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何処へ

ある日 バスに乗る

前の席に母親に抱っこされた

赤ん坊がこっちを見ている

じっとにらめっこして

カンロ飴のような丸い瞳に微笑むと

小さな生えたての白い歯を見せて

無邪気に笑う

あれは遠い昔のワタシの姿


ランドセルを背負った小学生

道端に咲いている花に足を止め

こころを奪われたように眺めている彼女

小さな野の花の美しさにみとれていたのか

そっと花に指を触れた

その小さな指先にテントウムシが辿り着き

飛んで行った大空は青い空

あれはかつてのワタシの姿


アイスキャンディー片手に

夏の光の中を二人乗りして

大きなけやきの木の下を駆け抜ける

少年と少女

夏を惜しむように蝉が鳴き

プール帰りのけだるい体を冷やすように

アイスキャンディーのソーダ味が心地よい


カフェの窓際の席で秋の陽だまりの中

老夫婦が穏やかに笑って話をしている

枯れ葉の絨毯が道を埋め尽くし

恋人たちがテラスで肩を並べ未来を語らう

あの時 待ち合わせをしたはずのワタシたちは

ちょっとした神様のいたずらで

すれ違ったまま もう逢えなくなってしまった

手の届くはずだった未来


街の風景に

遠いむかしのワタシを見つける

街の風景に

遠いワタシの未来を想う

街の風景に

別々に歩きだしたアナタとワタシの現在(いま)…


星の数ほどいる人々の現在 過去 未来を

いっしょくたに抱え込み

街は夜も眠らず

人々の人生を作る上げてゆく

溢れかえる人波の中

まだ見ぬ誰かと出会うため

わたしは街という小さな宇宙の中を泳いでいく

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