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鬼滅の刃の商標登録と集英社さんのIP戦略についての考察

今日は、世間を賑わせている鬼滅の刃にてキャラクターが着ている衣装、古典的な着物の柄のようなものが集英社さんによって登録されたことがネットで話題になっていますね。

賛否両論が入り乱れていて反対派、否定派の方が多いように見受けられますが、多くの意見としては下記のようなものでした。


鬼滅の刃売れてるからってこれを商標登録するのはちょっとどうかと
アマビエもあったけど一般に認識されている事を、自社の利益独占のために商標登録するのはどうなの?
ファンから反感を買い今後見放されていくことがわからないのかな
国内外古来から存在する模様を商標登録かけようとか頭湧いてるわ
チェッカーフラッグとかどうすんだよ
集英社が市松模様を鬼滅の刃の権利関係で商標登録するの?あれ宝満宮竈門神社の山伏の衣装の柄ですけど…
市松、麻の葉、鱗…和柄は登録可能か?と思ったら、色彩との結合で出願でした。特定キャラが連想できるとはいえ、市松と麻の葉はどうなんだろう?しっかし区分と指定役務の幅すごいなw


肯定的な意見はかなり見つけづらくて……

鬼滅の刃のデザイン6つ商標登録出願したみたいだね。
偽物とか溢れかえってるし良いと思う、ぜひ登録してほしい!
炭治郎、ねずこちゃんの柄は伝統的な柄だから鬼滅の刃のものとして商標登録するのはおかしいのでは?という意見もあるけれど、色の組み合わせとかは作者様オリジナルだろうから妥当では。人様のオリジナルを使ってお金稼ぎするのはいかがなものか?と思う。
最近フリマアプリでマスクとか売ってるのも

という感じです。


中にはこんなご意見も……



では、集英社さんのIP戦略について調べてみました!

2020年7月15日20:00現在で確認できる株式会社集英社さんが商標登録出願している件数は1061件。

集英社さんとして初めての商標登録は1955/03/18に出願し、1955/11/15に登録された【登録0472968(商願昭30-007215)】の「集英社」という名称です。

区分数は1つで、(511)(512) 【商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務】 【類似群コード】16 
書画,写真,印刷物
26A01 26B01 26D01

というような内容になっています。

ちなみに、その後は1956/01/31に登録された「りぼん」【登録0476343(商願昭30-015205)】

1960/01/14に登録された「プレイボーイ」【登録0546606(商願昭33-023928)】となっています。


商標1



では逆に新しく登録されたものは……というと、一番新しいものは2019/05/31に出願し、2020/07/07に登録された【登録6266884(商願2019-076739)】の「ヤングジャンプコミックス\YOUNG JUMP COMICS」。

続いて2019/06/24に出願し、2020/07/07に登録された【登録6266918(商願2019-087816)】の「エムダム(メディアデジタルアセットマネジメント)」。

そして2019/06/10に出願し、2020/07/03に登録された【登録6265968(商願2019-081697)】の「KAKAROT」です。


商標6


ちなみに、鬼滅の刃は2018/12/28に出願し、2019/12/20に登録されています。(2020/04/10と2020/05/25に追加あり……おそらくグッズ展開に合わせた対応と思われます)

こちらの登録区分は多岐に富んでいて気になるところをチェックしただけでも下記のようなものが登録されています。


びょうぶ、化粧用具、電気式歯ブラシ、つけあごひげ、つけ口ひげ、宿泊施設の提供、動物の宿泊施設の提供,保育所における乳幼児の保育、高齢者用入所施設の提供(介護を伴うものを除く。)、会議室の貸与、家庭用電気式ホットプレートの貸与、家庭用電気トースターの貸与、家庭用電子レンジの貸与。


例えば「宿泊施設の提供」などは予防線としての「抑え」といわずに実施して欲しい内容ですね。

鬼滅の保育園も見てみたいですし、鬼滅の会議室は絶対に使ってみたいですし、鬼滅の老人ホームがあったら近所の子供たちが集まってきそうですし、鬼滅のホットプレートもお祭りや学園祭などで大人気間違いなしです!


さて本題に戻りますが、集英社さんのIP戦略としては年間50件程度の商標取得というような形で推移しています。7月時点で30件ということなので、今年も50~60件くらいになるのではないでしょうか?


商標2



今回の鬼滅の刃の6柄の登録がIP戦略上でどのような意味を持つものなのかについては不明ですが、裁判情報を検索してみると、集英社さんが訴訟を起こしているケースは最近ですとスキャン代行業者の件や、海賊版サイトの件など、極めて少ないです。

おそらくは、何か問題があった場合にも、よほど悪質なものでなければ1度や2度は警告を出して、訴訟に至る前に回避しているものと思われます。
(普通は警告されたらやめますよね……)


なお、ためしに登録された炭治郎の市松模様の柄を使って類似登録を検索してみますと38749件もの類似イメージがありました……。

具体的にどれくらい似ているのかは調べきれませんでしたが、仮に類似イメージの20分の1、5%だとしても約2000件の類似イメージと比較される可能性がある……ということになるのかと思います。


商標4



ちなみに……今回の出願を担当(代理)されている小野友彰(おのともあき)弁理士さんは、1978年、大阪生まれで、日本折紙学会会員、同学会認定折紙指導員をされていらっしゃいます。前川淳氏作「ティーバッグのトナカイ」に触発されて、2010年、ティーバッグ折り紙のオリジナル作品を創り始め、現在に至る……ということです。(PHP人名辞典より

ご著書には『ティーバッグの包み紙でゆかいな折り紙』(2014/10、PHP研究所)がございます。


ティーバッグの包み紙でゆかいな折り紙




長くなりましたが、こちらの件については、継続して見守っていきたいと思います。


※誤記や間違いなどございましたら、ご指摘頂けましたら幸いです……※


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