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エフ=宝泉薫
2019年9月2日 17:46
「あ、もしもし、恵梨だよ。今、お姉ちゃんのウチについたとこ。えっ!? お姉ちゃん?・・・元気・・・みたいだよ」つとめて平静を装うようにしたその言葉に、ようやくひと息ついた。少し余裕が出て、妹を見ると、なんかキレイになったみたいだ。半年で、こんなに変わるものなのかな。太ったって言ってたけど、全然そうは見えない。恋のおかげだとしたら、ちょっとシャクだけど、口裏を合わせてくれたこと
2019年9月4日 08:55
カスタードクリームの甘い香りと、とろ~りとした食感。シューのふんわりとして、それでいてサクッとした噛み応え。そのふたつが、口の中で溶け合う、なんともいえない心地よさ。数年ぶりのシュークリームは、私を数秒でノックアウトした。満足感というマットに沈み込んだまま、見た夢は、子供の頃の思い出。お父さんの買ってくる、この店のシュークリームを、いつも妹と奪い合うようにして、食べた。ダイエット
2019年9月6日 18:34
朝、目が覚めると、すぐに体重を測った。27.4キロ。最低体重より、1.5キロも重い。それ以上につらいのは、鏡に映ったお腹。過食直後と、ほとんど変わってないじゃない!出かけるまでの3時間、家のまわりを歩いたり、半身浴をしてみたものの、体重は、0.3キロ減っただけ。お腹も、たいしてへこんでない。鏡を見ながら、肋骨を数え、二の腕をつかんだりして、必死に言い聞かせてみる。私は、
2019年9月10日 20:53
Gさんが、指差した方向に目をやると、あの人もこっちを見てる。もしかして・・・?でも、まさか・・・「ユミちゃん、ちょっといい?」Gさんの声に反応して、そのユミちゃんという人が、こっちに近づいてきた。さっきと同じ、穏やかな微笑みを浮かべながら。「この写真、ビックリしたでしょ」「えっ、はい。・・・いえ、そんなことは・・・」「彼女、この人がもう生きてないんじゃないか、って思ったみたい
2019年9月12日 20:04
「あなたは今、服を着てるけど、私には、悲鳴が聞こえるよ」その言葉の意味がわからなくて、私は相川さんを見つめ返した。すると、彼女は例によって、穏やかな笑顔と口調で、「だって、今のあなたのやせ方、この写真の頃の私と同じくらいだもの。体重、20キロ台後半でしょ」「はい。あ、いえ・・・」ズバリと当てられ、つい認めてしまってから、取り繕うとしたものの、あとの祭り。それに、この人には嘘をつけ
2019年9月14日 11:25
カウンセラーなのに、私のことを担当できない理由。それを聞くべく、言葉を探していると・・・「じつはね、私、まだ治ってないの」淋しそうに、それでいて、どこか投げやりな感じで、相川さんが言った。どうして? こんなに、素敵で、輝いてるのに?「またひとつ、質問していいかな。私の今の体型見て、どう思う?」「えっ!?すっごくうらやましいです。背も高いし、手も足も細くて、顔もちっちゃくて。
2019年9月19日 21:29
「私、病気なんでしょうか?」自分でした質問に私が驚いたほど、相川さんは驚いた様子ではない。「うーん、私の意見を言う前に、またひとつ、聞いていいかしら。あなた自身は、自分のこと、どう思ってるの?」「自分のこと・・・ですか?そうですね、病気、とまではいかなくても、調子がよくないのは、認めざるをえないかな、って。疲れやすいし、体のあちこちが痛いし、それに・・・」一瞬、言おうかどうか
2019年9月21日 08:11
Gさんが手に持つコンビニの袋には、いろいろな飲み物が入ってた。「お客さん用の飲み物が減ってたから、買ってきたんだけどさ。しゃべると、のど渇くでしょ。よかったら、どうぞ」私が選んだのは、缶のウーロン茶。ノンカロリーだから、安心。昨日の夜、過食しちゃったから、今日はカロリー摂らないようにして、調節しなきゃ。何か言われるんじゃないかと、ドキドキしたけど、Gさんも相川さんも、無言。
2019年9月23日 20:43
「あれ? うちに来るの、8時じゃなかったっけ。それに、Eクンまで一緒なんだ。あ、お久しぶり・・・」動揺しているのを隠すため、つとめて軽い感じで話しかけたのに、恵梨も、Eクンも、愕然としたまま。それでも、少し間を置いて、Eクンは、「そうだよね、卒業式以来、かな」と、言葉を返してくれたけど、恵梨は困ったような顔をして、何も答えようとしない。「どうしたの? 私の質問に、答えてよ!
2019年9月26日 21:44
「本当に、病院、行ってるの?」妹に問い詰められ、答に窮した私。パニックになりながらも、心当たりの病院を探すけど・・・ダメだ、思いつかない。そりゃそうだよね、東京来てから、病院なんて行ってないもん。医者の知り合いも、全然いないし・・・そのとき、あの人のことが頭に浮かんだ。そうだ、相川さんがいる。しかも今、名刺だって持ってるじゃない。定期入れから、名刺を取り出すと、「ほら、見
2019年9月29日 09:15
妹が帰って、3日が過ぎた。どういうわけか、実家からの音沙汰がない。すぐにでも、母親から何らかの連絡が来ることを、覚悟していたのに。これから起きるかもしれないことを考え出すと、他に何も手がつかないほど、苦しんでるのに。彩華ちゃんのカテキョは、なんとかこなせたけど、「先生、大丈夫? 今日は特に、元気ないみたい」なんて、心配されてしまった。現時点で予想されるのは、母親の上京。早け