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詩人の日常

4月のある日

庭に咲く桜の樹にとまったうぐいすの声で目が覚める。

まだこころもとない鳴き方で 誰に褒められるでもなく練習をしている


今朝も誰もいない公園で 犬のマークと遊ぶ


朝食をすませ 歯を磨く

自分のヒゲをさわってみる

鏡の前に立っていろんな顔を作ってみる

泣いた顔 怒った顔 寂しい顔 笑った顔 どれもみんな僕の顔


春のあたたかい日差しの中 たたみの部屋に寝転がり本を読む

庭に小鳥の訪問者がやってくれば 驚かさないように歓迎し

チューリップにあこがれ蟻や蜂たちが飛び回る


庭という小さな自然に想像をめぐらし

雄大な自然へと思いは耽(ふけ)ってゆく


とろけるような午後の太陽の下 ねこは縁側で昼寝

そして同じくぼくもねことなる


世界を感じながらうたた寝をする

世界を愛するように 壊さないように


静かな日常 そこに大切な世界がある


少年だったあなたは


東の街へ行ってしまったあなたは

いつのまにか考えることをやめ

心の中に眠り続けていたものを

燃え上がらせることもなく

心の奥底にうまく封じ込めてしまい

わたしを置いて大人になってしまった


私といえば…


西の街で一人残され私といえば

この観覧車の見える場所で

あなたと出会ったことで

あのときのわたしのまま

しあわせな記憶を抱え

心の中で消えかけていた何かが

再び目を覚まし

そして、生きていくことに苦しんでいる


あなたと一緒に

うまく大人になることができたら

私たちは 別れずにすんだだろうか…


僕たちの恋


僕たちが恋に落ちたのは

僕が自分の嫌いなところを 君が好きになって

君が嫌いだと思っている自分を僕が好きになったから


世の中 ひとのいいところを好きになって

恋人同士になるのが多いけれど

僕たちは違った

そして 僕らは救われた

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