青色サヴァンは戯言遣いの夢を見るか?◆クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い/西尾維新

(※この記事には微妙にネタバレが含まれているかもしれませんので、ご注意ください)

自分と西尾維新との出会いは学生時代に遡る。当時、普段本を読まない後輩が突然、「本を買ったのですが、よくわからなかったので」という理由で戯言シリーズ全巻(講談社ノベルス版)を貰ってくれと云ってきた。別段仲のいい後輩ではなかったのだけれど、「(室井先輩が)いらないのなら私もいらないので来週のゴミに出す」という言葉を聞き、譲り受けることになった。

それから十数年くらい経った。自分は読まなくなった本は結構売ってしまうタイプで、本棚の中の本の入れ替わりが激しい。なのに、その時後輩から譲り受けた戯言シリーズのノベルス版に加え、自分で買った講談社文庫版、それに割と新しい西尾作品までが本棚を埋めている。

100冊記念の「ヴェールドマン仮説」が出た時に軽い気持ちでチェックしてみたら、100冊全部持っていたとか云うのはなんとなく笑い話みたいな話だ。

それは置いておいて、今回は久しぶりに「クビキリサイクル」を本棚から引っ張り出してきたので、色々思ったことを書いておこうと思う。感想というまでのものでもなく、勿論書評でもレビューでもない。

今思えば、タイトルがすごくネタバレになっているんだなと思うのだが、それはもう有名な話なのだろう(2作目は表紙がネタバレだったが、それも有名な話なのだろう)。

初見の頃は登場人物のトリッキーさ、会話の目新しさがすごく斬新だった。とにかく寝ても覚めても読みまくったのを覚えている。流石に今となってはそこまでではないが、それでも自分にとっては魅力的な世界観だ(戯言遣いを「ざれごとつかい」だと長年思っていたり、主人公「いーちゃん」のどこにアクセントを置けばいいのか迷ったのもいい思い出だ)。

推理小説は探偵より犯人に肩入れして読んでしまう派だったので、読み返しても犯人の「彼女」の最初の頃の台詞が一番心に残っている。

好きなシーンはいーちゃんと犯人の対決のシーン。このシーンは、犯人が好きだからではなく、いーちゃんの「そいつのことが好きなんですよ」という一言が印象になって覚えているシーンだ。自分にとって「クビキリサイクル」の名シーン。今でも読み返す度に息をのんでしまう。こういう記憶に残るシーンの書ける作家は強いのだと思う。

これもこれで有名な話だと思うのだけれど、西尾維新が売れたのは一作目よりも二作目の「クビシメロマンチスト」が面白かったかららしい。自分もどっぷりハマったのは二作目を読んでからだ。けれど、作家にとって一作目が締めるウェイトというのはかなり大きいものらしく、「クビキリサイクル」あってこその西尾維新なのだなと思う。

刊行ペースが速い著者&メディアミックスが激しい著者として有名だが、講談社タイガ文庫から出ている「美少年探偵団」は時期的に忙しかったので自分は見ることができず。「掟上今日子の備忘録」のドラマは出来が素晴らしかったと思うが、原作小説はそんなに追えていない。年々、読書にさける時間がなくなっていくのが悲しいところだ。ハードカバーで出た最新作は、まだ買ってすらいないのでなんとかしたい。

ここまで書いて、ようやっと「自分は西尾維新ファンなんだな」と自覚することができた。戯言を綴るのも、時には悪くないのかもしれない。

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