼び、それ以外を宇宙施設などと呼ぶ。宇宙施設は軌道港やスペースコロニーや各種産業拠点など、大きさ1km以上の軌道上構造物を指すことが多いが厳密な定義はない。また宇宙機は用途や形態によって人工衛星、宇宙船艇、宇宙艦などに分類できる。

特定の軌道に投入された後に、その軌道を恒久的に維持する宇宙機を人工衛星や人工惑星と呼び、通信や観測や測位などに使われる。商用衛星では、太陽光パネルなどの電源に加えてリアクションホイールや姿勢制御ロケットや制御用通信システムをパッケージ化した汎用の衛星バスに、様々なミッションペイロードを取り付けるのが一般的である。

積極的な軌道変更を行う宇宙機のうち、およそ惑星間航行不能かつおよそ100m未満のものを宇宙艇、それ以外の惑星間航行が可能なものなどを宇宙船、軍籍の宇宙船を宇宙艦と呼ぶ。宇宙艇は主に自然天体の作用圏内で使われるため化学ロケットを採用することが多く、貨客輸送や各種作業などを担っており、惑星間航行に不要な装備や安全基準を省略できるため安価である。宇宙船の用途は宇宙艇と同様だが、その規模やコストからほとんどが有人船であり、惑星間通信機や生命維持装置や各種冗長化が求められる。軍人が運用し軍籍に置かれた宇宙船のことを宇宙艦と呼び、民間人が運用する商船とは各種法令において異なる取り扱いを受ける。

宇宙機は基本的にセミモノコック構造をとり、構造材として人工衛星や宇宙艇はジュラルミンを、宇宙艦船は鋼鉄やステンレスを採用することが多い。断熱や熱疲労の観点から極低温推進剤を充填する推進剤タンクは船体構造部とは離隔するが、常温推進剤を充填する場合などは船体構造部と一体化して軽量化することが可能である。

姿勢制御はリアクションホイールとスラスタの組み合わせで実施される。回転数が限界値に近づいたリアクションホイールのアンロードなどは、宇宙施設や人工衛星の場合は電気推進を、宇宙船艇の場合は蒸発した推進剤によるコールドガススラスタか電熱ロケットを使うことが多い。

有人の宇宙艦船や宇宙施設は基本的に24時間稼働するためシフト勤務体制を敷いている。航行中の艦船は乗員を3組以上に分割しての4時間勤務8時間休憩が基本だが、軍艦の場合は3時間勤務6時間休憩だったり、戦闘中は12時間交代や24時間無休などに切り替えることもある。また1つの艦船に2クルー、あるいは3つの艦船に4クルーといったクルー制を導入することで、貴重な艦船の稼働率を高めると同時に船員の休暇や船外訓練時間を確保する場合もある。なお宇宙施設の場合は地上と同様に4直3交代制などを採用することが多い。

非常時の救命設備については機内与圧服に始まり、独立系統の与圧区画やシェルター、人工冬眠装置などが一般的である。海上や空中と異なり、致命的故障が発生しても宇宙機は軌道上に留まり続けるため、救命ポッドなどの脱出装置を搭載していることは稀である。

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