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冬の訪問者 スミレの恋人

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記事一覧

小説 冬の訪問者             スミレの恋人 第1話

いつからだろう。 寺沢一郎は、人から恐れられるようになっていた。 70歳の一郎の風貌は、…

小説 冬の訪問者           スミレの恋人 第2話

仕事から戻って来た一郎は、弁護士事務所のドアを開けた。入口の正面には山形香奈子が座ってい…

小説 冬の訪問者          スミレの恋人 第3話

一郎は、何事もなかったかのように、山形香奈子のデスクの横のドアを開けた。 そこが彼の仕事…

小説 冬の訪問者          スミレの恋人 第4話

一郎は、落ち着くことがなぜかできなかった。 パソコンを閉じると、帰る支度をした。今日はも…

小説 冬の訪問者          スミレの恋人 第5話

家の明かりをつけると、一郎は、ダイニングキッチンに入って行った。 テーブルには、彼の夕食…

小説 冬の訪問者           スミレの恋人 第6話

夕食を食べながら、ウイスキーのお湯割りを2杯飲むと、酔い心地になった。 やはり感染症対策…

小説 冬の訪問者          スミレの恋人 第7話

明かりに浮かびあがった顔をみて、一郎は息をのんだ。 言葉を発しようとしたが、声がかすれてしまい、息を吐くように、その名を呼んだ。 「ユリ‥‥‥」 ユリは一郎のそばに歩み寄った。彼はユリの顔に向かって手を伸ばした。 「夢なのか‥‥‥ 君は少しも変っていない」彼はあえぎながら言った。 可憐な美しさは、あの当時のままだ。華奢で白い手が一郎の手を握った。 「一郎さん‥‥‥」 ユリの温かさが伝わってくる。 「ユリ‥‥‥ どうして今なんだ‥‥‥ここにどうして」 ユリは一

小説 冬の訪問者          スミレの恋人 最終話

積雪に、反射した透明な朝日が、部屋に差しこんでいた。 一郎は目を覚ました。 (朝だ‥‥‥…