秋、雨降りの午後

雨のおとが地面に染み込む静かな午後

まどろみの中で遠い記憶を想い出した

秋の雨の日、わたしはあなたと恋に落ちた

ずっとひとりぼっちで冬を過ごしてきたわたしが

人の温もりがこんなに温かいということを

初めて知った季節

たった一人の人と出会うことで

あんなにも全てが変わるなんて

あれからあなたのいない秋を何度、過ごしたでしょうか

静かな雨降りの午後、心にまで冷たい雨がしみ込んできます

二人分の温かさを知ってしまったわたしは

いま、二人分の淋しさを背負って 秋の雨の音を聞いています


歪んだ笑顔


ぼくはうまく笑えない

心の中にぽっかりと穴が空いて

そのこころの穴に暖かな秋の光が差し込んで

道端のコスモスが秋の風にくすぐったそうに無邪気に揺れている

そんな秋の穏やかな光景を見ていても

ぼくはかつてのように

かつてのように好きな人の前でしか笑えない

臆病で、自信がなくて、

しあわせを感じることすら怖いのかもしれない

好きな人の前では、自分が余りにも無力であることを

想い知らされて


ささやかなしあわせ


大好きなリンゴとお気に入りの詩集をポケットに詰め込んで

夜の中 自転車を走らせた

冷たい冬の冴えた空気がすーっとこころに染み込んで

ひとりぼっちであるという心地よさ

好きなものたちとどこまでもゆこう

大好きなリンゴとお気に入りの詩集をポケットに詰め込んで

ささやかなしあわせに満たされるまで

僕は自分の居場所を探し続ける

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