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静かなお盆(3)

今日は 娘の友人からのお供え物が届いて ピンポ~ン!「は~い」の回数が何回かあった。そして そのお礼の電話やメールをしていると 早 お昼になった。お昼はいつも 素麺に決まってしまっている。のど越しといい、山葵と海苔そしてネギとごま入りの振り掛けが素麺の出し汁の塩っぱさに よく合う! お腹がふくれて一息つくと いつの間にか寝入っていた。     携帯の音で目が覚める。二十年程前のクロッキー仲間からの長電話で午後を潰し、夕方久しぶりに ピアノに向かった。

ピアノと言えば、お盆に入る前のこと 長い間のブランクでピアノの中を磨いてもらい、真新しいいい音が出ると思っていい気になって弾いていたら 無言電話が入った。 そこで、私はずっと前のことを思い出したのだ。

その当時 リチャードクレイダーマンにハマっていて、斜交い裏の二軒の奥様から「綺麗な曲ねえ」「お上手ねえ」と言ってもらっていたし、両隣の方らも「いい癒やしになってるよ!」なんて聞いていたので、気持ちよく弾いていた時のこと、電話がなった。受話器を取ると、プツンと切れた。「?」をつけながらも「間違いか?」と 又 弾き始める。と 又 電話がなった。受話器を取ると プツンと切れる。3回目、私はやっと気が付いた。 「ピアノだ!」っと、その時は窓を開けていたので 慌てて閉めた。けれど今回は窓も閉めてクーラーもかかっている。相手の家も閉めてクーラーもかかっているのに…。 まさか…?

そのまさか…?は 真裏のお家だった。そこで ピアノ調律師さんに相談すると「奥さん、無言電話は まだ大人しい方ですよ」と言われた。以前から新聞沙汰になっていることは 知っていた。けれど、それは 弾く時間や時間の長さの問題だと思っていたが、調律師さんによるとそれだけではないことがわかった。人の感情は複雑で計り知れないもの!一人でも 感情を逆なでしてしまっているならば それは避けなければならない。        調律師さんは「音を吸音するパネルがあります。壁との間に箱型のピアノの背中に当てがって音を吸音するんですわ。それで、足にも付けたら大分違いますよ。おんなじ付けるんなら最高のをつけたほうが 安心ですやん!その代わり設置は私がやります」とのこと。 予定外の出費だった。 けれど、これで安心して弾ける!と思うと安いもんだ。と言う事で 私はすぐ設置を決めた。

でも やっぱり、こわごわ弾き始める。設置した後 調律師さんにピアノを弾いてもらって 私が裏へ回って音を聞いてみる。 最初の音がどんな音だったのか分からないけれど、これなら大丈夫!ってことを思い出し、今日は雨も降っていることだし、エアコンも付けて閉め切っている。と いうことで、思い切って普通に弾いてみた。曲を選ぶのも慎重に!そして ちょっと古いけれど、ポールモーリアの曲にする。もし聞こえたにしても、なつかしのメロディーということで 許してもらえるかもしれないし「許してもらえる」と思うと、弾く方も安心して弾ける。それは両方にとってとても精神的にいいことだ。そんなことを考えて弾いていると、気持ちが楽になり、だんだん興に入っていく。しばらく気持ちよく弾いていると、二階で昼寝をしていた猫のミューが 一声「う、ニャ~」とオタケビをあげ トントコ階段を降りて来た。そしてピアノの側で正座して大きな声で「ミャ~、ミャ~!」と鳴いた。 あ~、毎度のことだけど 今回もピアノの音が聞こえると私の手が空いた!と判断したらしい。「ピアノを弾くなら 私の相手になってよ~」と、いうことなのだと、推測する。が、それを無視して弾き続けていると、だんだん鳴き声が大きくなって顔つきが殺気だってくる。     「中断してよ!」と迫ってくるのだ。

「ブルータス、おまえもか~!」じゃなく 「ミュー、おまえもか~!」

と、思うけれど、仕方なしに手を止め、ミューに「かまってほしいの?」と言いながら ミューの柔らかい毛並みをナデナデすることになる。    猫の人間観察力はすごいなあ!と 驚きながらも ピアノを諦めざるおえないのである。

夜はテレビ番組「ポツンと一軒家」を見て時間が過ぎてしまう。          仏壇のお膳をひきながら「明日でお精霊さん帰らはるなあ」と 思うと、寂しくなった「もうちょっと、こっちに居ててええよ」と心の中で思いながらそういえば、今朝 夫の夢を見たことを思い出した。「あんまり娘とおよめちゃんばっかり言うてるからかなあ?でも、お経の時にちゃんと戒名を読んであげてるのに… 独占欲の強いのは変わらへんね」とつぶやいてしまう。そして、その後入浴しながら「ここ数日、エアコン 除湿でいけてるなあ。しばらく雨やったし? けど、また暑うなるんと違うやろか~」とぼんやり湯舟に浸かりながら考えていた。



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