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確定チャレンジ!?~ラジオトーク論

PORTが閉局して早いものでもうすぐ4か月ですか。もし健在なら、あと1か月半ちょっとで20周年だったのにね~。
さて、そんなこんなで”裏”を聞く気も起きず(マリちゃんもタテも仁さんも初回は聞いたけどね)専らradikoプレミアムを活用して他エリア、特に首都圏各局メインに聴取している訳です。

でね…。ちょっと気付いたんですけど。
結構な割合で、確定ぶった切り不体裁が起きてるんですね。
そんな時、プロからすればCM明けに「すいませんでした」のひと言くらいあるのが常識だったんですが、あれでしょうか?あんまり頻繁だからでしょうか?殆どそれには触れず先のコーナーへ突入しちゃうんですね。

スポンサー枠だから触れられなくっても、CM明けの素材を待ってもらってBGM無しの素でひと言入れる位あってもいいのに…と思いますが。

PORTの時は、元々スポンサーも少なく(苦笑)、確定自体チャンスが少なかったので、いちいち意識する事は余り無かったんですが、首都圏でなくても、裏のBSNさんもFM新潟さんも、無理からに確定チャンスが多かったんです。

■確定とは

あ。まず「確定」について解説しましょうか。
ラジオもテレビも放送の進行は、コンピュータ管理されています。
よくスタジオでのスナップ写真を見るとTVのような画面が背景に写ってますよね。

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これ、以前にも上げた…東京でプロデューサーされてる某氏から拝借した写真ですけど、窓上、時計を挟んで2つモニターがあるでしょう。拡大すると分かるんですが、左画面は1つ1つのCM素材が何なのかリスト化されています。1チャンスのCM枠に大体20秒スポットCMが3~6本程度連なっています。コレを見れば…「あ、次の20秒CMでスタジオに戻るな」というのが判ります。右の画面は、そんな1チャンスのCM枠が1行で表示されていて…それを含め、何時何分何秒に「何」が放送されるか?の進行が出ています。例えば…
〇時59分38秒 時報スポット20秒(自動送出)
〇時00分00秒 時報3秒(電波時計直結 自動送出)
〇時00分03秒 局ジングル10秒(自動送出)
〇時00分13秒 スタジオ1 規定10分25秒(自動切替)
〇時10分38秒 PT(CM枠)1分22秒(未確定)
〇時12分00秒 スタジオ1 規定3分00秒(確定)
〇時15分00秒 コーナー前クレジット 10秒(自動送出)
〇時15分10秒 コーナー前CM 20秒(自動送出)
〇時15分32秒 スタジオ1 規定2分56秒 (確定)
〇時18分28秒 コーナー後CM 20秒(自動送出)
〇時18分48秒 コーナー後クレジット 10秒(自動送出)
〇時19分00秒 局ジングル10秒(自動送出)
〇時19分12秒 スタジオ1 規定9分26秒(未確定) 

こんな感じで表示されています。太字部分がスタジオに戻って、あとは番組チームに中身はお任せという枠です。リスナーの皆さんはココをメインに聞く訳ですが…放送上で大事なのがCMだったり提供読みだったりという部分ですから、それを事細かく決めます。秒刻みで(苦笑)。民放連の決まりで、CMは決められた時刻に出すのが基本で、生放送などで前後する場合は5分までの誤差だけ認められています。「未確定」と補足を入れた部分がそれ。それ以外”決められた時間”を守る為にコンピュータ制御で「自動」でスタジオとサーバーが切り替えられるシステムになっていて、このことを「確定」と言っています。
分かり易いのは、正時の時報前、パーソナリティが急に早口になって、喋り終わった途端CMになる…という場面です。確定タイミングにはブース内のモニターに残り時間がカウントダウンで表示されるので、そこを見ながら慌てて喋ってるんですね~(苦笑)。

BSNさんやFM新潟さんで「確定」が多いのは、スポンサー枠を守る以外にも、番組進行が正確に行きやすいように設けてある意味も有ります。
以前も解説したJFNのBライン生ワイド(Oh! Happy Morning等)でも確定が多いです。こちらの場合は、JFNローカル局向け配信番組で、受けるローカルFM局側は、自由(といっても勝手にという訳じゃないですが…)に飛び降りてローカル情報(ニュースや天気、交通情報、スポンサー枠等)を組み入れられるように、10分程度に細かく区切り「確定」にしている訳です。

北海道の皆さんは…かつてあった「日高晤郎ショー」で、正時が近づくと…BGMがフェードインしてきて、晤郎さんがお客さんやアシスタントを”いじり”ながら…時には「もう5秒しかないじゃねえか。ぽんぽろり~ん!」とか叫んでアナ尻を切り上げ、BGMがチャンチャチャンと終わってCMになる数分の枠、覚えてますか?あれが時報前の「確定」の隙間だったんですね。

■パーソナリティ泣かせ

この「確定」、慣れない喋り手さんが最も緊張する場面です。
普通に喋るのも緊張しますが、残り時間がカウントダウンされてて、そこがゼロになる前に”意味が分かる”形で切り上げるなんて…なかなか難しい事です。ってことで常套手段として確定前は”呼び込み”を入れます。『さあ今日も皆さんからのメッセージお待ちしていますよ。テーマは〇〇だった事。FAXは東京03-●●●ー●●●●。メールは ●●●@●●●fm.com 頂いた中から抽選で3名様に番組オリジナルステッカーをプレゼントします。沢山のメッセージお待ちしています!……時刻は間もなく〇時です』…って感じ。よく聞くでしょ?何故か?決まり文句を入れておくと「尺を取りやすい」からです。尺を取るとは?そのフレーズを喋った時に何秒掛かるか分かっていたら、逆算して、アナ尻をピッタリに出来るんです。
よく見て下さい。最後。「…」の後に「時刻は間もなく〇時です」とあります。緊張してる時は下読みとか普段より早口になりますね。もし「確定」まで数秒空いた時用に、特に局アナの皆さんは「隙間を埋めるフレーズ」を心の中にスタンバイさせているんです。3秒なら上のフレーズでOKです。
まだ空いてるなら「皆様お聞きの放送はFM〇〇です」を加えて6秒…とか。
NHKのラジオで局アナが、短いフレーズを幾つも足す場面有りますよ。

「この時間は〇〇がお伝えしました。……(余った!)お聞きの放送はNHK第一放送です。……(まだある!)時刻は間もなく〇時になります。……(うわーどうしよう!)このあとは時報、ニュースに続いて〇〇さんの「〇〇ワイド」です。」………プップップッポーン
(※括弧の中は勝手に心の声を入れてみました)

局アナなら新人時代から鍛えられていますが、普通のタレントさんがパーソナリティを担当していたりすると、生ワイドで体験する確定タイムは心臓バクバクじゃないでしょうか。切り上げられないとブツ切りになって事故るし、早すぎれば…素になって…これはこれで事故です。
まあ大抵の場合確定タイムにはBGMを敷いて…早上がりし過ぎてもBGMで引っ張るので事故は防げます。ただ喋り続けてブツ切りになるのは防げません。また最近は「確定」まで数十秒の隙間がある場合は、フリートークで繋ぐパーソナリティが多いですね。で、そんなフリートークで夢中になって、ぶつ切りになる場面が多々あります。カウントダウンを見落としたり、1分勘違いしてたり…というのも良くある事ですが、厄介なのがチャレンジャーです。

■確定チャレンジ

毎朝生島ヒロシさんを聞いてる早起きの皆さんならご存知でしょう。番組終わりは「Have a Niceday and goodluck!」が決まり文句です。大体はBGMが終わって素になって「グッドラック」だけこぼれて…CMになりますね。
あれこそ確定のカウントダウンを見ながらアナ尻をピッタリに合わせてるんですね。ベテランの技の見せ所という訳です。
もう辞めましたが久米宏さんも結構ギリギリまで言葉を詰める人でしたね。
ベテランなら百発百中でいいんですけど…若手の皆さんでもギリギリまで入れようとして、ぶつ切りになるパターン…多いです。
何故無理に詰め込もうとするんでしょうね。
確定タイムだけでなく、素を怖がって”無意味”に言葉を繋ぐ人が多いと思います。「という訳でしてね」「〇〇なんですけれども」「まあ」「でですね」…こういう奴です。よく新人時代「えー」は注意されます。「えー」が続くとリスナーの耳に障ると教わります。そうすると「えー」以外の言葉で埋めようとしちゃうんですね。でも耳障りです(笑)。一緒っ!

■「間(ま)」をもっと使おう

昔「クロスオーバーイレブン」という番組が有りました。俳優の津嘉山 正種さんが朗読するエッセイが楽曲の合間に挿入される番組でした。
この朗読部分、BGMは入りませんでした。津嘉山さんは淡々とゆっくりしたペースで朗読するので間(ま)がしっかり空けられてましたね。

早口で知られる久米さんも、考えながら話す時は、意外と間(ま)が空きましたが…慌てる事は有りませんでした。テレビのNステで顔が見える時でも、インタビュー相手の顔を…じっと見て「どうなんですか」と聞く場面、覚えてる方もいらっしゃるでしょう。
上手い人ほど、間(ま)を有効に活用します。

他人事と思って読んでる制作陣!(笑)オタクらもそうですよ。
突っ込み過ぎ(笑)。
アナ尻にぶち当てるようにジングルや曲を入れたり、曲繋ぎを突っ込んだりし過ぎです。バラード曲なら余韻を持たせて、ひと息吸ってから次の曲を入れてもイイんです。番組終わりの確定もそう。パーソナリティにギリギリまで言葉で埋めてもらわなくてもエンディングテーマ曲があるならアナ尻からUPしてゆっくりFOしたらいいんです。30秒位あっても大丈夫。
確定から逆算して曲終わりを当てるディレクターも多いですが、単純に確定タイムから曲の尺を引いてませんか?プラス3秒しましょう。CFの曲ならプラス5秒でもOK。「余韻」の「間」を大事にしてください。
リスナーに「ほっ」とさせる数秒の間が心地よい余韻になる事を覚えて下さい。

後輩に説教する時も間髪入れずガミガミ言うより、ひと言ずつ「間(ま)」を空けて、じっくり説くように説教した方が、聞く方が言葉の意味を噛み締めてくれますよ。

今のラジオは「間(ま)」が足りない。そう思います。
(了)



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