仙骨と私 その19
音楽をきっかけに不思議な体験をしたことは、実は20歳頃にもあった。
その時、私はイギリスにいて、ホテルのベッドの中でぼんやりCDを聴いていた。ある曲に差し掛かった時、この時もまた突然だった。
ハートが爆発したように開いてしまったのだ。
胸の真ん中から、体験したことのない、途方もなく甘い至福感が広がっていた。
それから数日、私は何をしていても道端のゴミを見てもちぎれそうなほど幸福で、私の世界は丸っきり変わってしまった。
そしてその頃自分の感情すらよく分からない、ハートなんか固く閉じ切ったまま生きてきた私には、突然降って湧いたその圧倒的な幸福はあまりにも魅惑的で、あまりにも手放し難かった。
私は思いっきりそこに執着した。
とりすがって、めちゃくちゃに執着した。死んでもこれを失いたくない、とギリギリ爪を立てるように執着した。
今なら分かる、当たり前だけど、ぎゅうぎゅうに握りしめられて、ハートはすぐに閉じた。そこからあのヒーラーさんに出会うまで、私がハートを感じられる日は7年間来なかった。
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