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車に教えて貰った、最高の生き方。

事故と「モコ」

「事故してるみたいだね。」
「ほんとだ。可哀そう・・・」と妻が助手席でつぶやいた。おそらくまだ買ったばかりの車。若いカップルと警官が話をしている。車の右半分は見るも無残な状態になっていて、カップルは今にも泣きそうな顔をしていた。久しぶりに妻とランチに行った先の出来事だった。
「ここは、無理そうだから、向こうに止めよう。」
車を止める場所を変え、いつものようにバックで駐車をしようとした。
「ガンッ」
後ろに大きな電柱の存在があったのは知っていた。いつのまにか、死角になっていて、思いっきり車の後方をぶつけた。
「まじかよ、事故に見とれてた。なんで事故なんてしてるんだよ。」咄嗟に、私から出た言葉はこれだった。そして、近くの定員らしき人が駆けつけてきた。
「大丈夫ですか?」
どことなく慣れた感じの言い方だった。電柱には、タオルのようなものが巻かれている。おそらく、いろんな人がここでぶつけているのだろう。
「そんなにも、みんながぶつけてるのなら、もっとちゃんと分かるようにしてよ。」
しばらく、その場から離れることなく、愚痴をこぼしていた。数か月前に、車検を通したばかりの車だった。もったいない。お金が出ていく。私の頭の中は、「もやもや」でいっぱいになっていた。
「ケガはない?大丈夫なら、せっかく来たんだし、ご飯たべよう」
と妻が言ってくれた。私は、この言葉に込められた、沢山の優しさに救われ、少し冷静になれた。しかし、それでもまだ、私は、ご飯を食べてながら、言い訳とお金の事ばかりを妻に話していた。私の話を、ある程度聞いてくれた後に、

「モコ、きっと痛かったよね」

と、妻が呟いた。私は、一瞬言葉を失った。そして、少し経って、全身から、恥ずかしさが溢れてきた。事故をしたのは、「誰かのせいだ」という正当化と、その後の「お金の心配」という私欲で頭がいっぱいになっていた私。それに対して、私の身体もそうだが、それよりも「モコ」の心配をしていた妻。

「私は、なんて愚かなんだ」

この時の感情をそのまま言葉にすると、これ以外見つからなかった。おそらく、妻が私の身体を心配してくれただけだったら、こうは感じなかったのかも知れない。私にとっては、車という【モノ】としての日産のモコが、妻にとっては、ずっと一緒に歩いてきた【家族】としての「モコ」なのだと気づいたことが、とてつもなく大きかった。そして、店を出て、車のぶつけてしまった後方のところに歩み寄って
「痛かったよね?本当にごめん。」
と、「モコ」に謝った。その瞬間、私の頭から離れなかった、「イライラ」や「モヤモヤ」が消し飛んだ。おそらく、妻の「モコ」を心配する呟きがなかったら、「イライラ」や「モヤモヤ」が止まらず、喧嘩にさえなっていたと思う。

私は、元芸人で、今はブライダルのプロデュースや司会をしていて、妻と娘がいる普通のおじさんです。正直、これまで、「モノ」に謝った経験はないと記憶している。むしろ、そのような人をみたら、「笑い」にしてきた。でも、なぜか、本当に「私は、なんて愚かなんだ」と感じて、気づいたら謝っていた。「モコ」は、妻が初めての就職の時に買った車で、私と出会う前から、実家を離れ、寂しい時も、楽しい時も、つらい時も、いつも一緒だったそうです。本当に、妻にとっては、「モコ」が本当の家族だったのです。その想いが言葉を超えて、私に届き、「モノ」としてしか見ていない自分が愚かだと感じ、自分自身も、「モコ」は「家族」だと感じることができたのです。もっと言うと、本当は、心の奥底では、私もそう感じていたことに気づいたのです。そして、本来、喧嘩にさえなってしまいそうな状況が、なぜかむしろ幸せな気持ちを一緒に育みあえたのです。私たちは、実は、とてつもなく大事な体験をさせて頂いたことに気づいたのです。

「モノや人など関係なく、すべてと一緒に歩いて育みあうことができる」

モコの状態

その後、まずは「モコ」の状態を見てもらうため、車検をしてもらったお店に向かった。車の中で、「モコ」とのこれまでの想いでを妻と話した。
「本当にいろんな所に連れてってくれたよね。」
「九州は、ほとんど行ったよね。そういえば、なぎ(娘)が産まれて、大阪にも一緒に行ったよね。」
「結婚する前は、何度も熊本と福岡を往復したよね」
思い返したら、本当にずっと一緒で、いろんな想い出が溢れてきた。

僕たちが、想い出を創ってきたのではなくて、想い出が、僕たち家族を創る

「モコ」のおかげで、こんなに大事なことに気づくことができた。そして、お店に到着して、点検してもらった。
「まだ、走ることはできそうですが・・・」
「なるべく早く、新しく車を買い替えるか、後ろの部分を、すべて入れ替えるかをお勧めします。」
と言われた。「モコ」が妻と一緒に歩き始めてから、10年が経ち、15万KM以上の距離になっていた。数か月前、車検を通す時も、買い替えるかを実は迷っていた。
「本当は、もう、休ませて欲しかったのかもね」
「ちょっと痛い思いしたけど、モコが教えてくれたのかもね」
そんなことを話しながら、私たちは、新しい家族を見つけることを、この日決意した。

「モコ、本当にごめん。そして、ありがとう」

妻の涙

私たちは、すぐに車を見に行った。はじめは、「モコ」と同じ日産。そして、トヨタ、ホンダなど、話を聞きに、今度は1歳の娘も一緒に家族3人で行った。なんか、そうしないといけない気がした。「モコ」の状態を見てくれたお店の方が
「今、買うなら新車のほうがいいと思います」
というアドバイスもあって、新車を探していた。高い買い物なので、もちろん慎重にもなっていた。実は、芸人を辞めた後、営業をしていたこともあって、自然と私が交渉をすることになった。そして、正直、営業には自信があったし、少しでもお得にというか、いい条件で買えるようにと必死になっていった。私は、また、車を「モノ」として意識しはじめていった。新しい「家族」を探しにきていたのに、お得な「車」を探すことが目的になっていったのだった。もちろん、その時は、そのことに気づくことはなかった。

いくつかの車を検討し、最終的に、トヨタのシエンタと、もうひとつの車の2択になった。車の納期も、金額も、条件としては、シエンタではない方が良かった。正直なところ、そっちで決めようと思っていた。ただ、なんでかは分からなかったが、「もやもや」していた。特に妻が気になっていて
「もう一度だけ、シエンタを見たい」
と言っていた。確実に、私の選択の方が「お得」だと思っていたのだが、どこか、私も気になっていたので、最後にもう一度、シエンタを見にいくことにした。そして、改めて、担当の女の子と交渉に移った。ただ、そもそも、シエンタは早くても納期が半年後くらいだったので、どちらにしても難しいと、私たちは思っていた。ところがこの後、流れが変わった。担当の女の子が、
「納期が早いシエンタがありました」
「え?本当ですか?」
「はい。一応、すぐに抑えておきました。」
と不安そうに言った。なぜ不安そうだったかは、その車が、私たちが希望していた色とはかけ離れていたし、すでに、いろんなオプションもついていて、金額も今までより高くなっていたからだった。そして、
「この色、一番人気なんですよ」
と、なぜか、残念そうに言ったことに、私は笑った。人気ではあるけど、私たちが好きな色でないことを知っているから、素直に残念そうに言ったのが分かったからだ。私が営業する側だったら、きっと、自信を持って、この色が1番人気だと言うと思った。正直、この嘘のない素直さが気持ち良かったし、嬉しかった。私たちが、なんか気になっていたのは、このことも関係していたのだと、今は思う。いつのまにか、お得な「車」を探すことが目的になっていたが、やっぱりどこかで、新しい「家族」を探しにきたことを忘れていなかったのだと思う。だから、嘘のない素直な言動に導かれていたのだ。
「その色ってこれですか?」
妻が言った。すると、担当の女の子が
「これです。こっちの方がわかりやすいと思います。」
と小さい模型を持ってきた。
「え?この色ならいいかも」
と妻が呟いた。その場の空気がちょっと変わった。そして、担当の子が
「ちょと待っててください。」
と言って席を外して、奥の方に慌てて向かった。上司にギリギリまで頑張って交渉してくるとのことだった。なんだか嬉しそうだった。本当に、「嘘」がなく、「素直」そのものだった。私は、営業をしていた時の、「嘘」が本当に嫌いだった。ただ、嫌いなだけで、誰が悪いとかではなく、営業は、ある程度の「嘘」というか、駆け引きみたいのは必要だと思っていたので、それが当たり前だと思っていたし、それでいいと思っていた。私は、きっと、自分に「嘘」をついてきたのだと気づいた。

「ここまで頑張れました。でも、全然ですよね。ちなみにどれくらいの金額だったら検討いただけますか?」
と、担当の子が言ってきた。
私も、この子に習って、駆け引きなんてやめて、素直にもうひとつの車の金額と同じくらいを希望してることを伝えた。
「わかりました。もう一度、頑張ってきます。」
と、担当の子が言ってくれたが、一応、妻に確認をした。
「いいよね?どう思う?」
すると、妻は黙った。
「うん?なんか違う?なんかあるなら言って。」
と言っても
「いや、大丈夫。ほんと。ごめん。」
少し重たい空気が流れた。すると、担当の女の子が、
「どうしました?素直になんでも言ってください。家族の大事な買い物なので、何か不安とかあったら、全部言ったほうがいいと思います」
妻は、
「本当に大丈夫です。逆にごめんなさい」
と言って、また空気があったかくなっていったのを感じた。嘘のない素直というやつは、どうやら、関わる人だけでなく、その場の空気もあたたかくする力があるみたいだ。担当の女の子は、売るためもあるけれど、それ以上に、本当に、私たち家族と一緒に悩み、考えてくれているのを、素直に感じた。あとで分かった話だが、妻は、単純に、いろいろ考え事をしていただけで、妻の中では、もう決まっていて、自分の中でいろいろと未来をイメージして考え事をしていただけらしい。

今度は、担当の子が、副店長を連れて戻ってきた。私が言った金額には届かなったが、本当に限界まで頑張ってくれたのだと心から感じた。本当に、ただ、嘘や駆け引きというより、素直にまっすぐに、私たちと一緒に頑張ってくれているのを感じた。しかし、私は
「即決はできないです」
と伝えた。この条件で、明日の夜までに返事をするということを伝えた。正直、私も妻も、ほぼほぼ、この段階で、気持ちは動いていたと思う。ただ、もう一つの方にも、話をしていたのもあったし、私は、即決という営業トークが嫌いだったのもある。そこには、きっと、自分自身で、「嘘」を感じていたからだと思う。そして、お二人は、そんな私の話を聞き入れてくれた。その時、急に隣で、なんだか異様な空気を感じた。

「妻が泣いていた」

そこにいた、妻以外の3人は驚いた。正直、何が起こったのか全く理解ができなかった。
「どうしたの?」
「いや、何でもない、ごめん、本当に大丈夫。」
と妻が言った。
「いや、おかしいでしょ。泣いてるじゃん。」
泣いてはいるけれど、それが悲しいものではないことは、なんとなくそこにいる誰もが感じていた気がした。すると、妻が
「嬉しかったんです。「モコ」のことをちゃんと見てくれてるんだなって思ったら、なんかすごく嬉しくて・・・。」
と言った。その瞬間、完全にその場の空気が変わったのを、多分全員が感じたと思う。査定の中で、車は、もう値引きが難しいということで、実は、モコの下取り価格をかなり高くしてくれていた。もともとは、どちらの会社も下取りの価格は同じだった。そもそも、私たちも、下取りがつくなんて思っていなかった。ここで大事なことは、下取りが高くついたことが嬉しかったのではないということ。
「ちゃんとモコを見てくれていると感じて、嬉しかった」
と、妻は言った。きっと、ここにいた、妻以外のみんなが、恥ずかしくなったと感じた。特に私は、また、同じことを繰り返していることに気づき、何倍も恥ずかしかった。と同時に、信じられないほど、心があったかくなった。その時、どうするかは決まった。即決はできないとか、偉そうに言っていたが、すぐに、もう一つの車には、お断りの電話を入れ、数時間後にシエンタに決めた。
車の購入は、ただの買い物ではなく、家族としての車と、どう一緒に育みあっていくか」
ということなんだと、改めて教えてもらった。これは、誰のおかげとかでなく、ここで関わったみんなが素直で、嘘がなく、上手く言葉にできないが、ただ、「まこと」だったからだと、感じた。

モコとシエンタと一緒に

契約が決まり、少しでも早い納車に向けて、まずはシエンタのナンバーを決めて欲しいと言われた。結婚記念日、娘の誕生日、納車日、色々イメージしたが、すぐに、一つのナンバーが想い浮かんだ。妻に確認すると
「そうだね。そうしよう」
と即決した。そのナンバーは

「モコ」と同じナンバー。

「モコ」から「シエンタ」に乗り換えるのではなく、繋いでいく。ちゃんと「モコ」と共に歩いてきた想いも、繋いでいく、そして、これからもみんなで一緒に家族として歩いていけるナンバー。

私たち家族は、改めて、とんでもない貴重な体験をさせて貰ったと感じた。車を買うだけでなく、車と共に歩いて、繋いでいくことができる。本当に家族として、一緒に未来に向けて育みあっていけるのです。

納車日は、12月頭に決まった。そして、11月23日、勤労感謝の日、私たちは迷わず、「モコ」に感謝を込めて、洗車に行くことにした。車を買い替えるのに洗車にいくという発想はこれまでなかった。ただ、車を洗うのではない。これまで一緒に歩いてきた道のりを確かめながら、一緒に思い出しながら、感謝を伝えるのです。こんなに気持ちいい洗車は初めてだった。洗車をしながら、自分たちの心を洗ってもらっているかのような、そんな気持ちだった。家族3人で、なんだか、本当に一緒に、生きることが楽しくなっていく。そんな体験をさせて頂いている。これからも、こんな生き方をしていきたい。そして、未来の子どもたちにも、こんな生き方を残していきたいと、家族みんなで決意した。

勤労感謝の日の「モコ」との動画はこちらから見れます

車の契約が決まり、トヨタから成約記念として、明太子を贈って頂いた。
とても美味しかった。家族みんなで、あっとゆーまに平らげた。ここで、ひとつ提案させて頂きたいことがある。車を乗り換える方には、ぜひ、納車前の洗車引換券や2台分の写真が飾れる写真たてなどをプレゼンしてあげて欲しい。これまで一緒に歩いてきた車に感謝を伝え、キレイにしてあげる。そして、できれば、ナンバーを繋いで、
「これからもみんなで一緒に歩いてみてはどうですか?」
と提案してほしい。私たち家族が体験した、本当に楽しい生き方を少しでも多くの人に経験して欲しいと心から願っています。こんな楽しい生き方を、沢山の人にきっかけとして贈ることができる社会にしていきたい。それが当たり前になる未来にしたい。そんなことを感じた。車の営業が、家族の本来の生き方に気づくきっかけになる。もっと、私たちは、一緒に歩いて、一緒に育みあって、一緒に活かしあうことができるということを教えてもらったのです。

車だけでなく、この社会のすべての企業や営業が、こうした本来の楽しい生き方に気づくきっかけも商品と一緒に届けていくことができたら、絶対に、
「未来の子どもたちは、今よりも幸せに輝く!」
と確信しました。もちろん、明太子がダメとかではないのです。選択できるようにしてもいいと思う。大事なことは、車を購入するだけではなく、私たち人間にとって、大事なものに気づくきっかけを届けることが、企業にも営業にも、無限の可能性があるということを実感した。さらに、これは、企業だけでなく、今を生きる人なら誰でもできることに気づかせてもらった。

そこで、私たち家族も、そんな事業や商品をこれから、未来に向けて産み出していくと心から決意し、いろんなプロジェクトもスタートした。ぜひ、社会のみんなと一緒に、未来が幸せに輝くために歩んでいけたらと、これまでに感じたことのない「わくわく」で溢れているのを感じています。

納車の日

この日、どうしてもこれだけはやりたいと担当の方にお願いしていた。それは、家族みんなでの記念撮影。納車日は、仕事後なので、
「夜になってしまって、写真が撮れないなら、違う日にしたい。」
と、伝えると
「大丈夫です。それは絶対にしましょう」
と言ってくれた。

私たちは、人も車もみんな繋がっている。そして、みんなで共に育っていくことができる。そんな生き方をみんなでしていけば、絶対に未来は笑顔であふれる。

未来が幸せに輝くための「今」を生きるという生き方

私たちは、「モコ」「シエンタ」に、これ以上に楽しい最高の生き方なんてないということ気づかせてもらった。本当に貴重な体験だった。
「なかなか、こんな体験できないよね」
と話していた。
しかし、この体験は、本当は、私たちの意識次第で、誰もがいろんなところで、体験できることなのではないか?と気づいた。こんな最高の体験を、これまで、なんで見過ごしてきてしまったのか?未来の子どもたちが、日々の生活の中で、当たり前に、こうした体験を感じ、そして、次に繋いでいけるように、世界中のみんなと道にして、文化にしていきたい。これが、今の私たちが、世界に問われていることなのだと感じています。

トヨタの担当者を含め、皆様、これから、私たち5人と、世界中の家族をどうぞよろしくお願いします。そして、ありがとうございました。


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