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「ことり」小川洋子さんを読んで

 小川洋子さんの作品は 以前「博士が愛した数式」を読んでとても感動したことが ありました。それから数年、「古き良き映画」の再放映があったのでしょうか… ある時、何気なくテレビをつけた時 目に入ってきた画像を見て「このシーン、見たことある!」と思って見続けていると、「博士の愛した数式」だったのです。

そのテレビを最後まで見終えた時、小川洋子さんの作品を 読んでみようと思い、私は すぐ「Amazon」を 開けました。

そして、購入したのが「薬指の標本・小さな六角形の部屋」「密やかな結晶」「ことり」でした。 

「薬指の標本・ちいさな六角形の部屋」と「密やかな結晶」の感想は 以前投稿させていただいているので 省きますが、明らかに「ことり」という作品は違っていました。まだ四冊しか読んでいませんが、小川洋子さんが「書きたくなった」動機が「アンネの日記」を読んでからだ!と書かれていたからでしょうか、「薬指の標本・ちいさな六角形の部屋」と「密やかな結晶」の内容とは 全く別物でした。この二冊は「どんなサスペンスより恐ろしい」と言う感想でしたが、「博士の愛した数式」と「ことり」は 同じ作者とは 思えない慈愛の満ちたものでした。作品の描かれている対象物・人は やはり作家の描きたい分野に位置したものなのでしょう。
 この度は小野正嗣さんの言葉を 引用させてもらうとすれば「取り繕えない人たちへの愛の歌」なのです。「博士の愛した数式」の中の「博士」も「ことり」の中の「お兄さんと小父さん」も 「社会の中で取り繕えない人たち」なのです。     
 社会の中ではともすれば、一人で生きていけないのではないか?と 思われるような、しかし、決して社会に害を与えない人達なのに、社会の隅に ひっそりと息をひそめるように 目立たなく生きていかなければならない ような人達に 目を向け、愛の目をもって描いている作家、小川洋子さん。     生き物の中で 最も小さくか弱きものである「ことり」。「ことり」という存在が、一番人の心を癒してくれるそのことに 改めて気づかせてくれる作品でした。

 映像でも見ていたように「ことりの小父さん」が「メジロの鳴き声を競う会」に集められた 沢山のメジロを籠から逃がす為に、次々と籠の戸を開け放っていくシーンは 圧巻でした。 
「ことりは誰がために鳴く?」それは 映画「誰がために鐘はなる」と 重なるのではないか? と、思うのですが…

と、書きたいところですが 残念乍ら無責任にも 私は「誰がために鐘はなる」を 本当のところ知りません。本や映画にもなっていたにもかかわらず、人から内容を聞いただけなので、いつも関西人が口癖のように付け加える「知らんけど!」を 私も 付け加えさせてもらいたいと思います。 

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