眠れぬ夜の夢
夜は静かだ。
私の暮らす田舎町では、騒音もネオンもない。
安眠を妨害するものなどないけれど、眠れぬ夜はある。
そんなときは、ワインを飲みながら、本のページをめくるときもあるし、音楽を聴いてすごすこともある。
眠れぬ夜にふさわしいのは、ビル・エヴァンスの音楽だ。
ベッドに横たわりながら、ビル・エヴァンスを聴いていると、いつしか眠りについてしまう。
都会的でクールなのに、温かさにつつまれるようで、とても心地いい。
この感触が、私を眠りに誘ってくれる。
心配ごとがあって、寝苦しい夜になるときも慰めになる。
夜の闇は不安をかきたてるものだ。
遠い昔、人間がけものに怯えながら、夜を過ごしたなごりらしい。
もはやけものなど、町にはいない。
窓から見えるのは、星のまたたきだ。
星の光は、人間とけものが共存していた時代から変わらない。
人間と文明の移り変わりは激しい。
人間は進歩してきたのに、夜には恐れを今だに持っている。
不安で眠れないなんて、人間だけだろう。
けものは人間に追われ、生息域を縮めてきた。
なのに人間は夜を恐れる。
でも、どんな夜にも朝は来る。それがわかっているから、やがて人は眠りにつく。
せめて、いい夢を見たいと願いながら。
作品掲載 「小説家になろう」
華やかなる追跡者
風の誘惑 他
「エブリスタ」
相続人
ガラスの靴をさがして ビルの片隅で
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